乳児健診をしていると,卵とか牛乳のアレルギーと書いている人がたくさんいます.

お母さんが子どもの頃,食物アレルギーって言われましたか?
周りにそんな子がたくさんいたでしょうか?

近年,食物アレルギーと診断される赤ちゃんが増えています.
なぜ増えたのでしょう?

10年前,20年前と今では,赤ちゃんの何が違うのでしょうか?

そんな短期間で遺伝子が変わることはありません.
赤ちゃんの体質(遺伝形質)は,20年前と何ら変わらないでしょう.

じゃ,なんで増えたんや?(いきなり河内弁)

実は,これは検査が手軽にできるようになったからなのです.

血液検査や皮膚の検査は,赤ちゃんでも手軽にできます.
当院も検査を希望して来られる方が多々います.

この検査が,食物アレルギーを増やしてしまったのです.

????ですね.

またまた分かりやすく解説してみます.

アレルギーの血液検査は,卵やミルクに対してアレルギーを起こす抗体(IgE抗体)を測定するものです.健康な成人では,こういった抗体が検出されることはありません.

では,アレルギー抗体を持っている,というのは病気なのでしょうか?

実はそうとも言い切れないのです.
全く皮膚に異常のない赤ちゃんを調べても,卵やミルクのアレルギー抗体を持っている子はたくさんいるからです.

はるか昔から,アトピー性皮膚炎の子どもはアレルギーを発症しやすいということは分かっていました.
そこから,つい最近まで,湿疹はアレルギーが原因である,という考えが主流になっていたのです.実は原因と結果は逆だったというのは,別項で説明しています.こちら

⇒皮膚が弱いからアレルギー抗体が出来るのですね.


湿疹は皮膚の下で何らかの炎症が起こったものです.赤ちゃんの表皮は薄く,刺激はすぐに皮膚の下にまで届きますので,簡単に湿疹ができてしまうのです.
皮膚の弱い子はなおさらです.

(皮膚の強さは遺伝です.湿疹の多い赤ちゃんは皮膚を守ってあげてください.)

しかし,湿疹はアレルギーから起こる,ということがかつての常識であったために,少しでも湿疹があるとアレルギーの検査を希望されることが多いのです.
アレルギー検査はものすごく高価で,かつてはなかなかやりにくかったのですが,現在では赤ちゃんの医療費はごく安いでしょう.ごく気軽に検査が行われます.

そこで,検査をして,卵やミルクのアレルギー抗体が検出されると,それが原因である,と説明されることが多いのです.

しかし,上に書いたように,皮膚が正常の赤ちゃんでも,ある程度のアレルギー抗体は持っているのです.

その理由ですが,現在は食物が家庭内にあふれているでしょう.あふれているというのは文字通りの意味ではなく,身の回りにたくさんあるということです.

食物を大きく分けると糖質,蛋白質,脂質ですね.
蛋白質はつなぎに使ったり,大切な旨味成分を作ります.

蛋白質は星の数ほど種類はありますが,それを最も安価に食物に入れようと思ったらどうするか?

卵や牛乳を加工して入れるわけです.
つまり,卵や牛乳は,家庭内でもっとも普通にある蛋白質なわけです.

皆さん,加工食品食べるでしょう.
もちろん加工食品があるから,世の中は美味しい物だらけなわけですが,それはそれで構わない.むしろ自然のままの食品の方が少ないでしょう.冷蔵庫の中を見てみてください.

物を食べるのは食卓だけ,という家庭は少ないと思います.
また,食品の小さい粒は飛び散ってしまいます.

実は家の中は加工食品の細かい破片だらけ.それがどうしても机の上,床,お布団にも,他の食事にも入ってしまうのですね..

さらに色々なルートでヒトの皮膚に付きます.これは目に見えません..

つまり,卵や牛乳(ミルク)の蛋白質は,家の中のそこいら中に散らばっており,年中皮膚に付いているってことです.

これを読んでいる大人のあなたはどうですか?
何か感じますか?普通は何にもありません.そんなこと意識しなくても大丈夫です.


と言うのは,皮膚は異物が付くことが前提で作られているからです.
そのためにあるのが表皮です.左図参照.

成人の皮膚は分厚いですから,多少異物がついても表皮が守ってくれます.その上,表皮は次々作りかえられていくので自然に脱落していくわけです.

だけど赤ちゃんの表皮はとっても薄いですね.
その表面に付いた異物が,下の真皮の細胞に触れてしまうことが多いと思われます.


すると,どうなるか?

卵や牛乳の蛋白質は人間の体の中にはないものです.
ヒトの体は異物を入れないようにする仕組みが多々あります.
これを総じて免疫って言いますけど,あまり詳しく書くと難解なので,,軽く.

IgE抗体も,もともとはそんな役割があった抗体なのです.真皮には血管があって,免疫細胞がいます.しょっちゅう皮膚に卵や牛乳の成分分子が免疫細胞に触れると,細胞が活躍し始めます.卵や牛乳をなるべき体の奥まで入れないようにしようと,IgE抗体を産生するようになるのです.

このようにして,アレルギー抗体が作られるようになるわけです.
ちと難しいか?

単純に皮膚についた卵が,卵アレルギーの原因になる,って理解されても良いですよ.

ここまでのまとめ

現代では様々な加工食品を家庭内で食べるようになった.
そこに含まれる卵や牛乳の蛋白質が赤ちゃんの肌に付くことで,多くの赤ちゃんがアレルギーの抗体を持つことになった.
特に卵の蛋白質は家庭内に多いので,卵アレルギーの抗体を持つ赤ちゃんは普通にいます.

ここで問題ですが,
血液の中にアレルギー抗体があるということが,食物アレルギーとイコールではないということです.例えば卵アレルギーの抗体を持つ赤ちゃんの大半は,実際に卵を食べても症状が出ません.検査上陽性なだけで,こういった赤ちゃんは食物アレルギーではありません.

だけど,あまり説明なくアレルギーの検査結果を見せられると,

わっ!卵アレルギーだ!

って思っちゃいますよね.

わたしも散々,これはアレルギー抗体を持ってるだけで,食物アレルギーとは言えないよ.
なんてお話するのですが,後日話を聞くとほとんどのお母さんは自己判断で卵を食べさせないらしい.

ということで,最近はよほど症状がひどくなければ,アレルギー検査はお勧めしていません.
色々な食物が陽性で出ますので,あんまり意味もないし,かえって子育てのストレスになるからです.

その上,現在では,食べることでアレルギー抗体が産生されにくくなることが分かっています.
つまり,
食べた方が治る,わけです.

自己判断で厳密な除去食を行えば,せっかく痛い思いをしてアレルギーを調べて,わざわざ苦労してアレルギーを増やす?なんて妙な結果になってしまいます.おかしいでしょう.
たとえ赤ちゃんだって,美味しい物はたくさん食べましょう.
そもそも,食事に気を使うのって,嫌じゃないですか?

とは言っても,食べさせるかどうかの匙加減はなかなか難しいものです.
わからんかったらいつでも相談して下さい.


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食物制限はアレルギーを増やします.