ショートショート 「夢神」 2001.12.10 /tol


 むさ苦しいかな。
 そりゃ、すまんの。
 しかし、この不景気でのう、めっきり貢ぎ物が少なくなってきてな。
 なあに、こう見えてもワシは神様じゃ、心配はいらんて。
 気にするな。
 
 何、ここにいるだけで気になるってか。
 じゃあ、向こうへ行くか。
 ん、ここにいてもかまわんのか。

 それより何の神様かってか。
 ほお、少しは興味が湧いてきたようじゃな。
 ワシはな、こう見えても夢の神様じゃよ。
 人々に夢を見させる神様じゃ。

 それにしても昔はよかったぞ。
 みんな、夢をもっておった。
 暮らしは貧しくても、夢があったな。
 子供から大人まで。
 ワイは大きくなったら、好きなものが食べられるような金持ちになるんだ。
 私はお風呂のある家へお嫁さんに行くんだ
 ・・・なぞとな。
 大人でも、早く仕事を覚えて親方にのれん分けしてもらうんだとか、
 こんなろくでなしの亭主だけど、いつか温泉場に連れてってくれるなんて言ってるんだよっ
 ・・・てな。

 それがどうだ。
 今の人間どもは全然だめだな。
 夢なんてどうでもいい、現実が問題だ・・
 目標を持って進め、夢など不要・・
 ・・・とか言ってなあ。
 あくせくしているよ。
 まったくお手上げだ。
 ワシの出番なんぞないのお。
 
 そうそうこの前、宝くじが当たるのが夢なんだという奇特な者がおってな。
 たんまりお布施を置いていったので、特別に夢を見せてやったのじゃよ。
 あまりに久しぶりだったので3億円に10回連続して当選するスペシャルサービスをしたんじゃ。
 それも3日続けて見せてやった。
 そしたら、どうだ。
 お布施を出したのは夢を実現させるためだ、夢だけじゃ何度見てもダメだ、この役立たず。
 こうほざいて帰りよったよ。
 まったく・・・ワシゃ最初から夢の神様だと言っているのじゃがなあ。
 夢見るだけでは満足できない世の中になってしまったのじゃなあ。

 夢の実現は、自分で努力するものじゃ。
 ワシのせいにされちゃ、たまらん。
 くわばらくわばら。
 もはや夢を見せて人を喜ばせる時代は終わってしまったのかな。
 全く世知辛い世の中になったものじゃ。

 ん、何だって。おまえさんは夢だけでもいいとな。
 今どき珍しい者がいるものだ。
 で、どんな夢をご所望かな。
 何々、女性の夢か、あはは、おまえさんは夢だけで満足するのかな。
 本当かな。
 ん?何、条件があると。
 
 いやいや、そんなことだと思ったよ。
 正夢なんてワシには無理だぞ。
 違うのか。

 ん、君と彼女が同時に同じ夢を見るとな。
 ふ〜ん、なるほどなるほど。
 二人で同時夢体験か・・・
 それだとまるで実現したと同じようだと?!
 うまいことを考えるものじゃ。

 ふむふむ。
 よし、分かった。
 気に入った。
 その望みかなえて進ぜよう。
 ではな、寝る前に、見たい夢を描きながら彼女の名前を3回唱える。
 そして、最後にこの呪文を唱えることじゃ。
 じゃあいい夢をな。
 いい夢をな・・・


 「な、何だ、夢か・・・でも、あの神様、呪文、何と言ってたっけ・・・変な呪文だったなあ・・・確か、ホッシホシ・・クミック・・トットロン・・ネッコロン・・ブブッピ〜・・ハックション・・だったかなあ?!」

 (翌朝)
 「凄い!」

 tol
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