1995年に発売されたトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのボックス・セット『PLAYBACK』の解説書には次のような二人の出会いのシーンが載っています。
ステージで並んで演奏するトム&マイクの姿を見る度に私はこの出会いの話を思い出してしまいます。そして二人が歩んで来た時間を思わずにはいられません。二人の(更にハートブレイカーズの)間にある何とも言えない雰囲気はきっと30年間続けて来た中で確立されたものなのだと思います。例え好きなことであったとしても続けることの難しさは、成功してこれだけ長続きしているバンドがロック界には数えるほどしかないことからも良くわかります。だからこそ彼らが過ごして来た時間の重みを感じるのです。
マイクを形容する表現で“トム・ペティに忠実な人”というのを耳にしたことがあります。それだけ二人の結びつきの強さを感じさせますが、同時にどうしてもトム・ペティのギタリストという見方がついて回るのも事実です。加えて本人の控えめな性格もあって一般に派手な印象はないと思います。リード・ギタリストというとソロをガンガン弾きまくるといったイメージがありますが、この人の場合は決して出過ぎることのないプレイでハートブレイカーズというバンドの音を何よりも大事にしているのがわかります。勿論、それが彼の最大の魅力なのです。
そのためかギタリストとしては過小評価されているのかもしれません。私は楽器のことは全くわかりませんが、いろいろな方から伺うのは「マイクはいつも何てことない顔して易々と弾いているけどあれは半端じゃない上手さ」だということです。きっとそれは多くの人が認めて下さることだと思いますが。
ギター・プレイヤーの多くが一通りの弦楽器を弾きこなしているように、マイクの場合も6弦&12弦ギターは勿論、ラップスティール・ギター、マンドリン、シタール、ブズーキなどをレコーディング、ライヴを通じて使用しています。この他にもシンセサイザーやパーカッションなどもこなし多才さを伺わせています。私が面白いと思ったのはボブ・ディランとの来日公演の後でレコーディングされた『Let Me Up』に“KOTO”というクレジットがあることです。「It All Work Out」という曲の中では琴を弾いているのです。そこにマイクの好奇心の強さ、音作りのために様々な楽器にチャレンジしていく姿勢を感じました。
更に活動の幅はバンドの外へも広がっています。スティーヴィー・ニックス、ドン・ヘンリー、ロジャー・マッギンなどに曲を提供、その中でもソングライターとして特に成功を収めたのは1985年のドン・ヘンリーとの共作「The Boys Of Summer」でしょう。また1989年の『The End Of The Innocence』にも「The Heart Of The Matter」という素晴らしい曲を提供しています。
セッション活動には他のハートブレイカーズのメンバー同様熱心です。主なところではスティーヴィー・ニックス、ドン・ヘンリー、ボブ・ディラン、ロイ・オービソン、ロジャー・マッギン、ジャクソン・ブラウン、ウォールフラワーズ、リンダ・ロンシュタット、そして(なぜか)スマップ。仮にあなたがトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズとしてのマイク・キャンベルを知らなかったとしても、実はすでにどこかで彼のプレイを耳にしている可能性は高いのです。
(安部真由美)
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