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■■ 内田誠のニュース&コラム「遠きより」 
■■                       2004/11/29【015号】
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 《第十五号発行に当たって》
 また間があいてしまいました。
11月に入り、アメリカ産牛肉輸入再開問題がまた動いています。今回は、その見
通しが難しくなっている状況について、お伝えします。
 本日発売の週刊現代に私が取材協力した記事が載っています。食品安全委員会で、
「もしかしたら牛肉全般が食べられなくなるかもしれない」と議論されている点につ
いてです。ご興味のある方はご覧になって下さい。このメルマガの次号でもその点に
ついてお伝えする予定にしています。

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■遠ざかる「牛丼復活」の日

 ▼「あの日」から一年
 もうまもなくやってくる2004年のクリスマス。そういえば、去年のクリスマス
はひどい目にあった。あの日、アメリカで一頭のBSE感染牛が見つかり、アメリカ
からの牛肉輸入はすべて停止された。そして、やがて在庫の牛肉を使い果たし、牛丼
は姿を消していった。

でも「来年7月まで、あともう少しの我慢」と、今から「牛丼復活」を心待ちにし
ているサラリーマンも多いことだろう。国の食品安全委員会も「20ヶ月齢以下の牛
をBSE検査の対象から外して良い」と言いたいようだし、巷には「既に牛丼復活の
レールは敷かれた」という気分が漂っている。しかし、実状は全く違う。どうも、「解
禁」はさらに先に延びそうな気配なのだ。ここにきて復活のシナリオに狂いが生じて
いることに、大方の牛丼ファンはまだ気付いていない。

 ▼食品安全委員会、専門委員たちの「逆襲」
 アメリカ産牛肉を使ったあの牛丼が再びメニューに並ぶためには、まず、日本国内
で屠畜される牛を一頭残らずBSE検査にかけている、今の「全頭検査体制」を見直
す必要がある。国内で20ヶ月齢以下の牛を検査対象から外して初めて、輸入牛肉に
ついても同様の扱いをする可能性がでてくる。だが、そのためには、「全頭検査体制」
を定めている厚生労働省と農水省の省令を改正する必要があり、その改正内容に対し
ては、内閣府の食品安全委員会がゴーサインを出さなければならない。つまるところ、
カギは食品安全委員会がウンと言うかどうかなのだ。

 その食品安全委員会の議論がひどく紛糾している。現在、改めて厚労・農水両省が
「管理措置の変更」、つまり20ヶ月齢以下の牛をBSE検査の対象から外して良いか
どうかを諮問しているのだが、10月26日以来、食品安全委員会内のプリオン専門
調査会では、これまでの議論からは想像できないような厳しいやりとりが続いている。

 「なぜ?」と疑問を持つ人も多いだろう。既に食品安全委員会は「20ヶ月齢以下
の牛は検査しなくて良い」と結論したはずではないかと。その疑問はもっともだ。し
かし、食品安全委員会の「結論」には、重大な落とし穴があった。

 BSEの教訓から作られた、最も新しい国家組織である食品安全委員会。その中に
は、立場の違う二種類の委員がいる。まず食品安全委員会そのもの、いわゆる「親委
員会」の6人の委員。そして、その下には分野別に16の専門調査会が置かれ、それ
ぞれの専門委員がいる。BSE問題であれば、プリオン専門調査会が実質的な科学的
検討を行う仕組みだ。この本委員とプリオンの専門委員が、9月に出された「中間と
りまとめ」(「日本における牛海綿状脳症(BSE)対策について―中間とりまとめ―」)
を巡って鋭く対立したままなのだ。専門委員たちは、自分たちは「20ヶ月齢以下の
牛を検査対象から外して良い」とは言っていないと主張する。

