■期待と不安の入り交じる、小沢民主党のスタート

マスコミと国民注視のもとで行われた4月7日の民主党代表選挙。色々問題はあ
ったでしょうが、瓦解寸前だった野党第一党が、再び立ち上がるきっかけとして、
大変意義のあるものだったと思います。

もっとも、翌日に発表された幹部人事では、菅直人さんを代表代行として、いわ
ば《二枚看板》の体制を作ったものの、それ以外の人事は総て留任させてしまっ
た結果、新味に乏しいものとなってしまいました。9月の代表選挙までの「暫定
的な」体制だとはいえ、ここまで注目された代表選挙を実施し得た好機を生かし
て、もう一段、民主党に対する期待を高めるような人事に出来なかったものか、
ある意味で残念な気がします。

さて、代表選挙を少し振り返っておきましょう。新代表になった小沢一郎さん、
投票前の演説では「私も変わらなければなりません」と、いわば「変身宣言」を
しました。菅直人さんがハッキリと「挙党一致」という言葉を口にしていたのに
対し、小沢さんは「挙党一致」という言葉に加え、「変身」を強調することによっ
て、内外からの挙党一致の要請に対する「回答」としたかったのでしょう。小沢
さん自身が挙党一致の障害と揶揄されていたのですから「私が変わる」と言った
ことの意味は大変大きい。それこそ、小沢氏に期待しながらも「壊し屋」の過去
に恐怖していた人たちに、新たな希望を抱かせる言葉となった可能性があります。
勿論、実際に何がどう変わるのか、これからの動きを見定める必要があることは
言うまでもありませんが。

■それにしても、演説というのは面白いものです。さすがに菅さんは、当代随一
のアジテーターとして、面目躍如たるものがありました(後述するように、中身
には大きな問題がありました)。対する小沢さんは「演説下手」で知られた人です
が、その小沢さんにしてはなかなかに見事な話しぶりを見せてくれたように思い
ます。小沢さん、時折メモに目を落としながらも、出来るだけ目の前にいる議員
たちに顔を向け、その顔を見つめながら話そうという気持ちが出ていました。直
前までどちらにするか決めていなかった若い議員の目には、そんな小沢さんの強
い決意が胸に響いたのでしょう。そのせいかどうか、開票結果は47票差という
大差でした。

■その小沢さん、代表選会場では立派でしたが、その後のテレビ出演の中で、ち
ょっと失敗をしています。テレビ朝日系「報道ステーション」に出演した小沢さ
んに対し、一通りの質問を終えたあと、司会の古舘さんがちょっとした仕掛けを
試しました。小沢さんに事件ニュースへのコメントをさせようとしたのです。ニ
ュースは、兵庫県赤穂市の住宅火災で、幼い子ども二人が焼死したものでした。
コメントを求められた小沢さんは「痛ましい」と言ったあと、「この家はお父さん
いないんでしょう?何でそうなったか分からないけど」、「離婚とかそういう社会
現象が、、、」などと続けたものの、最後はシドロモドロになってしまいました。

ゲストコメンテーターとして横にいた堀田力氏は「小さな子どもたちだけで家に残
してはいけない、しかし、お母さんは働かなければならなかったはずだ。やはり
地域の助け合いが必要だ」と慌ててコメントしていました。まあ、この答え方に
も問題はあると思いますが、小沢氏が一般庶民のところで日々に生起している現
実の諸問題に対して、意外に関心が薄いのではないかという危惧を抱かせるに十
分なやりとりでした。(因みに、堀田氏は東京地検特捜部時代、小沢さんの師であ
った田中角栄さんを追及する鬼検事でした。)

