彦山権現誓助剣


平成十二年十二月五日の東京・国立劇場文楽公演、
「彦山権現誓助剣」の鑑賞記録です。

配役
彦山権現誓助剣(ひこさんごんげんちかいのすけだち)
東京・国立劇場5 時ヨリ


   お菊    豊竹呂勢大夫
   内匠     竹本南都大夫
   友平    豊竹始大夫
   弥三松    豊竹咲甫大夫
              竹澤宗助

娘お菊       吉田清之助
一子弥三松     吉田玉佳(12日から桐竹一輔
若党友平     桐竹勘寿
京極内匠     吉田簑太郎


     中   豊竹新大夫
          鶴澤清太郎
 
     奥  豊竹英大夫(12日から竹本千歳大夫
         野澤錦糸
      ツレ竹澤団吾
  

京極内匠     吉田簑太郎
惣嫁お鹿     吉田勘弥
同 お仙    吉田和右
同 菊野     吉田簑一郎
若党佐五平   吉田玉志
娘お園   吉田和生
青侍     吉田簑二郎
いたち川     吉田勘禄
轟伝五右衛門     吉田玉輝
家来   吉田玉勢
若党友平 桐竹勘寿
往来人     大ぜい
駕籠舁     大ぜい
家来     大ぜい



口    豊竹始大夫(12日から豊竹咲甫大夫
       野澤喜一朗 

奥    豊竹松香大夫
       鶴澤清友 


毛谷村六助  吉田玉女
杣松兵衛  吉田幸助
同 槙蔵   吉田文哉
同 樫六    桐竹紋秀
微塵弾正実は京極内匠   吉田簑太郎
斧右衛門の母    桐竹亀次
若党佐五平    吉田玉志
一子弥三松    吉田玉佳(12日より桐竹一輔
門脇儀平    吉田文司
山賊    桐竹紋若


     中  竹本文字久大夫
         鶴澤清志郎

     切  竹本津駒大夫
         豊澤富助
 

毛谷村六助       吉田玉女
微塵弾正実は京極内匠     吉田簑太郎
弟子 曽平次   吉田簑二郎
同  軍八     吉田清五郎
杣栗右衛門     吉田勘市
同  樫六    桐竹紋秀
同  松兵衛    吉田幸助
同  槙蔵       吉田文哉
母お幸     吉田玉英
一子弥三松   吉田玉佳(12日より桐竹一輔
娘  お園     吉田和生
杣 斧右衛門     吉田玉也
駕籠舁    大ぜい
供人    大ぜい
村人    大ぜい

  事前準備
 お話は、歌舞伎の台本(『歌舞伎名作全集』です)を読んでおりました。あとは、本は持っていても読めなかった……、です。根性がなくて……。
 ただ、全部のお話の梗概を前に読んだことがあったので、「双蝶々曲輪日記」とおなじくらいは知っていました。水の中から剣が出てくる……、とか、お園さんの女武道のところとか。それから、六助が、怪力で庭石を踏み割る!という場面があるのだと思っていたのですが……。(なかったのだった)
 押し迫った仕事があり、友達と始まる直前まで話しをしていたため、劇場に入ったのは、10分前くらいでした。おおー、まずいまずいー、と思いながらパンフレットを買って、お弁当を買って、席に着くと、もう始まる、という時間。そう!!このとき、すごいビックリ!なお方を発見してしまったのでした。
 今回は、床本を目で追いながら観てみよう〜、と思って実行してみました。  

