フェミニストじゃないけど

●ノルウェー  ●1990年代末
●男女平等審議会、子ども家族省、男女平等オンブッド
●(70×35)B2

男女平等先進国ノルウェーの3つの国家機関の共同作品。
ノルウェーでも若い世代にはフェミニスト離れが目立ち、若い層や無関心層にどうしたら振り向いてもらえるかは、関係機関の悩みの種となっている。そうした中、この作品が生まれた。

ポスターは言う。 「私はフェミニストじゃないけど

 
でも、なぜ昼休みの電話番はいつも女なの?
でも、なぜ最低年金者の9割は女なの?
でも、なぜ男は機械いじりが好きなのに洗濯機にさわらないの?
でも、なぜリストラがあると真っ先に女が消えるの?
でも、なぜ子どもが病気だと私に呼び出しがくるの?」

 

賃上げには髭(ひげ)

●スウェーデン  ●2001年
●スウェーデン社会民主党女性部
●(50×31)B3

スウェーデンの内閣はちょうど男女半々である。もう男女平等の運動など不要に見える。しかし、その政権党、社会民主党女性部は、今も「政治権力も賃金も男女平等で均等配分せよ」とねばりにねばる。さすが、だ。ひげ(男性)は言う「ごめん、君の出番はもうないんだよ」。これは、長年「次は女の番」のスローガンで運動してきた女性たちへの男性からの回答だ。そこで、女たちは負けずにこう反論する。
「賃上げ交渉にはひげをつけるしかないの(性転換)?男女が完全に平等になるまで何年待たせる気?
私たちはもう待てない。オヤジ社会をぶっとばせ。公権力と賃金を男女平等にするまで決してあきらめたりしない」(赤は、スウェーデン社会民主党の色。)

 

ヨーロッパをもっと美しく

●デンマーク  ●1994年
●男女平等委員会
●(42×30)B3

デンマークの女性の政治参加は世界のトップレベルにある。 
欧州連合EUの議会にあたるEU議会における女性議員も、長いことデンマークがもっとも多かった。それでもなお、選挙が近づくと「女性を増やせ」とキャンペーンをする。男性ばかりの光景と男女半々の光景を上下に並べたポスターの真ん中の言葉は、「ヨーロッパをもっと美しく」と書かれている。
おもしろいのは、この表現にはもうひとつの意味があることだ。デンマーク語では、「ヨーロッパをもっと美しく」は「ヨーロッパをもっと平等に」と同じ表現であり、このポスターの本当のメッセージは、「もっと男女平等に」なのだ。

 

この家は私たちのものだ

●デンマーク  ●1982年頃
●女性支援センター「ダナーの家募金」
●(61×34)B2

「ダナーの家」とは、「女性の駆け込み寺」。この施設には、1人の女性の波乱の人生と、大勢の女性の闘いの物語が隠されている。国王フレデリック7世の恋人ルイーズ・ダナーは、前の恋人との間に子を持つシングルマザーだった。1850年、国王と結婚したものの、身分上、女王にはなれなかった。彼女は、国王の死後、2人が暮らした城を恵まれない子どものための救済所に寄付。さらに、死後、全遺産を貧しい女性たちの駆け込み施設に使うよう遺言した。それが「ダナーの家」。後年不動産会社に売り渡されたが、70年代、女たちが募金運動をして奪還に成功。老朽化した建物を自分たちで改築することになった。このポスターは当時の運動に使われたもの。現在、「ダナーの家」は総合的女性支援センターとなっている

 

女の給料の神話 

●フィンランド  ●1993年
●フィンランド 北欧閣僚協議会担当
●(45×31)B3

北欧5カ国は、閣僚レベルで頻繁に協議会を開き、政策のすりあわせをしている。このポスターは、北欧フィンランドの男女平等審議会を訪問した際、同審議会から寄贈されたもの。男女同一価値労働同一賃金の徹底をテーマにした国際会議用に使われたと思われる。
右の男性は上司で、中央の男性と左の女性は社員。上司である男性は、男性社員のネクタイを見て「君も同じ男だ」ということにうれしさを隠しきれない。
しかし、ネックレスの女性社員は?