■さて、代表選自体に話を戻します。菅さんの敗因の一つは、他ならぬ菅さん得
意の演説の中にもあったと私は感じました。演説中、「衆議院議員に比べて参議院
議員の扱いが低い」ことを是正していくというようなことを言ったのです。これ
はかなり露骨な投票誘導、いわば票稼ぎのシグナルでした。民主党のグループは
自民党のかつての派閥と比べてかなり緩い組織だということはよく知られていま
す。その民主党の中にあって、参議院議員はさらに各グループへの所属意識が低
いとされる。今回、小沢陣営はもともと9月の代表選に備えた動きを始めていた
こともあり、かなりキチンとした組織選挙の態勢を築いていたらしい(小沢グル
ープ以外に、旧社会党系、旧民社党系、鳩山グループなどを押さえていた)。そこ
で菅陣営が互角の戦いをするためには、グループに取り込まれている度合いの低
い参議院議員たちの票を大量に取り込まなければ、という意識があったのでしょ
う。

ですが、菅演説のこの部分は、一言で言えば「せこい」印象を免れませんでした。
小手先の選挙戦術という印象を持たれてしまえば、衆参を問わず、演説の中身で
どちらに投票するかを決めるつもりだった「党内無党派」を口説くことなど、無
理な話でしょう。偽メール問題で泥にまみれ、誇りを失いかけていた若い議員た
ち。彼らが求めていたのは、明確な旗印であり、政治家、政治集団としての誇り
だったはずだからです。

■そういう意味では、菅さんには、偽メールのせいで有耶無耶になりかけている
四点セット(米国産牛肉輸入再開問題・耐震偽装事件・ライブドア事件・防衛施
設庁談合疑惑)や日歯連一億円裏献金問題の徹底追及など、具体的な課題を一つ
一つ訴えて欲しかったように思います。ところが、具体論の代わりに菅さんが持
ち出したのは、持論である「最小不幸社会の建設」の説明と因縁話でした。この
説明にあたって、ハクスリーの『すばらしい新世界』(中学生の時に父親に勧めら
れて読んだそうです)を引き合いに出した部分など、私にはほとんど意味不明で
した。陳腐と言ってしまえば身も蓋もありませんが、そうですねえ、出来の悪い
「青年の主張」みたいになっていたと言ったら怒られるでしょうか。

■それにしても、偽メール問題で迷走し、最後は謝罪と代表辞任に追い込まれた
前原民主党とは何だったのか。おそらく前原誠司という人の役割は、今回の代表
選の中で目に見える形で沸き上がり、その底力を見せつけた民主党のパワーを、
いわば封印するための封緘だったのではないかと思えます。あるいは、民主党と
いう大きなツボの上に置かれた重しの石、これが前原という人だったのではない
でしょうか。

小泉総理もどこか不安そうに会見していましたが、他の自民党有力者も次々と
小沢民主党に対する「警戒警報」を出しているのを見るにつけ、つくづく「あ
あ、前原さんは自民党にとって大切な人だったんだなあ。小沢さんは嫌なんだな
あ」と感じます。小沢民主党は国会内でも厳しい対決姿勢を前面に出すでしょう
し、そうなれば小泉総理の急速なレームダック化(死に体)が起こるかもしれな
い。11日に告示される千葉七区補選(衆議院)の結果も流動的になる、そして、
ポスト小泉の面々の力関係も微妙に変化していくことになるかもしれません。い
ずれにせよ、与党の大勝で終わった昨年の総選挙以来、「べた凪」の状態だった政
治の世界が、にわかにワサワサとしてきたことだけは確かなようです。

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■編集後記
4月から、関西テレビの「スーパーニュース・アンカー」というデイリーの報道
番組で、コメンテーターとして出演しています。私はタレントのピーコさんとと
もに、月曜日の担当です。司会は関西テレビ随一のアナウンサー山本浩之さん、
通称《ヤマヒロ》です。関西エリアの皆さんは是非ご覧ください。
 J−WAVEの〈JAM THE WORLD〉は、今まで同様、木曜日の担
当です。テーマ曲も変わり、内容・構成もパワーアップしてお届けしています。
こちらもよろしくお願いします。
 
*uttiiの東京ブランチ http://blog.so-net.ne.jp/uttii-jam_the_world/
*スーパーニュース・アンカー
           http://www.ktv.co.jp/b/spring/news01_1655.html
*J−WAVE〈JAM THE WORLD〉
           http://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld/
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