須磨浦の段 人形 配役
 場面は須磨の浦。おおーー、ここはまさに「須磨には心づくしの秋風にて」(by源氏物語須磨の巻)、ですね。海が近くて、砂浜が見えるよう……、と思ったのは、特に、玉佳さんの遣っていらっしゃった、お人形弥三松くんが、浜辺に石ころで、絵?字?を落書きする場面があったから、かもしれません。海の音まで聞こえてくるような、松の雰囲気。そこへ出てくるお菊さんと弥三松くん。特に弥三松くんが、かわいらしくて、その後で出てくる若党友平の荷物が重そうでした。葛籠を背負っているんですね。これを降ろすのがまた大変そうでしたが……。勘寿さんは、かっこよかったのでした。
 たしか、お菊さんはご病気だかなんだかで、あまり体調がすぐれない状態だったと思いますが、あんまりそんな感じもせず、キリリとしたお菊さんであります。ここで、ちょっとビックリ呂勢大夫さんの女性の声。あんまり聞き慣れない……かなあ……。
 語りの方は掛け合いだったのですが、友平を語った始大夫さん、「ご休息」が「ごくうそく」のように聞こえ、……え?これってそうやって読むの??と思いました。咲甫大夫さんの子どものお声は、なんとなく聞き慣れたような。五月の鶴喜代君がインパクトあったからかな〜??そんなに作り声っぽくもないかなーと思ったのですが、ところどころ低くなるのが、なぜ?!と、思いました。
 それにしても、可愛かったのは玉佳さん。飛び上がって松を切るところは、足遣いの人も大変だあ〜、と思いましたが、とっても子どもらしくて可愛かったのです〜(^^)。微笑ましいというか、こちらまでニコニコしてしまうような感じでした。
 ただ、お菊さんの述懐の時、ずーっと後ろを向いていたので、……なにかあった??と、心配してしまいました。別に何もなかったのかな〜??そして、その心配するお菊さんのところで、顔をこすっている弥三松くん。一瞬、泣いているのかと思ったのですが、眠かった?みたいでした。
 そこへ出てくる悪い奴、ただ、床から遠かったせいか、あまり迫力が感じられませんでした。しかし、舞台のお人形、動きがいかにも悪そ〜〜。わわ、寄ってきたら大変だよ〜〜、と思ってしまいました。京極内匠のやつは、お菊さんに気があるんです。きゃーこわい。耳に目覚ます弥三松 様子見せじと、フツと灯火(を消すんですけれど)のところで、「ふっ」と灯火を消す音がしたような……。
 悪い奴京極内匠は、そこからもお菊さんに言い寄ります。「返答せい、どうぢや/\」が、とてもよくて、不気味でした。
 お菊さんのほうは、口では実はあなたのことが好きだったのよ〜ん、惚れているのよ〜、と言っているのですが、暗やみに紛れて、コッソリ子どもを葛籠に隠し、刀を抜いているのです。そう、この京極内匠こそ親の敵!というわけで。
 しかし、切り込んでもハッと止められてしまいます。でっかいお声で笑う京極内匠。それに対して、お菊さんの「勝負/\/\」は、大迫力。ちょっとイメージと違いましたが、かっこいいお菊さんです。
 そして、すごかったのがここからの斬り合い。お菊さんと京極内匠の斬り合いが、まさに丁々発止、本気の殺気を感じました。ピリリとした空気、歌舞伎の立ち回りでみるような、ある種ゆっくりしたテンポのある立ち回りではなくて、ホントに斬り合う!という感じで。わ、わ、わ、わ、とホントにビックリ!緊迫していて、すごかったです。だから、お菊さんが切られた瞬間、「ハッ」としてしまいました。か、かわいそうなお菊さん……(・_・、)。そこへ最後の嫌みを言いつつ、グリグリグリ……と残虐非道っぷりを大いに発揮する内匠。うわああああ、本気だよこの人〜!ととても怖かったです……。
 その後、お菊さんを切った刀で着物の裾をぴらっとめくったり(嫌らしい奴!!きいいいいい!)、自分で殺して置いて「笑え」と言ったり、もーーーほんとに極悪非道。血刀を拭うのもお菊さんの着物で。なんてやつ、って感じでした。
 最後の悪いこと、は、葛籠を背負っていってしまうことなんですけれど、そこから小刀が出てくるようなんですが……これはちょっと見えなかったです。ビックリした内匠は葛籠を置いて去りますが、そこでバッタリ友平に会い、曲者、と言われて逃げて行きます。追う友平の足で躓くのが死骸……、そう、それがお菊さんの死骸なのです。お菊さまを殺されてしまった友平。曲者を追おうとする友平ですが、そのまえに……、と弥三松くんを探します。弥三松くんは葛籠の中。葛籠から刀が出ているのをみて、おや?と思ってあけてみると弥三松くんが入っていたのです。
 弥三松くんは、なにが起こったのかはハッキリわからなかったんですが、とにかく、最後の「母様に逢ひたいわいやい、母様/\/\」」のところが、とても切なくて、悲しくて、ほんとにかわいそうになりました。友平もそんな子どもを抱いて「道理だ/\/\」のところが、よかったです。そして友平はお菊の死骸を隠し、葛籠の中に入れ、背負って二人が連れ立って、出て行ったのでした。
 すごかったのは、なんといってもお菊さんと内匠の斬り合い。まさに「斬り合い」という感じで、こんなスピード感のある立ち回りにはビックリしてしまいました。しかも力強く、ホントにお菊さんて剣術が出来た人だったんだ〜、と感心。かっこよかったです。内匠の残忍さもよく出ていて、こわあーーい感じ。そして弥三松くんの嘆きも、かわ いらしさもとーってもよかったです。
 ちょっと残念だったのは、床の方が遠かったせいか、あまり迫力が感じられなかったところです。ここは、やっぱり忠臣蔵の五段目の定九郎のイメージがピッタリだから、かもしれないです。松香大夫さんの定九郎は、怖かったからな……。  

