{社会保障論}第4回重要事項のチェック

●社会保障の財政

1人口高齢化の社会保障財政へのインパクト

<社会保障の国民所得に占める比率を大きくする原因>

@経済的に豊になったからこそ、保障や安定を求めるという動機がまずある。

A民主国家では、国民の要求に応えることが選挙で有利になるから政治家も社会保障の拡大を約束して票を得ようとする。

B都市化と核家族化が進行して家族や親戚・近隣の相互依存機能が低下するので、社会保障依存が大きくなる。

C特に近年の日本では、人口の高齢化及びこれに関連する出生率の低下の影響が大きい。

D経済の停滞により経済成長率が低下し、失業者が上昇する時期には社会保障給付費の対国民所得費は上昇する。

E社会保障給付費の対国民所得費は人口の高齢化とともに上昇してきている。

 

2出生率低下の影響

@合計特殊出生率→女性の年齢別出生率を合計した値=1人の女性が一生の間(再生産年齢(15歳〜49歳)を経過する間)に生む子供の数の平均値の推計

2003合計特殊出生率1.292002年は1.32) 

A出生率の低下が続けば、その結果として高齢化の影響は予想を上回る深刻なものとなる。

実質可処分所得(手取り)所得の低下を招くことはない

 

@国民負担率が2030年代に50%程度

A完全雇用の維持

B経済の着実な安定成長

 
B出生率が回復   

             

 

 

 

C社会保障給付と負担の限界点(最適点)

費用負担者の実質所得が低下することなく、その額が社会保障給付受給者の実質所得とバランスがとれていることが基準となる。

 
 

 

 

 


D社会保障費用の主な負担者である生産年齢人口の大きな低下を避けるという意味でも出生率対策は必要である。

<具体的な対策>

1994(平成6)年12月、文部、厚生、労働、建設の4大臣合意により策定された「今後の子育て支援のための施策の基本的方向について」(エンゼルプラン)

(エンゼルプランの概要)

1〕子どもを持ちたい人が、安心して子どもを生み育てることができるような環境を整備

2〕家庭における子育てが基本であるが、家庭における子育てを支えるため、あらゆる社会の構成メンバーが協力していくシステム(子育て支援社会)を構築
3〕子育て支援施策は、子どもの利益が最大限尊重されるよう配慮

1999(平成11)年12月「重点的に推進すべき少子化対策の具体的実施計画について」(大蔵、文部、厚生、労働、建設、自治の6大臣合意。以下「新エンゼルプラン」という)これまでの保育サービス関係ばかりでなく、雇用、母子保健、相談、教育等の事業も加えた実施計画となっている。

2003(平成15)年3月次世代育成支援に関する当面の取組方針」基本的な考え方として、家庭や地域の子育て力の低下に対応して、次世代を担う子どもを育成する家庭を社会全体で支援(次世代育成支援)することにより、子どもが心身ともに健やかに育つための環境を整備することを掲げた。

次世代育成支援対策推進法等(2003年)

 

人口高齢化と社会保障給付費との関係

@人口高齢化の進行につれて給付と費用負担が重くなる主な社会保障支出は、年金と医療と高齢者福祉サービスである。

 

A年金給付費、社会福祉費、社会保障医療費の対国民所得比は高年齢者人口の増加関数になる。=つまり高齢者比率が増加すると国民所得比が増加する。

増加関数とは?=関数y = f (x)が条件:x 1 x 2ならばf (x 1) f (x 2) を満たすとき、(単調)増加であるという。

(例)     老齢年金の受給者1人平均給付費     高齢者数(年金受給者数)

対国民所得比=  一人当たり平均国民所得     ×     総人口

 

 

 y           f                  x

 
 


                  

 

 

 

 

 


fの部分は給付水準(所得代替率)と考えてこれが大きく変化しなければ、xの比率(高齢者比率)が増加することによってyの対国民所得比が増加する。

 

B高齢化が進行しても社会保障給付費と国民負担率の増加を緩和させる方策

・緊要度の低い社会保障給付に多少自己負担を課して需要を抑制すること。

・社会保障の受給者数の費用負担数に対する依存比率(受給者数/負担者数)の上昇を極力避ける政策をとることも必要である。

・人口高齢化に伴う将来の社会保障費用の増加に対して援助する方法は、公的年金等の高齢期の費用を所得の稼得期に積み立てていく積立方式を段階的に導入することである。

 