 

女の子をなめちゃダメ!

●アイスランド  ●1993年
●女性党
●(30×35)B2横

「女の子をなめちゃダメ!」 「あなたの方が
ずっと赤ちゃんよ」とでも言っているのだろうか。
 強烈な絵が表紙を飾るのは、アイスランド女性党の機関紙。
新聞名は一番下に書かれている。直訳すると「スカートが巻き起こす風」。
 スカートは、力強く動くとそれ自体から風が巻き起こる。また、外からの風を受けて、さらにスカートは強く動き、周りに風を起こす。女たちの新しい動きで社会を動かそうという意味がこめられている。
 この新聞は、1983年に誕生した女性党の10周年を記念した特別号。筆者がレイキャビクにある女性党本部を訪問した1994年にお土産に贈られた。左側の紙面は広告でとくに意味はないが、左端にある5コマの絵はコンドームをつけようという趣旨のマンガだ。

 

なくせ セクハラ!

●オランダ  ●1993年
●ヨーロッパ女性警察官ネットワーク

(60×84)A1横●オランダにおいて同国自治省の財政支援
により、「ヨーロッパ警察署内のセクシャルハラスメント対策」という国際会議が開催された。オランダも加盟しているEU(欧州連合)の肝いりで行われ、各国の警察署代表と政府代表が参加した。この会議の後、女性警察官の増員、署内セクハラ対策強化が通達されたという。
この作品は、その時の広報に使われたポスター。警察官にあたるPOLICEという文字に、オスマークとメスマークをだぶらせたデザインは実に巧み。

 

最初の仕事に飛びついちゃダメ

●ベルギー  ●1990年代中期
●環境と社会的平等事務局
●(60×40)B2

若い女性の仕事の選択肢をもっと広げようというキャンペーン。
女性たちは、ついつい事務職とか看護婦とか従来から女性の多い職種を選びがちだ。でも、男の仕事と思われていた仕事にも向いている仕事があるかもしれない。
ポスターは語りかける―――
「仕事選びは、ボーイフレンドを見つけるのと同じよ。最初のものに飛びついちゃダメ」

 

ヨーロッパのための私たち女性

●ドイツ  ●1999年
●社会民主党
●(84×59)A1

欧州連合EUにある欧州議会に女性を増やそうというキャンペーン。欧州議会選挙は、6年に一度、加盟各国の直接投票で行われる。欧州議会に女性議員を増やすためのとりくみは、EUの行政部にあたる欧州委員会の提唱のもとに、各国でさまざまな工夫がされる。ドイツ社会民主党は、女性候補者18人が居並ぶこのポスターを街中に張りめぐらして女性議員増をアピールした。
こうした運動の結果、現在すでに、欧州議会議員の3人に1人が女性となった。

 

男女で手をつなぐヨーロッパ

●欧州連合EU  ●1994年
●欧州委員会
●(30×42)B3横

EUの男女平等を推進するためのシンボルマーク。 
このマークがポスター、リーフレット、カード、ハガキ、
レターヘッドなどに記され、利用されている。EUの男女平等行政は、欧州委員会の男女平等機会局が責任部署である。男女平等に関する法律案の作成と提起がここから出される。EU議会や理事会の承認を得、男女平等施策を執行するのも欧州委員会である。
EUの男女平等は、1957年の条約にもうたわれ長い歴史を持っている。昨今では、北京やNYでの国連女性会議において、行動綱領や成果文書作成に、積極的な役割を果たした。

 

