ゴスペル・イン・文楽   東京公演
  12月18日(月) 
午後2時半より、東京新宿・ 安田生命ホールにて
 
第一部 「艶容女舞衣」より酒屋の段(さわりまで)
 
  太夫 豊竹英大夫
    三味線 鶴澤清友
  人形     宗岸    吉田勘録
          お園    桐竹紋寿
          半兵衛女房 桐竹勘寿
          半兵衛   桐竹亀次
 
第二部 「イエスの生誕と十字架」
  
  
太夫 豊竹英大夫
 三味線 鶴澤清友  野澤喜一朗
  人形     聖母マリア    吉田清之助
         イエス・キリスト    桐竹紋寿
         ペテロ     桐竹勘寿
  
 企画制作 豊竹英大夫
 演出 桐竹紋寿
 出演 豊竹英大夫・鶴澤清友・野澤喜一朗・桐竹紋寿・桐竹勘寿・吉田清之助・桐竹亀次・吉田勘緑・吉田清五郎・吉田勘市・桐竹紋若・桐竹紋秀・吉田簑紫郎・吉田昇六・吉田福丸
 
 司会 高原剛一郎
   


 事前準備
 何冊か聖書に関する物、キリスト教に関する本などを読みました。中世のキリスト教美術が好きで、それに関連する本なども読んでみました。あっ、そうそう、英大夫さんがご出演になった、テレビも見ました〜!
 当日は12時半くらいに、会場に行ってみました。知っているホールだと思っていたら、それは朝日生命ホールでした……。やっぱり新宿の駅で間違えて。会場を確認したあと、ちょっと軽く食事に行き、帰ってくるともうお客さんたちが並んでいました。
 私は都合により、昼の部を当日券で……、と思っていたので、整理券をもらって、食事に行ったのですが、帰ってきて1時ちょっとすぎくらいから、行列が……。2時近くには、かなり長い列になり、ずいぶん人気があるのだな〜、と思いました。
 当日券は、整理券が配られたのですが、実際に発売されたのは2時20分ごろ。前売り券のお客さんが入り終わって、まだ席に余裕があるようなら……、という感じだったようです。小田急線が事故で遅れたとかで、そちらの方も大変だったようですが、中にはいるととりあえず、すぐCDを購入。出番前の技芸員さんも、会場でお見かけしました。  