瓢箪棚の段 人形 配役
 始まったとき、こまを回している場面だったんですけれど、よくパンフレットと床本を見ていなかったので、なーんでコマ回して遊んでるんかな?と思いました。悪いはずの京極内匠がコマを回し、ツメ人形がそばで、なんか言っていたのですがしばらく、語りが続いている間も、子どもが独楽回しが珍しくて見ている様子なのかと…………。そのうち、お金をかける(?)ようなところがあって、おお、これは大人なのかーー!と、思いました……。
 そいで、そのコマに文句を言うツメ人形、……の鼻をへし折る(!違うか、鼻を取ってしまう……?)ところがあって、お鼻が落ちてしまうんです!こ、こーゆーところが文楽って突然グロテスクでビックリ。ひええ、怖い〜!!と思いましたが、なんとなくツメ人形の動きが玉也さんぽかったです(笑・動きが。違ったらごめんなさいまし〜〜)。
 大人のツメ人形が去ると、今度は下手から女性が三人。おおー、勘弥さんだー、と、驚いて見ていると、……ウーン、この人たちは、いわゆる夜鷹(と思ったらパンフレットにはそう書いてありましたね)?歌舞伎っぽいなー、と思ったのは、このあたりの言葉。なんとなく黙阿弥あたりの芝居にありそーな〜(イメージは三人吉三)、という感じがしました。
 お人形は勘弥さん、和右さん、それから簑一郎さん。簑一郎さんのお人形だけ、なんだか沈んだ感じで恥ずかしそうなのはなぜ?と思っていたら、やっぱり、京極内匠につっこまれてました(笑)。悪い奴が去った後、出てきたのがご老人。お金をやって、夜鷹を出て行かせるんですけれど、三人の夜鷹が出て行くときに、上手へ行くのですが一瞬、「……こっち?」みたいなところがあって、おもしろかったです。
 ここからは、英大夫さんと錦糸さん。錦糸さんが別の人と床に座っている!!というのに、まずビックリ。鮮やかな紫の肩衣が、印象的でした。
 駕籠に乗って出てくるお園さん。三味線の音が、しっとりとした、上品な音だなー、と思ったら、はっ、お園さんにピッタリの音なんだ!とすっごくビックリ。こんなにハッとするような音だとは……、と思いました。
 ここからもまた、歌舞伎っぽく、(イメージは助六の通人のところと、田舎侍のところです(^^))踊る簑二郎さんや、ちょっとやらしそうな、でも最後は走っていってしまう勘禄さんが印象的で、最後に出てきた馬に乗ったお侍さんは、ちょっと斜め……?な感じがしました。馬に乗る乗って大変、ですよね……。
 そして、そこに友平が出てくるのですが。わ。舞台はとーっても暗い印象なんですけれども、ホントに暗闇で人を見ているのがわかるお人形で、すごーい!と思いました。そのあとの友平が「お園様か、これはしたり……」となるところは、なんとなく言葉が千歳大夫さんのイメージだな〜という感じがしました。と、いうのも、たぶん最後の「ネイ/\/\ごわります」の奴詞(?)のところが、9月の平右衛門を思い出すから、なんですけれど……。なんとなく東国詞は千歳大夫さんイメージが拭いきれないです。
 そのお菊さんが亡くなった……、と告白して、友平、お園さんが泣く場面は、三味線が印象的でした。オクターブ(とは言わないんでしょうけれど)の泣きの手?二人が泣いている……というのが、ハッキリとわかる三味線の音。すごいなー、と思いました。
 それにしても口惜しそうな友平。思わず妹の形見の黒髪を奪い取るお園さん。友平の述懐の最中も、ぐっと怒っているのがわかるお園さんでした。泣いているんだけど、でも怒っている、という感じで。お園の述懐の最中に、友平は切腹の準備。髪を大事に大事に……としているお園さん、そこへグッと腹切り……。
 その後で出てくる京極内匠。ポイッと友平の投げ込んだお守りが、池を波立たせ、なんと京極内匠を呼び戻す……!おおーーー、ホントに歌舞伎っぽい!!そして池の中から刀をとりだし(誰としゃべってるのか、よくわかんなかったのが残念!歌舞伎なら光秀の亡魂あたりが出そうなところだなー、って気がしました)、抜き放つと蛙の鳴き声が!ここで三味線の音がすごく変な音で、も、もしかしてこれ、蛙の声?!とビックリ。でもって、お園さんがその京極内匠に寄って行くところでまた三味線に細工(?)をしているようでした。音が変わるぅ!と思っているからかもしれませんが、ちゃんと音が違う音で、響いて聞こえました。
 ここからは、もうすっかり舞台に魅入るばかり。お園さんと京極内匠の立ち回り、もうとにかくビックリしたのは、瓢箪棚の屋体の上(?)に、剣を投げ上げ、それを探すために京極内匠とお園さんが上に上がってしまうところ!!おおーー、上がったよ〜、と思っていたら、セリになっているようで、舞台が下がってきて、またビックリ!普段見ている文楽が、平面的な感じのものが多いのに対し、ホントに立体的な二段構造、しかも上で立ち回り!!三人遣いの立ち回りほど忙しそうでハラハラするものはないぞー!と思いました。しかもスローモーションじゃないのでスピード感も抜群!ビックリはその後で、お園さんの刀をバシーーー!!ッと折ってしまう京極内匠。ひええ、と思っていたら、それだけに留まらず、突然バッと観音開きに開いた、屋体の上野手すり、そこから簑太郎さんと、左遣いの方が、一緒に飛び降りてるっ!!!!思わず声を上げてしまったです。お園さんがびゅんびゅんびゅんと鎖鎌を振り回し、もう、ともかくすごい最後、でした。
 とにかく派手な立ち回りが印象的で、歌舞伎のように一つ一つが誇張されてゆっくりスローモーションになったのも好きなのですが、こういうスピード感たっぷりの、丁々発止もすごいなあー、と思いました。なんとなくおとなしい印象の強かった文楽ですが、こんな迫力満点、今まで歌舞伎の専売特許かと思っていた、激しい立ち回りがあるとは……。どちらがいい、とかいうのではなく、文楽は文楽ならではの迫力がすごく感じられ、ホントに大興奮!してしまいました!!!