*「概念上の拠出積立方式」仮想的な拠出立て年金方式)=実態は、各世代が順繰りに下の世代に支えてもらう「賦課方式」である。現役世代の保険料は、すぐに高齢者の年金として使われる。ただし、年金額の計算は、自分のために若いころから積み立てる、「積立方式」だったと想定して行われる。
@個々の加入者ごとに保険料を毎年いくら支払ったかが「個人勘定」に記録される。
Aこの保険料に利子がついたと仮定する。年金を、受け取り始める時点で「保険料+利子」の総額が、いくらかが確定する。
B「保険料+利子」の総額を、平均余命(平均的にはあと何年生きるのかの推計年数)で割り、1年あたりの年金額が決まる。
C「利子」は現役世代の名目賃金上昇率とほぼ同じ率で運用できたと想定して計算される

●社会保障の機能

 

(1)社会保障の目的

主な目的

内   容

(1) 生活の保障・
生活の安定

戦後まもなくは貧困からの救済(救貧)又は貧困に陥ることの予防(防貧)にあったが、現在では、救貧又は防貧の範囲にとどまらず、広く国民全体を対象にして、健やかで安心できる生活を保障すること。社会保障は、個人の責任や自助努力では対応し難い不測の事態に対して、社会連帯の考えの下につくられた仕組みを通じて、生活を保障し、安定した生活へと導いていくものである。

(2) 個人の自立
支援

疾病などの予期しがたい事故や体力が衰えた高齢期などのように、自分の努力だけでは解決できず、自立した生活を維持できない場合等において、障害の有無や年齢にかかわらず、人間としての尊厳をもって、その人らしい自立した生活を送れるように支援すること。自立支援という考え方は、生活保護制度等の福祉分野では従来から存在していたが、近年、介護保険法の制定や児童福祉法の改正においても強調されてきている。

(3) 家庭機能の
支援

核家族化の進展や家族規模の縮小等による家庭基盤のぜい弱化や、生活環境・意識の変化、長寿化の進展等により、私的扶養による対応のみでは限界に来ている分野、例えば介護、老親扶養などの家庭機能について、社会的に支援すること。これは、いわば私的な相互扶助の社会化ということができる。

 

 

(2)社会保障の機能

主な目的

内   容

(1) 社会的安全
装置(安全網)、生存・最低生活保障機能
(
社会的セーフティネット)

病気や負傷、介護、失業や稼得能力を喪失した高齢期、不測の事故による障害など、生活の安定を損なう様々な事態に対して、生活の安定を図り、安心をもたらすための社会的な安全装置(社会的セーフティネット)の機能。社会的セーフティネットは、単一のものではなく、疾病、高齢等の様々な事態に備えて重層的に整備しておく必要がある。

(2) 所得再分配

市場経済の成り行きだけにまかせていては所得分配における社会的公正が確保されない状態に対して、社会保障制度等を通じて、所得を個人や世帯の間で移転させることにより、所得格差を縮小したり、低所得者の生活の安定を図ったりする。社会保障による所得再分配については、高所得者から低所得者、現役世代から高齢世代へという再分配のほか、個人のライフサイクル内における再分配等もある。

(3) リスク分散

疾病や事故、失業などは、個人の力のみでは対応し難い生活上の不確実、危険(リスク)に対して、社会全体でリスクに対応する仕組みをつくることにより、実際にリスクに陥ったときに、資金の提供等を通じて、リスクがもたらす影響を極力小さくする機能。

(4) 社会の安定
及び経済の
安定・成長

生活に安心感を与えたり、所得格差を解消したりすることから、社会や政治を安定化させること。あるいはこうした社会保障給付を通じて、景気変動を緩和する経済安定化機能や経済成長を支えていく機能。

 

・所得の再分配機能のポイント

□社会保障は、所得の再分配を通じて所得分配の公正化と平準化に役立つと期待される。

.垂直的再分配とは、高所得層から低所得層への所得再分配のことである。

□社会保障のより一般的に見られる水平的再分配機能は、民間の保険とは異なる。

□社会保障のうち年金は、賦課方式をとる場合には世代間の再分配が行われる。

・その他の機能

□社会的統合機能

□資源配分の効率化機能