 事故があったため、10分くらい遅れてスタート。司会の方は、とてもハキハキとしたお話をする方で、太夫さんのような迫力あるおしゃべりでした。一部が古典の「艶姿女舞衣」、二部は新作、「イエスの生誕と十字架」です、とおっしゃっていました。
 その「艶姿女舞衣」の解説がちょこっとあり、幕が開きました。床は、舞台の上につくりつけの床。英大夫さんと清友さんで、肩衣は鮮やかな紫の、瓢箪棚の段、のところの肩衣……かな?
 舞台の酒屋は、ちょっと手狭な感じの、地方公演などでみる感じのつくりでした。
 亀次さんの、ちょっと怒った感じの半兵衛さん。どーして怒っているのだろう〜?と思っておりましたが、床本を読んでみて、なるほど、と納得。おばあさんの勘寿さんは、上品で、やさしくて、語りにぴったり。じっと下を向いているお園さんも、ほんとに「じっと」という感じが出ていて、けなげです。
 勘緑さんのお父さん(宗岸さん)は、今までの勘緑さんのイメージとは違いますが、娘を思いやる、あったかいお父さん、という感じがしました。「この不調法は、コレ、この天窓(あたま)にめんじて了簡して」というところからの、切ない音が印象的な三味線。できすぎ、の感もあるお園さん。もう、びっくりしちゃったのは、お辞儀するところまで、キレイーー!!なところなんです。感動。
 その、泣く娘を見ている宗岸さんの優しいのです。それでも許さない半兵衛さんに、お姑さんもビックリ。肩を怒らせている感じが、半兵衛さん、よく出ていて、困っちゃった奥さんと、痛々しいほどのお園ちゃん。「七生までの勘当」のところが、なんだかグッと来ました。そこで宗岸さんは、実はお縄にかかっていることをみんなに知らせます。思わず、そのことを聞いて寄ってしまうお園ちゃんとお姑さん。お園ちゃんは「お父さん、どうして」という感じで、そりゃーもう、驚いちゃうお姑さん。ここで、グッとこらえたような、構える半兵衛さん。ショックで泣いているお姑さんと、お園ちゃんも口惜しそうな感じ。泣いているのはお園ちゃんも一緒。泣きながら、それでもお願いするお園ちゃんと宗岸さん。それでも、「娘が可愛い」と言った瞬間に、大泣きしてしまうお園ちゃん。半兵衛さんも肩に力が入っていて、ふうー、と息をついた感じがよくわかり、グッと力の入った泣きの様子がすごくいいんです。半兵衛さんの咳き込むところも、奥さんとお園ちゃんがかいがいしいお姿。いい人なんだなあー、半兵衛さんも、と思いました。
 そして、お園ちゃんが一人残って、丁寧にお辞儀をして。「今ごろは半七さん」のところ。ここは、すごーーく情感たあっぷり、以前千歳大夫さんで聞いたときは、さらりと語っていらっしゃったようなのですが、英大夫さんのここは、ものすごーく気持ちの籠もった、わかりやすい言葉でした。
 久しぶりのお園ちゃんの「うしろぶり」。「このように思うている」のところが、グッと来てしまいました。
 今まで、酒屋は恋愛物なんだろうなー、と思っていたのですが、この段て、実は親子の情愛が、すごーく描かれている場面なのかもしれません。お園ちゃんが、それでも半七を思っている気持ち。半兵衛さんの半七を思う気持ちと、宗岸さんの娘を大事に思う気持ち。家族愛というか、親子劇なんだなあー、と思いました。だから、特に最後の「今ごろは」とお園ちゃんが半七を思うところが、クローズアップされるのかもしれません。お園ちゃんばかりの気持ちだけでなく、家族全体が、二つの家が巻き込まれて行く悲劇。特に、半兵衛さんや宗岸さん、お姑さんの愛情が感じられて、とてもよかったです。
 本公演で、ちゃんと見てみたいな〜、と思いました。