杉坂墓所の段 人形 配役
 前半の木こりさんたちの印象はあんまりなく、京極内匠がおばあさんを背負ってやってくるところから。席が下手側だったので、背負われているおばあさんが、能面のようなお顔で、その後もじいっとしているお役のようで、固まっているみたいでした。
 京極内匠の、その芝居にうっかりとだまされ、御前試合で負ける約束をする六助。うーん、ちょっといい人すぎる。
 そこへ幼子を抱えて出てくるおじいさん。お園さんをご主人様と呼んでいたので、吉岡家に仕えるお侍さんなのでしょうけれど、ちょっとお年寄りなのです。だから、そこに「ヲヽイ/\」と呼びかける悪者、そのイメージはまさに忠臣蔵の五段目。怖いぞ〜、悪いぞ〜、というのが明らかに現れているお声。さ、定九郎だあーー!と思ったのは私だけではありますまい。松香大夫さんだから、よけいそう感じられたのかもしれませんけれど。
 お侍さんは、いかにもおじいさんぽく、「山賊ぢやな」と言うところの松香大夫さんのおじいさんも大好き〜!何ですけれど、ざくっと斬られてしまう……(・_・、)。でもあまりワルはワルでも、「極悪」という感じがしません。迫力がそんなに感じられなかった、というか。だから、その後で六助が出てきて投げ飛ばされても、不思議はない、というか。
 おじいさんが死んでしまい、「べいよ/\」と泣く子どもを抱いている様子がまたよくて、六助はねんねんころり、と子守歌を歌いながら(はっ、ここの三味線の旋律はどこかで聴いたことがあるような!と思いました。これ、忠臣蔵の道行き……で聴いたのかな?)、起きあがった悪い奴を倒して行きます。一人は岩にぶつかり、バタリ、もう一人は投げ飛ばしてびゅーんと飛んでいってしまいました。やられた〜!という感じがとてもよく出ていた文司さんでした。