 「中間とりまとめ」には本文と結論とがある。「20ヶ月齢以下の牛から感染を検
出するのは困難」と記されていたのは本文のほうだ。しかし、専門委員は議論の過程
で、同じ文言が結論に書いてあったのを削除させている。本文の記述を残してしまっ
たのは「ミスだった」と言っているのだ。そして、この記述を残した親委員会や事務
局、そして今回の諮問に対して、不信感を募らせている。こうしたことがきっかけと
なり、今、委員会は異様なほどに険悪な雰囲気に包まれている。そのなかで、「そんな
ことなら僕をこの委員会に呼ばないでください」とか、「食品安全委員会の存在意義が
ない」というような激越な言葉が、何の留保もなく飛び交っている。プリオン専門調
査会が今回の諮問に対してゴーサインを出すかどうか、微妙な状況になっている。

▼幾重もの障壁が見えてきた
 もう一つ、大きな問題が浮上した。仮に国内の「全頭検査体制」が緩和されたとし
ても、アメリカ産牛肉輸入再開については、あらためて食品安全委員会に対する諮問
が行われ、審議されるというのだ。11月16日の議論のなかで、「アメリカ産牛肉の
輸入再開は国内措置変更の結果、自動的になされてしまうのか」という疑問が呈され、
親委員会の寺田委員長が「別個の諮問がある」と言明した。しかし、諮問がどのよう
な内容であれ、アメリカの牛肉生産の現状を詳しく調べるという、時間の掛かる作業
を経た上でなければ、そう易々と答申は出すことはできないだろう。ましてや、その
答申がゴーサインであるという保証はない。

 前号でも指摘したように、輸入再開に関する食品安全委員会の答申の方向性がゴー
サインとなるかそれともストップサインとなるかを左右するポイントの一つは、月齢
把握の問題だ。アメリカにはトレーサビリティ(牛の個体情報を管理・公開する仕組
み)が事実上存在せず、牛の月齢を正確に把握する手段がないことについては以前か
ら指摘されていた。ところがアメリカ側は、「骨格と肉質」を見れば月齢は分かるのだ
と本気で主張し始めた。そこで、そんなことが科学的にいえるのかどうか、日本側に
よる検討が始まった。農水省が設けた「牛の月齢判別に関する検討会」がそれだ。

 しかし、牛肉の格付け専門家や統計専門家などの委員を集めて行われた第一回の会
合(11月12日)を見た限り、今のところ、アメリカ流の判別法に対しては「主観
的なものに過ぎない」という否定的評価が強い。この面でもアメリカ産牛肉輸入再開
の動きは大きな困難にぶつかっている。

▼牛丼チェーンの黄昏
 国内の牛丼チェーンの経営はどこも大変苦しい。なかでも、アメリカ産牛肉の使用
にこだわりを見せてきた吉野家は、一層の苦境に立たされており、閉鎖される店舗も
でてきた。輸入再開がさらに先延ばしになれば、あるいは当面再開されないというこ
とになれば、これまであまりにもアメリカの牛肉に依存しすぎてきた同社のビジネス
モデルの是非が、あらためて問われることになるかもしれない。

 当面、どうしてもあの牛丼を食べたいと願うサラリーマン諸兄は、ビーフボウルを
食べに、大枚をはたいてニューヨーク吉野家を目指すしかないだろう。
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■編集後記
 牛丼の販売を再開させた「松屋」と「すき家」(ゼンショー)。両方とも食べてみた
のですが、中国産煮沸牛肉と国産牛肉をブレンドした「松屋」の牛丼は、肉がボロボ
ロになっていて、風味は悪くないものの、どこか印象の弱い食べ物になっていました。
また「すき家」の方は、基本的にオーストラリア産牛肉を使っているのだそうですが、
私には、お世辞にも美味いとは感じられませんでした。両者とも苦労した結果なので
しょうが、成功とは言えないと思います。吉野家がひたすらアメリカ産を待ってきた
その気持ちも分からないではありません。ただ、事態はもっと深刻なところに立ち至
っているようです。「吉野家も豪州産牛肉を使った「牛焼肉丼」を12月上旬までに約
900店へ投入、顧客の呼び戻しに懸命」と報じられました。
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発行者:内田 誠 ((有)内田誠事務所)
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