アテネ宣言

●欧州連合EU  ●1992年
●欧州議会
●(42×60)B2横


1992年、ギリシャ・アテネにおいて開かれた第1回欧州サミット「政治権力と女性」で採択された宣言。
この会議で、EUは、政策決定への男女数のアンバランスを確認し、より多くの人々の利益を偏りなく、政策に反映するためには、女性の政治進出が欠かせないという結論を得た。このアテネ宣言後、EUにおける各種機構すなわち、欧州議会、EU委員会、閣僚理事会などで、同様の決議や文書が採択されていき、女性の政治進出にはずみがついた。

 

宣      言

女性と男性間の平等は、公式、非公式を問わず基本的な人権であり、女性は、人類の半分以上を占めており、
民主主義は、国の代表ならびに行政に同数の代表を必要としている。
女性は、人類の潜在能力ならびに人類の技能の半分を代表しており、意思決定においてその代表が少ないことは、社会全体の損失であり、意思決定の場に女性の代表が少ないことは、人類全体のニーズと利益を考慮に入れることを阻害し、意思決定に女性と男性がバランスよく参画することは、女性、男性を問わずすべての人に公平でバランスのとれた社会にふさわしい多様な考え、価値観、態度を生み出すことになる。
それゆえ、我々は、政治権力ならびに公権力が女性と男性間でバランスよく配分されることをここに宣言する。
我々は、政治や公的意思決定の場への、女性を男性の平等参加をここに要求する。
我々は、この男女平等を実際に確保するため、意志決定過程の構造を変える必要があることをここに強く主張する。
欧州連合(EU)における第1回欧州サミット「政治権力と女性」にて採択

(1992年11月3日ギリシャ・アテネ)

 

   

作者よりひと言
これまで、私は、女性運動や女性政策の調査のため、何度か北欧やEU諸国を訪ねました。
その訪問先で、友人や知人または招待された国際機関からポスターを贈呈されることがありました。
自宅に保存していたくさんのポスターから約40枚を選び、その使途や作られた歴史、社会背景を調査しました。
それをパネル化し、多くの人の目にとまるように工夫してみました。名づけて「北欧・EUポスター展:女性たちよ、進め!」。
ここには、そのごく1部を紹介しています。
パネル化にあたっては、私が勤務する「すてっぷ」の井原和恵さんをはじめ全職員、多くの方々の協力や知恵をいただきました。
「北欧・EUポスター展:女性たちよ、進め!」は、ある期間を設け「すてっぷ」の6階のギャラリーで展示されています。
広報宣伝費も不十分であり、6階ギャラリーは足が向きにくいところのため観客はそれほど多くありません。
本物のポスターは大きく迫力満点。「叫ぶ芸術」といわれるゆえんです。「すてっぷ」までヨーロッパの女たちの叫びを聞きにいらっしゃいませんか。

                                             三井マリ子 2002年12月    

三井マリ子所蔵 北欧・EUポスター展「女性たちよ、進め!」
(ポスター41枚、ポスター使途と時代背景説明つき)
 

各国の基礎データ出典先:

参考文献:

『ママは大臣 パパ育児』より、ドイツのみ 在日ドイツ大使館ホームページ(2001年)より

『ママは大臣 パパ育児』(三井マリ子著 明石書店)、『男を消せ!』(三井マリ子著 毎日新聞社)
三重県女性センターURL (http://w3.center-mie.or.jp/woman/koza100.htm)

翻   訳: 


協 力 :

 

編集・制作:  

三井マリ子/河村潤子/吉田邦子/井原和恵/藤原かすみ/ニールセン・サダコ/片岡豊/朝田千恵/Eva Stabell/ Bente Skjerven/ Hanne Malthe/Magni Melv_r/Kristin Roijen/

駐日欧州委員会代表部/在日ノルウェー王国大使館/スカンジナビア政府観光局/ノルウェー男女平等センター/デンマーク女性情報センター/デンマーク・オーフス大学図書館女性史資料館/ノルウェー国立ヘードマーク大学/Elisabeth MollerJensen/Eva Lous/ reiziger/大熊一夫/Magni Melv_r/Mette Knudsen/

財団法人とよなか男女共同参画推進財団