第二部 イエスの生誕と十字架
 さて、お次は楽しみにしていた、新作文楽!です。ホントに、まさに新作だなあーと考えていたのですが、解説の高原さんから、とてもびっくりなお話をうかがいました。なんと、日本では、イエズス会によって伝えられたキリスト教、なんと戦国時代にすでに狂言などでクリスマスを祝っていた、というのです!!ここで聞き落としませんでしたよワタクシは。「古浄瑠璃にもある」とのことなんです!だから、新作であっても新作ではない……とのことだったんです!
 古浄瑠璃にある……というのが、ともかくビックリ!!気になる〜!と思いました。今度、調べてみようかな〜。
 さて、舞台の方は、「まっくら!」で始まりました。わわわ〜、と思っていると、幕が上がり、やはり真っ暗な舞台がスポットライトで照らされ、三味線がお二方に、英大夫さんが床にいらっしゃって。ビックリしたのは、三味線!ちょっといつもと違うので、ビックリしました。
 セットらしきものはなにもなく、ただ、黒く暗い、闇のような舞台。まるで世界に光がなかったかのようで。厳かに始まる語り、に、舞台の真ん中の後ろの黒い幕(?)から、マリア様が出ていらっしゃいました。こちらにもスポットライトが当たり、いつも文楽で見慣れている江戸時代風の髷を結っていない、マリア様です。和服のようで、白の衣装にちょっと模様が入っているようでした。髪は後ろで一つに結っているみたいでした。ほんとに、きれい。
 そのマリア様が、ゆりかごのなかのお子さまを抱き上げられ、ていねいに、だいじにだいじに、頬ずり(?)する様子が、とても印象的です。ここまでが、イエスの生誕、です。
 三味線の音が、ビックリするような音でした。幼子をヘロデ王が殺そうとしているので、エジプトへ、そしてイエスは大きくなり、様々の奇跡を起こして行く……という「救い主イエス」。ここの語りは、口語調(?)なのか「〜た」「〜だ」と終わる、ちょっと「瓜子姫とあまんじゃく」を思い出させる語りでした。
 「最後の晩餐」では、パンと葡萄酒を持ったイエス様(俊寛のお人形、とのことでした。お顔は俊寛そのまま、衣装は、ローマ風の?衣装のようでした)、有名なパンと葡萄酒を弟子たちに与える場面、そしてユダの裏切り、ペテロが三度、イエスを知らない、という場面です。
 特に印象的だったのは、やはりペテロの苦悩の場面でした。ちょっとお人形の顔が見えなかったのですが、語りのちょっと江戸っ子的ペテロが、「ワッシはなんて情けねェ人間なんだ アーッ」と苦悩を語るところは、文楽ではあまり見たことのないような激しい葛藤、苦悩の様子で、ほんのちょっとの登場だったのですが、すごく心に残りました。
 次はイエスの十字架です。舞台の中央に少し高くなったところがあり、十字架がありました。青い背景のライトに、十字架。とてもシンプルな舞台で、そこへイエス様が上がって行くのです。ここは舞台、手すりより上になっているので、三人遣いの方がよく見えました。こんな風に遣っていらっしゃるんだ……、と、高いところにあがるのは大変そうでした。
 祈っているイエス様のところへ、雷鳴が鳴り響き、酷い嵐の効果音。実際に十字架にかかるのかな?と思ったのですが、それよりも激しい嵐に、身もだえするイエス様。ほんとうにすさまじい嵐でした。語りも三味線も激しく、舞台では見ていてハラハラしてしまうほど、お人形を遣っていらっしゃるみなさんの様子、本当に狭いところでの三人遣いって大変なんだ!と思いました。
 すさまじい嵐の中が終わると、一転、イエスキリストの復活、となります。イエス様が祈っている様子がじーんときて、そしてマリア様は黒い布をかぶって、下手から出ていらっしゃいました。さらにビックリしたのは、そこへホンモノの女性が一人ずつ出ていらっしゃったところ。その女性たちに、イエス様は一人ずつ、祝福(?)しているようでした。そして最後には鐘の音が鳴り響いておりました。

 幕が下り、わあー、っと思っているところへ、カーテンコールがありました!わあー、文楽のカーテンコールだ〜〜♪、と、嬉しくなりましたら、中央のイエス様は、黒衣の紋寿さんがお顔を出していらっしゃいました!そこへ英大夫さんが出ていらっしゃって、出演者の紹介がありました。マリア様の清之助さん、三味線の清友さん、ペテロの勘寿さんのほか、たくさんの人形遣いのみなさん。わあー、こんなに人が!と、ビックリ。でもカーテンコールって嬉しいですね(^^)。
 しかも、その後、「きよしこの夜」の斉唱。歌のだあーい好きな私は、おーっきな声で、一緒に歌いました。知っている歌詞と違っていたので、床本の表紙の歌詞を見ながら……。舞台のみなさんと、客席のみなさんと一緒に歌っているんだなあ〜、と思うと、なんだかとても幸せな気持ちになりました。歌って不思議ですね。ホントに幸せな気持ちで、幕、となりました。最後まで、イエス様が手を振っていてくださったのも、嬉しかったです(^^)。

 全体には、聖書をよく知らない私にもわかりやすい、イエスキリストの物語でした。絵画などを図版で見ることもあるのですが、一つ一つが孤立しているため、どういう物語としてつながりがあるのか、ぜんぜんわかっておりませんでしたので……。
 それから、最後の「きよしこの夜」も、とても嬉しかったです。今まで客席と舞台と、私と……、と分かれて心が一つになるようで。みなさんと感動を共有できたような感じで、ホントにとーってもすばらしい舞台でした!
 来年も、きっと、いい年になるなあ〜、と確信いたしました。  




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