乳幼児の食物アレルギーについて


 小さい子どもさんで食べ物のアレルギーを心配する方が多いようです。ここでは食物アレルギーについて、できるだけ簡単に解説します。

 食物アレルギーの原因となりやすいものは、卵、ミルク(牛乳や粉ミルク)、小麦、大豆です。乳児の食物アレルギーの約90%はこの4種類の食物が原因となります。年齢が大きくなると、他の食物に対してもアレルギーを作ってくることはあります。

 食物アレルギーの症状は、原因となる食品を食べた後、30分〜1時間以内に口の周りが赤くなったり、じんましんが出たりすることが多いです。また、消化管でアレルギーが起きて、下痢やおう吐などを認めたり、喘息のような症状が出ることもあります。ごく稀にはショックを起こすこともあり、注意が必要です。


 右の写真は食物を食べた直後に全身のじんましんが出現した赤ちゃんです。このように食物アレルギーは原因となる食物を口にしてから、数時間以内に症状が出ます。何日も前に食べたものが原因となることはありません。

 食物アレルギーをどのように診断するかですが、まずは食べて反応が出た既往があるかどうかです。次に血液検査があります。これは血液の中に、アレルギーの原因となる抗体がどのくらいあるかを調べるものです RASTやMAST検査がこれにあたります。

 ただし、多くの方が勘違いされていますが、食物アレルギーを血液検査だけで診断することはできないのです。と言うのは、健康でアレルギーのない赤ちゃんの血液検査を行うと、卵やミルクなどのアレルギー抗体が出ることはいくらでもあるからです。。なぜでしょう?

 アレルギー抗体(IgE)を作るのも、正常抗体(IgG)を作るのもリンパ球です。小さい赤ちゃんのリンパ球は未熟で、アレルギー抗体を作るリンパ球か、正常抗体を作るリンパ球か、まだ完全に分かれていませんそのために、正常な赤ちゃんでも少量のアレルギー抗体を作ってしまうことが多いのです。
 ですので、血液検査で卵やミルクのアレルギーがあるといっても、単に体が未熟だから出ているということがほとんどです。

 本当にアレルギーがある赤ちゃんは、原因となる食物を食べれば反応が出ます。血液検査の値を参考にして、食物のチャレンジテストを行い、明らかな反応が出れば初めて食物アレルギーと診断できます。

 食物アレルギーと診断すれば、原因となる食物を除去していきます。しかし、アレルギーを治すために時期を見て徐々に食べさせることも大切なのです。適切な時期に食べることで、食物アレルギーのほとんどは治ってきますので、医師と相談の上で進めてください。

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以下、やや難解かもしれませんが、、湿疹と食物アレルギーの関係について、かなりの方が誤解している思うので解説しておきます。

 よく、赤ちゃんの湿疹が多いから、食物アレルギーが原因ではないか?と考え、自己判断で卵やミルクなど、様々な食物を除去している人がいます。

 その赤ちゃんを見ると、一生懸命に食事制限している割には、肌の湿疹は治ってません。お母さんは必死でやってるのに、、、なぜでしょう?

 実は、食べ物は上の写真のような急性のじんましんの原因になることはあっても、アトピーなどの慢性湿疹の原因ではないのです。

 確かに、アトピーの子どもの中には食物アレルギーを持っている子がいます。だから食べ物が湿疹の原因だろうと短絡的に考えてしまいがちなのですが、これは誤解です。

湿疹が食物アレルギーの結果出ている・・・・・・・×で
食物アレルギーが湿疹の結果できてしまった・・・・・・・のが正解なんです。


詳しく書くと、
小さい頃から湿疹がある子どもは、皮膚のバリヤー機能が弱く、アレルギーの原因となる物質が炎症のある皮膚の上でリンパ球と接することによりアレルギー抗体を作るようになります。

 ですので、湿疹の多い子どもさんは食物アレルギーを発症しやすいですが、そのアレルギーは結果であって、原因ではありません。だから、アレルギーを作ってしまった後で一生懸命食べ物の制限をしても、湿疹が改善することはないのです。

乳児湿疹についてのサイトでも解説しているので、参考にしてください。
乳児湿疹(乳児アトピー)の原因は「生まれつき皮膚が弱いこと」です。ただし、皮膚は1年も経てば強くなるので、湿疹の大部分は良くなります。

 以上により、湿疹があるからと、むやみに食物制限する必要はないということが理解して頂けるでしょうか。血液検査で多少の反応があっても、ほとんどは食べさせることができます。

 実は、食物アレルギーを治すためには、食物が本来体に入るところから、入れなければいけません。食物が吸収されるところは腸ですね。特に小腸にはたくさんのリンパ球がいて、様々な食物に対する正常抗体を作る場です。ここまで、上手に食物を入れていくことで、アレルギー抗体を上回る正常抗体が作られるようになると、食物アレルギーが治ってきます。


注1)だからと言って自己判断で食べさせるのは止めてくださいね。

注2)食物アレルギーの原因となる食品を食べて急性じんましんを起こすと、痒みが出るのでアトピーの湿疹を悪化させます。無制限に食べても良いってわけではありません。
 はっきりとしたアレルギーがあれば、原因となる食物を除去することは大切です。

※じんましんと湿疹は見た目が全然違います。右の写真の上が湿疹、下はじんましんです。湿疹が急激に変化することはありませんが、じんましんは数時間の単位で消失します。
 誰でも鑑別できますが、分からなかったら受診してください。
 
注3)お父さん、お母さんが食物アレルギーを持っていたり、乳児湿疹が強い赤ちゃんで、アレルギーの原因となりやすい食品(卵、ミルク、小麦、大豆)を最初に与えるときには注意が必要です。耳掻きいっぱい程度のごく少量から開始して下さい。

注4)血液検査で強いアレルギー反応が出ている場合は、安全のために負荷試験をしながら離乳食を進めていきましょう。


注5)例えば、欧米ではピーナッツアレルギーが問題となり、乳児にピーナッツを食べさせないようにとの勧告が出されました。イギリスでは赤ちゃんにピーナッツを食べさせません。だけど、イスラエルでは伝統的に赤ちゃんからピーナッツを食べさせます。両国で小学校のときにどちらがピーナッツアレルギーが多いか?実はイギリスの方が10倍もアレルギーが発症しているということが分かったのです。適切な時期に食べさせることをしないために、逆にピーナッツアレルギーが増えてしまったのです(参考文献)。


食物アレルギーはじんましんの原因になりますが、じんましんを見るとアレルギー!と考えるのは間違いです。アレルギーが原因となるじんましんは全体の約3%でしかありません。
 じんましんの最大の原因も「皮膚が弱いこと」です。皮膚が不安定なため、ちょっとした刺激でヒスタミンという物質が出てじんましんを起こしてしまいます。
 食物アレルギーによるじんましんであれば、同じものを食べさせれば必ず同じ症状が出ます。