《第二十七号発行にあたって》
■構造設計書の偽造により、耐震性を偽って建設された危険なマンションにつ
いて、連日の報道が続いています。今日は衆議院国土交通委員会の参考人招致の
模様がNHKによって完全中継されました。かなり大勢の視聴者が固唾を呑んで
質疑の模様を見守ったことでしょう。今回発覚したことは「氷山の一角」に過ぎ
ない可能性が高く、マンション住まいの多くの人々にとって、まさしく重大な関
心事だからです。余計なことですが、明日発表になる視聴率、ちょっと注目した
いと思います。今後のマスコミの取り扱い方にも影響があるからです。
それにしても、自民党の武部幹事長だけでなく、こうした問題について「犯人
探しはよくない」というもっともらしい見解をシタリ顔で口にする人たちがいま
す。武部氏自身は、批判を浴びて早速軌道修正したようですが、「犯人探し」「悪
者探し」という言葉を使うだけで、真相究明を最重要とする考えに冷水を浴びせ
る効果を狙ったものと考えざるを得ません。
正しい補償、十分な補償を実現するためにも、「犯人探し」「悪者探し」、
是非とも、一生懸命にやりたいと思います。本当の原因を突き止め、責任者を
確定して、法的な裁き、社会的な裁きを下すなかで、真の被害者救済も可能に
なるでしょう。非力ですが、私自身、既に取材に入っていますので、テレビで
ご報告する機会があると思います。
■さて、アメリカ産牛肉の輸入再開問題で、なかなか総括的な記事を配信でき
ずに申し訳ありません。この問題も、年末に向かって大きな展開を遂げることに
なる公算ですので、なんとか早めにお届けしたいと思います。その内容の一部で
もあるのですが、今回は、毎日新聞社発行の「週刊エコノミスト」(11月15日
号)の「インサイド」に無署名で掲載された私の原稿(「米国産牛肉の輸入再開待
望の理由は『資金環流』」)を、一部手直しの上、編集部の了解を得て当メルマガ
に転載します。ご一読ください。なお、同誌11月22日号に掲載された署名記
事については、次回に転載します。
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■農水省「畜産一家」の闇■
〜牛肉輸入再開を喜ぶのは誰か〜
アメリカ産牛肉の輸入再開が年内にも迫っている。アメリカ政府筋からの圧力
も一層強まるなか、リスクを評価する食品安全委員会の議論にも拍車がかけられ
ている。牛丼チェーンは解禁に備えて「牛丼」の宣伝など、準備に余念がない。
そうしたなか、輸入停止以来の市場の混乱を反映して、セーフガードについての
ニュースが続いていた。
▼牛肉セーフガード
一〇月末、輸入牛肉に対するセーフガード(緊急輸入制限)の発動が回避され
た。四−六月期に続き、七−九月期も輸入量が基準を上回ることはなく、発動に
は至らなかった。
牛肉輸入のセーフガード発動の判断基準となるのは四半期ごとの累計輸入量で、
前年同期比の増加率が一七%を超えた場合に発動となる。今年は、四月五月の輸
入実績(チルド)を併せただけで、前年四−六月期輸入量の八割を越え、放って
おけばセーフガード発動の基準である一一七パーセントを越えることが確実視さ
れた。そうなれば、現行の暫定税率三八.五%が、年度末まで五〇%に引き上げ
られることになっていた。
▼発動回避
セーフガードの発動が回避された要因は、四−六月期の場合、輸入業者が意図
的に通関を遅らせ、本来六月中にカウントされるものを翌月にずらす工夫をして、
見かけ上の増加を押さえたからだと言われている。
牛肉セーフガードの発動による関税の引き上げについては、しばしば、内外か
ら強い批判が巻き起こる。今回発動されていれば、より強い反発を招いていたこ
とは間違いないだろう。輸入増加とはいうものの、2003年12月、アメリカ
でBSE感染牛が発見されアメリカ産牛肉の輸入停止で牛肉輸入量が激減してい
たことが背景にある。これでは「国内産業保護」という錦の御旗がたてにくい状
況だった。
それでも、農水省が常に「条件が調えば必ず発動する」との姿勢を保持してき
たのは、ガット・ウルグアイラウンドで決まった税率は飽くまで自主的な引き下
げによる「暫定税率」であり、適正な国内畜産業保護を実現するために必要な税
率は五〇パーセントだという立場を変えていないからだ。石原葵(まもる)事務
次官もマスコミに質問されるたびに「基準に達したら機械的に発動する」と明言
しており、関税率の適正運用で畜産農家を守るとの立て前は変わらない。しかし、
農水官僚が輸入牛肉関税に託す願いには、もう一つ別の側面があった。それは、
