ショートショート  「不思議な家」シリーズU


「カーブで拾った古い携帯電話のある家」


リンリンリン・・・

「もし!もし!」
「ああ、君か。元気でやってるかい?」

「あなた!ええ、ええ、元気・・・」
「そうか、よかったよかった。」

「みんな、とても元気よ・・・。恵子なんか毎日擦り傷だらけよ。」
「おいおい、大丈夫かい?」

「ええ、ええ、大丈夫よ。哲夫も毎日遊び回っていますわ。」
「そうかい。そうかい。・・・それを聞いて安心したよ。」

「ねえ、あなたはどうなの。お元気ですか。」
「ああ、今日は散歩してきたよ。例のカーブをね。」

「・・・」
「おい、おい、どうしたんだ。元気出せよ。」

「・・ええ、ええ、あなたの声を聞けるだけで嬉しくて。」
「さびしいかい?」

「ええ、やっぱり・・・」
「悪かったね。僕の不注意で、君たちみんな不幸にしてしまった。」

「いいえ、そんなことありません。こうして声を聞けるんですもの。」
「ありがとう。そう言ってもらえると僕も安心だ。」

「子供達のことは心配しないでくださいね。」
「頼んだよ。あや。」

「はい・・・」
「じゃ、時間だ・・・」

「えっ、もう終わりですか。」
「ああ、最近、この電話の利用・(ブチッ)」

「もしもし・・・もしもし、あなた!・・・」

・・・・・

・・あなた。
・・また、来年、電話くださいね。
・・カーブで拾ったあなたのこの古い携帯電話、大切にしています。
・・また、来年、きっと電話くださいね。
・・あなた、お願いします。
・・あなたの電話が私の生きる支えなんですから。
・・ありがとう。あなた。
・・じゃ。
・・また。
・・来年のあなたの命日に、
・・待ってます。


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