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■■ 内田誠のニュース&コラム「遠きより」
■■ 2004/07/09【臨時増刊号】
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《選挙のニュースが消えた!》
▼曽我ひとみさんと家族の再会が参議院選挙投票日直前の今日9日に決まった後も、
選挙情勢に危機感を抱いた自民党と官邸による「対策」は続いていると思われる。国
松警察庁長官銃撃事件の「急展開」も、そうした「対策」の一環であるとの疑いが強
い。
▼曽我さんについては、7月2日までは官房長官も「(選挙前の家族再会は)かな
り厳しい」と語っていたのが、5日になって急遽、9日の再会実現が発表された。こ
うした発表の手順自体に意味があると感じたのは、私だけではあるまい。政府は、あ
まり早いうちから「投票日直前」を発表してマスコミの集中砲火を浴びることを避け、
同時に、国民に対しては一種の「サプライズ効果」を期待したものだろう。
あと4日しか猶予がないとなれば、マスコミは「再会劇」の取材にてんやわんやで、
官邸を批判する余裕もない。そして、官房長官による再会日発表直後から、とりわ
けテレビの画面は「感動の家族再会」というテーマに占領され、電波ジャックの状態
に陥った(こうした情報操作が行われた場合、新聞はまだしも、テレビは抵抗の術を
もたない。各局の競争関係をうまく利用され、テレビの世界は一種の「奉祝ムード」
に覆われる。本当に心配なのは、曽我さんと家族の再会が、十分な準備の下に進め
られるのかどうかだ。利用するだけ利用され、肝心の再会が拙速に終わったのでは、
曽我さん家族に申し訳ない限りだ。)
マスコミと有権者は、「さすがに小泉総理や秘書官たちも、そこまでえげつないこ
とはやらないだろう」という心の隙を見事に突かれた恰好だ。これは計算尽くと考え
るべきだろう。
▼「長官銃撃事件」の方はさらにタチが悪いサプライズだった。警察がオウムの元
信者らを逮捕した直接のきっかけは三つあるとされる。一つは、現場近くで小杉元巡
査長を見たという「目撃証言」。この人物はテレビの取材にも応じているが、小杉氏と
個人的な面識があるとは思えないにもかかわらず、まるで台詞のように「確かに小杉
さんを見ました」と不自然に明快な証言をしている。二つ目はその小杉氏自身の新た
な「証言」なるものだが、これがいつ得られたのか、どのような内容なのかはっきり
しない。なにしろ、実行犯が特定されていないのだ。最後に、唯一の「物証」とされ
るのが、当日、小杉氏が着ていたコートだ。このコートに拳銃を発射した際に飛び散
った火花でできる「溶融穴」とみられる跡が見つかっていたが、昨年、兵庫県の大型
放射光施設「スプリング8」で再鑑定したところ、微量に付着した物質が「事件で使
われた銃弾の火薬成分と矛盾しない」という結果が出たという。何故、見張り役の可
能性が高まった小杉氏のコートにそんな痕跡があったのか、また「物証」と言えるほ
どのものなのか、十分な説明はなされていない。
総じて、様々な矛盾を抱えたまま、しかも実行犯さえ特定できず(既に坂本弁護士
一家殺害事件で死刑判決を受けた端本被告の名がリークされているようだ)、無理矢理、
逮捕劇を演出した感を拭えない。
▼「感動の家族再会」がもたらす「奉祝ムード」、難事件解決が醸し出す一種の
「秩序感」とともに、見過ごしてならないのが、「共通の敵」というイメージだ。
「家族再会」では北朝鮮、「長官銃撃事件」ではオウムという、それぞれ、分かり
やすい「悪の象徴」をクローズアップし、視聴者および国民に強く意識させることが、
自民党と官邸の最大の目論見ではないかと思われる。その結果、どのようなことが起
きるか。「北朝鮮」と「オウム」という、ほとんどの日本国民が「共通の敵」と意識す
る存在を際立たせれば、政府や警察に協力して安定した社会を維持しようという、あ
る意味で自然な「保守的な感情」を呼び覚ますことができる。直後に行われる有権者
の投票行動を、保守的な方向に誘導することができると考えているのかもしれない。
▼しかし、こうした情報操作の本当の狙いは、むしろ「棄権の誘発」だろう。20
00年6月、当時の森喜朗総理が、「まだ決めていない人が40%ぐらいある。そのま
ま(選挙に)関心がないといって寝てしまってくれれば、それでいいんですけれども」
と述べたのは記憶に新しいが、無党派層の棄権とそれによる投票率の低下は、とりわ
け現在の政権のように公明党・創価学会の組織票を重要な基盤としている場合には、
選挙対策上、好ましい傾向になる。その意味では、無党派層の中でも、とくに投票を
義務であるとは感じていない人たちこそ、情報操作のターゲットになっているのでは
ないか。
年金問題の顛末に象徴されるような小泉内閣のデタラメぶりに怒っていた有権者
の中には、自らも国民年金の未加入未払い問題を抱えているような、こうした無党派
層が含まれている。「今回は投票に行こう」と考えていたそうした人たちの中から棄権
が続出すれば、それは与党・政府にとっての追い風となる、そんな計算があるのでは
ないだろうか。
▼しかし、そうはならないだろうという声もある。今回の選挙については、低投票
率が必ずしも与党に有利ではなく、逆に、野党、とくに民主党にとって不利にはつな
がらないという見方がある。本日付朝日新聞によれば、自民党執行部が「余りに低い
投票率だと不利だ」として、安倍幹事長名で「投票日当日も現在の体制を維持し、支
持者への投票促進活動を」などと呼びかける通達を出したという。本来の支持層が脱
落しそうな気配なのだろう。
▼官邸の「情報操作」がどのような結果を招くのか、そもそも投票率がどうなるか、
低投票率で笑うのは誰なのか、いよいよ混沌としてきた。しかし、有権者が求められ
るのは、本来、投票に当たって考慮すべき事柄を今一度冷静に考え直し、その結果に
従った投票をすることだろう。今回の選挙は、少なくとも《未納未加入問題や法案審
議に揺れた年金制度》、さらに、《アメリカのイラク攻撃と小泉政権の対応》、この二点
について小泉内閣への審判を下す選挙だと思う。人生にも、会社にも、社員にも色々
あるらしいが、投票前に思い出すべきことも色々、いや、たくさんある。そして結果
はまもなく出る。
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発行者:内田 誠
((有)内田誠事務所)
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