ショートショート  「超偏食家対談」





 偏食は体に良くない、というのが通説です。しかし、ここに極端に偏食に走るお3方に登場を願いました。3人ともまるまると太った筋肉質の健康体をしています。その秘訣を対談形式でご披露いただくことにしました。
 それでは、Aさん、Pさん、Kさんにご登場いただきましょう。

 「まず、Aさんにお伺いします。どんな食生活をしておられますか?」

 「わしは、動物性タンパク質が主食だな。それも特定の動物の肉しか食べん。でもこのとおり今、体重は100キロを越えて、至って健康だ。毎日、そこいら中駆け回っているぞよ。」

 「そうですね。お体からは想像できないようなその細面のお顔は、つやつやしていらっしゃいますね。実に健康そうにお見受けします。ところで、その特定の肉というのは、何の肉ですか。」

 「そうだな。わしの大好物の肉でな。ちょっと種明かしは後にしてだ、とにかく、わしはこの肉さえ食べていれば健康な体を保つことができるんだ。わしの家系は、ずっとこの主義を貫いておるんじゃ。良けりゃあんたも試しに食べて見るかな?」
 
 「私ですか?そうですね。ぜひ一度食べさせていただきたいと思います。では、種明かしは後程ということで、続きまして、Pさんにお伺いしましょう。Pさんも極端な偏食家とお聞きしましたが主食は何でしょうか。」

 「はい、私はAさんと違い、もっぱら特定の植物性繊維が多量に含まれている食事を採っています。この点、Kさんととても良く似ていますね。」

 「そうですか。それでは、Kさんも動物性タンパク質よりも植物性のものが多いということでしょうか。」

 「はい、私は言うなれば”草食”主義ですね。先祖代々、動物性タンパク質を取ることはタブーとされています。」Kさんは、ちょっと小柄ではあるが、筋肉質のやはり健康そうな体つきをしている。

 Pさんが話を引き継いで、「私は、Kさんほど極端ではありませんが、やはり草食主義なんですね。植物性の食物、特に繊維質の多い植物が中心です。繊維質は消化に時間がかかりますが、これはすなわち非常に健康な内蔵を有している、ということです。私はちょっと肥満に見えるかもしれませんが、至って健康です。体重は、150キロはありますが、走るのも木登りも得意ですよ。」

 「なるほど、みなさん、それぞれ独自の食事法で健康を保たれているということですね。一般的に偏食は良くない、栄養のバランスを考えて、いろいろな種類の食物を取らなくてはいけない、と言われていますが、皆さんに言わせれば必ずしもそうではない、ということでしょうか。」

 3人のゲストはそろって大きくうなずいた。
 そして、一番大柄なPさんが言った。

 「どうも最近の若い人間は、食物を残すこと、平気ですね。私の一族では決してこのようなことはありません。要するに、特定の食物しか取りませんので無駄な食べ残しがないのです。健康のためにと、いろいろな種類の食物を盛り合わせても、自分が好きなものだけしか食べない、嫌いなものは平気で残す。これは良くない習慣です。食料をこんな風に無駄にするくらいなら、私たちのように偏食に徹したほうがいいのです。そうすれば、食料の浪費はなくなりますよ。」

 他のゲストも大きくうなずいた。

 「確かに、おっしゃるとおりだと思います。ご指摘の点は人間、大いに反省しなければならないことだと思います。本当に、貴重なご意見、ご忠告ありがとうございました。それではここで、偏食家の大家でありますお3方に、その秘密の食物をお教えいただきましょう。」

 「アリ」
 「ササ」
 「ユーカリ」


 「どうもありがとうございました。これからもご健康に気をつけて偏食をお続けください。」



 アリクイ、パンダ、コアラの3名は、にこにこしながら会場を後にした。

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