冬は赤ちゃんの湿疹が悪化します.皮膚が悪くなると,皆さん食物アレルギーを心配されるようです.できるだけ分かりやすく解説しておきます.



 寒くなると,赤ちゃんの皮膚は乾燥しますね.なぜでしょう.

 小さい子ほど体重に比して体表面積が広いため,皮膚での血流が多いと簡単に体温が下がってしまいます.ですから,寒くなると皮膚に血液を回さないように自動的に調節します.
 つまり,冬場の皮膚の乾燥は,体温を下げないようにする生理的な反応と考えて下さい.

 ただし,皮膚は適度な水分があるほどバリア機能が強く,乾燥すると本来の体を守る機能が低下してしまうのです.冬の皮膚は刺激に対して弱くなってしまい,簡単に湿疹を作ってしまいまうことになります.これが冬季に赤ちゃんの湿疹が多くなる理由です.

 湿疹を「食物アレルギーでしょうか?」なんて心配される方が多いですが,そんなことないですよ.最近,食物アレルギーはよく報道されるので,心配になってしまうのですね.食物アレルギーがあれば,食べた後に症状がでますから,はっきり分かります.また,出る症状はじんましんなどの軽微なものがほとんどです.

 とはいえ,学校給食での事故もあったし,気になるでしょう.




統計によると,乳児期の食物アレルギーは全体の約10%くらいだとされています.ただし,この数字も確かなものではなく,大きく誇張された数字だと思われます.というのは,多くの方は湿疹を食物アレルギーと勘違いされています.別ページに書いた通り,食物アレルギーで湿疹を作るのではなく,湿疹が食物アレルギーを作るのです.湿疹は,生まれつき皮膚が弱い体質ですので,アレルギーと関係するものは少ないですよ.(ゼロじゃありませんが)

当院でしばらく調査しましたが,やはり10%くらいの子どもさんが何らかの食物制限を行っていました.ただ,その中で真のアレルギーと思われる方は少ないですね.皆さん,自己判断で制限食をしたり,血液検査の結果だけで制限しておられます.

食物アレルギーの真の診断は,食べたらアレルギー反応が出る!ということです.
ところが,湿疹で食物アレルギーを心配するために,血液検査を行う.
乳児期には誰もが肌が弱いため,血液検査すると非常に多くの赤ちゃんで食物アレルギーの抗体が検出されることになります.(別項目参照)すると湿疹と結びつけて卵とかミルクの制限がされるというのが真実です.実際はアレルギー抗体を持っていても,ほとんどは食べさせても大丈夫ですよ.むしろ食べさせた方が将来のアレルギーが少なくなります.小さい頃から食べさせないと,大きくなったときにかえって危険な症状を出すことになってしまうのです.

どうでしょう?まだ卵を食べさせるのは怖いですか?では,話の続きを...

当院でも食物負荷試験を行っていますが,ほとんどの子どもさんでは何も症状は出ません.非常に危ないと判断した子どもさんに限定で負荷試験を行っているわけですが,それでもアレルギーの反応が出るのは20%以下なのです.しかも,ほとんどの症状はじんましんで,重篤な症状は極めて稀でした.また多少の反応であれば,食べさせている間に反応が消えることも分かってきました

※まれに喘息のような症状が出ることがあります.比較的年齢の高い子で,生まれてからずっと厳密に除去している子ですね.


最後に,食物アレルギーがどのくらい危険なものか?考えてみましょう.

 アレルギーで命を落とす場合,ほとんどはアナフィラキシーショックです.では,アナフィラキシーの原因は何か?


左の表を見てください.

食物によるアナフィラキシーショックでなくなる人は,年間4〜5名です.ほとんどは成人で,小児では極めて少ないのです.

ちなみに黄色の蜂はもっと多いですね.蜂の毒は蛋白質ですので,何度も刺される方は蜂毒に対するアレルギー抗体を持ってしまうのです.多くは養蜂業の方だと思いますが,重々ご注意下さい.

さて,アナフィラキシーの原因として,もっとも多いのは緑のところ,,これは薬物です.
成人で多いのですが,もちろん子どもでも起こします.

びっくりするほど多くの食物を制限していても,カゼで抗生物質を飲ませるのは平気って方がいますけど,それってリスクのとらえ方を大きく間違ってます(苦笑).

なお,英国は食物アレルギーがとっても多いのですが,

アレルギーのショック症状による死亡率よりも、殺人事件に巻き込まれて死ぬ確率の方が高い

との論文が出ています.

日本ではアナフィラキシーによる死亡は欧米よりもずっと少ないので,

お子さんが食物アレルギーで亡くなる確率は,誘拐殺人される率より低い

ということになります.子どもが1人でどこかに行かないように,目を光らせて下さいね.



赤ちゃんに食べさせるって素敵な時間に,ストレスを感じる人が多いようです.楽しく食べさせて下さい.できるだけ色々なものを食べた方が,将来のアレルギーは少なくなると思いますよ.

とはいえ,もしも?のことを考えてしまう方も多々います.そのお気持ちも分かります.であれば,初めて卵白,ミルク,小麦,大豆などを食べさせるときには,かかりつけ医療機関の診療時間にして下さい.何かあれば連絡して,すぐに受診していただければ対応は可能です.


※離乳食の進め方は,ここでは具体的に書きませんので,手元の育児書通りにして下さいね.

※自己判断や血液検査で食物制限してる赤ちゃんは,負荷試験を行って反応が出ないことが確認できれば,気にせず食べさせることができます.当院も負荷試験を行っているので,ご相談されれば良いですよ.


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