毛谷村六助住家の段 人形 配役
 幕の中から、口上があるのが不思議な感じがしました。でもって、幕が開くとすでにそこは御前試合の場。といってもイメージしていた御前試合ではなくて、六助の家で試合をするんですね!私はてっきり城中とかでやるのかと思ってました〜。
 あっさり負けてしまう六助。エラソーな微塵弾正。エラソーに出て行くみなさんの、変わりに入ってくる「へしやげたわいの/\」と、たしなめるような手つきの、踊ってるみたいな、山賤さんたち。ただ、わからなかったのは、「額の傷」。あ、ついてたんだ……(←何も見えてないみたいですね……)。でもバカにされてもやさしい六助さん。正直で、強くてかっこよくて、なんだかいい人なのですね……うっとり。
 そこへおばあさんが出てきて、ホントの親子になりましょう、という展開になるのですが、あまりに唐突すぎて、見ていてもびっくり。ええっ?!変なこと言うおばあさんだなー、って感じが。
 それから外で石を積んでいる弥三松くん。なんだか、その健気な様子が、ちょうど目の前だったので、あまりに愛らしく、そしてあまりにかわいそうで……。なんだか玉佳さんが泣いているように見えて、じいん、としました。
 よくわからなかったのは、次に出てくる「こりや盗人め」と二三人、お園さんにつかみかかる人たち。ナニモノ……?ついつい投げ飛ばしてしまうお園さんですけれど、あまり派手というか、力強い感じはせず、ひらりひらり、という感じでした。
 最初は勘違いして、佐五平(おじいさんです。お園さんちに仕えているお侍の)を討った敵……と喧嘩(?)しそうになるのですけれど、弥三松くんがちょうど出てきて太鼓たたいて〜とせがんだりするうちに、ハッと毛谷村の六助ということがわかり、抱きかかえていた弥三松くんを、ボトッと落としてしまう……、ちょ、ちょっとお園さん(^_^;)!!思わず客席に笑いが……。ビックリして逃げてしまう弥三松くん。突然、人が変わったように、六助を見つめ、ウットリとし始めるお園さん。か、変わり身の速さがっ!そいでもって、惚れてる〜、って感じがしました。そのお園さんにびびってしまう六助もかわいい(笑)。なんだか玉女さんてモテモテ役の印象が強いです……(笑)。
 さらに押しの強いお園さん。女房さんがいるか、といないのね、いないのね、と何度も確認してしまう、このへんの太夫さんの真に迫った感じが良かったです(^^)。ビックリして、チョット嫌がっているような六助とは裏腹に、突然女房気取りのお園さん。間違えて尺八で火をおこしそうになったり、なんか、可愛い〜(^^)。
 で、そのなんでこうなるわけ?いったいあんたは誰なんだ?という質問に答えるお園さん。吉岡の娘です〜、と言って、父はだまし討ちにあって……というところで、ふっと目を伏せるお園さん。あ、あれ?目をつむるかしらだっけ??と思ってしまいました。目を伏せるタイミングがすごくいいなあー、と思ったのは、弟も自害しました……、と、いうところ。うしろぶり、などお園さんの見どころ満載。最後にぺとっと六助にくっつくところなども可愛らしかったです。
 その後の六助の述懐もよくて、なんといっても、三味線のすごい音が印象的でした。
 そしてタイミングよく、おばあさんが出てきて、めでたく夫婦になる二人。そこへ例のおばあさん(京極内匠が背負っていたおばあさんです)が、ホントは別の人の母で、殺されてました……、と言いに来るところ。ホントの母親だと信じて、微塵弾正に負けてやったつもりの六助は怒りまくって、三味線の音色も怒っている感じに聞こえました。でもって、庭石を三尺も踏み込んでしまう!という馬鹿力(ではなくて、なんというのだろう?床本では金剛力、とあります)。私、このあたりは、石を踏み割るのだと思っていたので、えっ、ぐぐっと中に入るだけ?と思ってしまいました。しかも、なんとなく出っ張っているときには庭石に見えなくて、手水鉢なのかと思っていた……。
 そして嫁と姑に見送られて、仇討ちに行く六助。最後の場面もかっこよく、なんとなくさっぱりした終わり方だな〜、と思いました。

全体に
 印象的だったのは、やっぱり須磨浦の段と瓢箪棚の段の立ち回りです。もっと、お菊さんは弱々しい人なのだと思っていたら、けっこう凛々しくかっこよく、逆に、お園さんは怪力の女武道なのだとイメージしていたためか、それほど喧嘩が強い、という感じがなく。ともかく、派手でこんなことするんだ〜、という驚きいっぱいの舞台でした。
 驚きはそればかりでなく、新たな発見は錦糸さんの三味線の音。普段なにげなーく聴いていて、キレイだな〜、とは思っていたものの(とはいえ、聞き分けられるわけではありませんー)、インパクトという面ではあまり感じられなかったんですけれど、瓢箪棚の段のところでは、ホントに太夫さんを助けている三味線の音なんだ!という感じがとっても強くて、すごいっ!と新たに感じました。




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