税率引き上げに伴う、関税収入の増加だった。
▼牛肉関税は誰のために
日本の関税収入全体は年に八〇〇〇億円から一兆円ほどある。そのうち、牛肉
の分は一〇〇〇億円から一五〇〇億円。関税は総ていったん国庫に納められるが、
牛肉関税の分については「輸入牛肉等関税財源」という名を与えられ、さながら
特別会計のような処理を受ける。そして、そのほとんどが、独立行政法人・農畜
産業振興機構(旧特殊法人・農畜産業振興事業団。以下、「機構」)に交付され、
「機構」はそのカネを「調整資金」の名の下にプールし、国内の畜産業振興費用
に充てる。もとは牛肉輸入自由化の代償として制度化されたもので、平成三年以
来、基本的には同じ形で運用されている。こうした事業は「機構」の仕事の形を
取るが、実態は農水省の事業そのもので、「調整資金」は農水省畜産部の「隠れ予
算」とも称される。
▼天下りよ、永遠なれ
「調整資金」の使途は「機構」が所管する食肉産業関連の振興に限られ、その
枠内で三種類の事業に使われる。第一に、肉用子牛の価格が基準以下となった場
合に支出される補給金として、第二には、食肉の価格維持、需給調整を目的とし
た「調整保管」費用として、そして第三には、いわば「その他」として、「畜産業
振興事業」の名で採択された様々な事業に支出できるようになっている。この「そ
の他」に投じられる資金が最も多額に上っている点には注意が必要だ。
この「畜産業振興事業」は、数多ある農水省所管の社団法人や財団法人、さら
には協同組合などの農業団体を「事業実施主体」に指定して行われ、そうした団
体に巨費を流し込む仕掛けになっている。試しに、「機構」のホームページ上に公
開されている「平成十七年度・畜産に係わる補助事業の採択の概要」などを見る
と、四七もの事業が採択済みであり、総額で一六〇〇億円以上の資金が所要額と
して記載されている。その「事業実施主体」のほとんどが農水官僚の天下り先で
あり、なかには「事業実施主体」としての適格性が疑わしいものもある。
▼BSE問題の荒波を受けて
今、「調整資金」は底をつきかけている。平成九年度末に一八四八億円まで膨れ
あがった残高が、毎年一〇〇〇億円程度の新たな交付を受けていたにもかかわら
ず、一五年度末には実に四九四億円にまで激減、十六年度末でも五八四億円と少
ない。その原因こそ、「BSE関連対策」だった。一三年度と一四年度併せて四〇
〇〇億円といわれる「BSE対策費」は、そのほとんどがこの「調整資金」から
手当てされていた。
その後のアメリカ産牛肉輸入停止は、アメリカ産が全輸入量の半量近くを占め
ていただけに関税収入の大きな落ち込みを招き、「調整資金」にも影響した。一時
期、補助事業の縮小や打ち切りを納得させるため、担当する農水省の課長補佐は
全国行脚を強いられたほどだった。
「畜産一家」という言い方がある。農水省生産局畜産部(かつては畜産局)は、
畜産に係わる総ての業務をその下に置き、組織編成上の強い一体性を保ってきた
(その後新設された消費・安全局に衛生課を奪われ、OBらは強く反発している)
からだ。ここに在籍した官僚は、OBとなっても天下り組織のなかで力を振るい、
「一家」のなかでも枢要な地位を占め続けると言われている。牛肉関税財源と「調
整資金」は、そうした一体性を保障するものであり、OBを含めた「畜産族」の
繁栄を約束するものだったと言ってよい。
国内でのBSE発生とアメリカ産牛肉の輸入停止が「調整資金」の枯渇を招い
たことを考えれば、今、輸入再開を誰よりも強く望んでいるのは、農水省と「畜
産一家」なのかもしれない。そうなれば、潤沢な資金がまた再び流れ込み、「畜産
一家」の組織の隅々まで、まるで温かい血流のように浸していくことだろう。
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■編集後記
10月から始まったJ−WAVE<JAM THE WORLD>とブログに
ついては前号の「編集後記」にも書きました。ブログは番組と連動することに重
心を置くつもりですが、その他に「森の記」や「Sunday uttii」な
ど、好き勝手なタイトルでテキトーなことも書いていますので、一度、覗いてみ
てください。そのうち、様々な写真も掲載していくつもりです。
*uttiiの東京ブランチ http://blog.so-net.ne.jp/uttii-jam_the_world/
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