赤ちゃんの貧血について
 世界的に先進国の赤ちゃんの貧血が問題になっています。そのためWHO(世界保健機関)はヘモグロビン(Hb)の値が11未満であれば鉄分を補充するように勧告を出しています。

 なぜ赤ちゃんが貧血になるの?と不思議に思われるかもしれませんが、これは現代の食生活のためです。人はもともと肉食なのですが、現在は穀類(お米やパン、うどんなど)がエネルギーの主体になっています。毎日肉ばかり食べるという人はまれでしょう。

 実は穀類には鉄分はほとんど含まれていません。ですので、現在生きている人は、誰もが潜在的な鉄欠乏の状態にあるのです。普段、食べ物はたくさんあるので大きな問題になることは少ないのですが、生理出血等で鉄分を失いやすい女性(血液の中には鉄がいっぱい含まれます)と、妊婦、授乳中の方は特に多くの鉄分が必要になるため、通常の食生活では鉄欠乏状態になってしまいます。妊娠中に貧血と言われた方も多いのではないでしょうか?

 「わたしは何も症状がないから大丈夫」、と思われるかもしれません。しかし、実は赤ちゃんに影響が出てしまうのです。妊娠中に十分に鉄が行き渡らず、しかも、貧血の母親からの母乳は鉄分の移行が少ないので、赤ちゃんは鉄をもらえません。また、現代の離乳食で鉄分を多く含む食事は非常に少ないのです。

 赤ちゃんのときに体に鉄が少ないと、貧血になります。これは赤血球にたくさん入っているヘモグロビンが作れないからです。ヘモグロビンは体中に酸素を運ぶ役割をしているので、少ないと成長と発達に影響が出てしまいます。重度の貧血は認知力など神経系の発達に影響してしまうので、赤ちゃんのこれからの人生に関わることでもあります。

 ですので、当院では乳児健診の際に血液検査を行い、貧血のあるお子さんには鉄剤(インクレミン)を服用してもらっています。また、感染症の採血でもヘモグロビンは分かりますので、貧血があると鉄剤の服用を勧めています。

 この表は食品毎に含まれる鉄分の量です。赤い文字の食品は鉄分が多いものです。



http://pediatrics.aappublications.org/content/126/5/1040.figures-only

より作成


 食品で鉄分を補うことも大切なのですが、10か月~1歳で貧血のある赤ちゃんは、産まれてから長く鉄欠乏状態にあったと考えられるため、貧血だけでなく、体の中の鉄分のたくわえが少なくなっています。十分に“たくわえ”を作っておかないと、すぐに貧血に戻ってしまいますので問題の解決にはなりません。

 そのためには食品からだけでは足りないことが多いのです。貧血と診断された赤ちゃんには鉄剤を2~8週間服用させてあげてください。よろしくお願いします。



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