「ひとり思い」  ('98.7.13)


とっても素敵な彼女を見つけた。
綺麗で、理知的で、優しい、とても素敵な彼女を見つけた。
ボクは直ぐに好きになってしまった。
でも、彼女はボクをただ見つめるだけ。
何を思っているのか、何を考えているのか・・・ボクにはわからない。

ボクは精一杯彼女の気を引こうとした。

ニコニコッと笑いかけて見た。
すると、彼女はかわいい笑顔を返してくれた。
大きく手を振ってみた。
すると、彼女は直ぐに手を振ってくれた。
ぶざまに転ぶまねをしてみた。
すると、それを見て彼女は笑ってくれた。
プンプンと怒るまねをしてみた。
すると、ますます彼女は笑ってくれた。
でも、みんな周りの人と一緒に。

ボクは彼女に近づき、大きなジェスチャーで愛する気持ちを伝えてみた。
すると、彼女は驚いたように後ろにさがってしまった。
そして、周りの人が一層大きな声で、ボクを笑った。

相変わらず、彼女はじっとボクを見つめるだけ。
こんなに好きなのに。
かわいい目をくりくりさせて、ボクを見つめるだけ。
こんなに愛しているのに。

やがて、彼女は行ってしまった。
ボクを残して行ってしまった。
後に残ったのはとても寂しい気持ちだけ。

でも・・・
忘れなければいけない。

だって、
彼女が側にいてくれたのは、
彼女が見つめてくれたのは、
そして、彼女が笑ってくれたのは・・・

ボクが、ピエロだったから。



tol

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