女性議員を増やすために 〜ノルウェー選挙に学ぶ〜
                                  三井マリ子
 
朝日新聞「論壇」より 

■衆院の女性率、世界164カ国中126位
ノルウェーは、2000年春、中道三党の連立から労働党内閣にガラリと変った。しかし、変わらないのは四割を超す女性閣僚の比率。ノルウェーでは「物事を決める場に女性が少ないのは民主主義に反する」という考えが定着しており、ほとんどの政党が決定機関の構成と候補者名簿において、一方の性が四割を下回らないようにするクオータ制(割当制)をとっている。内閣、国会に加え、地方議会も80年代から3人に1人が女性議員だ。ノルウェーに限らず、北欧諸国は女性の政界進出が目立つが、それは政党の多くがクオータ制のような特別策をとっているからだ。一方、日本の内閣は紅一点のみ。衆議院は女性25人で5%にすぎず、世界164カ国中126位の低さ。なぜ日本ではこれほどまでに女性が政治の場からはじき出されているのだろう。

■最高得票の人しか当選できない小選挙が悪い
最大の原因は選挙制度にある。北欧の選挙は国会も地方議会も比例代表制だ。この制度では、政党の得票に比例して議席数が配分されるので、ミニ政党でも議席を獲やすい。最高得票の人のみしか議会に出ていけない小選挙区制と正反対だ。「死に票」のない分、 民意が反映されるのである。

■北欧の平等はバイキング時代から
北欧が同制度を率先して採用したのは、物事の決定にはその結果を引き受けることになるすべての利益集団から代表が選ばれて審議に関わるべきだ、というバイキング時代からの伝統があったからだといわれている。ノルウェーの国政選挙区の定数は4〜15。選挙1年ほど前になると、政党は、定数に見合った候補者のリストを作成する。 リストは党のシンボルであり、偏った党と見られないよう、党候補者選定委員会が慎重に調整する。候補者探しは、 地域的バランスや経歴、年令も配慮する。

■クオータ制が生きるのは比例選挙
決定まで何段階も経、その都度マスコミを通じて公にされる。しかも、選挙資金は政党が用意し、候補者は私財を たったの1円も使わない。そうした候補者決定プロセスでは、男女のアンバランスを解消しない政党は有権者を引きつけなくなり、次第に、人口の半分を占める女の代表はおおよそ半分いてもいい、 という考えを多くの政党が持つまでになっていった。今や世界の選挙に絶大なる影響を与えているノルウェーの クオータ制だが、比例代表制選挙という土壌があったからこそ、 それが生きたのだ。

■小選挙区制は普通の女性に絶望的
これが、日本のような小選挙区となると、政党からの候補は普通は1名だ。 女性議員を増やすには現職の男性議員に挑戦して公認候補となることが必要だ。しかし、億単位の巨費が投入されて、地盤、看板、カバンでがっちり固まった現職に新顔がとって替われるのは、現職が引退してその「遺産」を引き継ぐ幸運を手にできた時ぐらいだ。 一般の女性にとって小選挙区での挑戦は絶望的難事業となる。日本の衆議院は長らく定数3〜5の中選挙区だった。 同制度でも複数候補を擁立できるのは自民党だけで、他党は 候補者一人がやっと。そのため、小選挙区ほどではなくても女性には不利だった。実際、女性の衆議院議員は何十年もの間1〜2%台を低迷していた。

■女性が増えたのは比例区があったから
96年の選挙でやっと4%台に届いた。当時の当選者の七割が比例区であり、小選挙区で当選した新人女性は唯1人。つまり、衆議院に女性が増えたのは比例代表制導入のたまものだったのである。ところが、2000年2月、日本の国会は、その比例区定数を20議席も削減してしまった。

■EU、フランス、韓国・・・世界は男女平等へ
目を外に向けると、小選挙区制に固執してきたイギリスの翻意により比例代表制に統一できたEU議会、パリテ法で 比例区候補の50%を女性にすべしと決めたフランス、 比例区候補に30%クオータ制を導入した韓国など、国際社会は男女平等に向かって確実に動いている。日本もこの国際的現実を直視し、女性や少数派に不利な選挙制度の改革、さらに政党がクオータ制などの女性議員輩出策 導入を急ぐべきだ。                                              

【三井マリ子】(朝日新聞2000.5.7「論壇」の元原稿)
 

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