北への道 ノルウエーの男女平等
三井マリ子他編著、男女共同参画ツアー報告書編集委員会自費出版、2003年
2001年夏、鹿児島から福島まで全国各地から集まった21人が男女平等度世界一の国ノルウェーを見て歩いた。参加者による記録と視察時の資料など。A4版61ページ。写真36枚つき。販価800円。
注文は、すてっぷstep-0001@tcct.zaq.ne.jp まで
書評・感想

憲法12条の精神を教えてくれた報告書

 『北への道 ノルウエーの男女平等 世界の最先進国を見て歩く』(発行・男女共同参画ツアー報告書編集委員会、注文・とよなか男女共同参画推進センターすてっぷ=step-0001@tcct.zaq.ne.jp )を購入して読みました。

これは、同館長だった三井マリ子さんが、雇い止めされる前の2001年に、男女共同参画世界一のノルウエーを、総勢21人のツアーを引率して訪問したときのメンバーの報告書です。

メンバーの新鮮な驚きが伝わってきます。最初に訪れたコングスティンガー市での発見として、市議会議員は、特別な名誉職ではないことをあげている。だから、権威主義的ではなく、市民のための議会という感じ。そして、エイズボル憲法記念館。ここで、200 年近くも前に、欧州では当時、最もラディカルな内容の憲法をノルウェー全土から選出された112人の代表によって話し合いの上で決めたという。この場を保存・維持・公開しているということは、憲法制定の意義と内容を一人でも多くのノルウェー国民に理解させようという国民的合意がある。

次に私が、感動させられたのは、女性の150年間に渡る解放への闘いを展示する国立女性博物館。ノルウエーも昔は女性の地位は低く、家庭内での重労働に甘んじていた。それが、今や、世界一の男女平等国家。女性議員の比率が高く、70年代には男女平等状況を監視するオンブッドも出来ている。若い人には当たり前になっている男女平等だが「そんなときだからこそ、女性たちの150年間の闘いの資料を展示し、若い人たちに知らせることが大事なんです」という館長さん。

70年代に、女性の視点で研究をすることが進んだ中で、男性研究者の反発で女性研究者が孤立してしまったことがあった。そんな中で、女性をエンパワーし、女性に自信を持ってもらう、そんなことを目的にしたフェミニスト大学があることにもびっくり。

男女平等オンブッドは、それでもまだ、ノルウエーにも課題(育児負担は女性が多い、男女賃金格差、管理職割合の男性偏重)があるということを話し、その改善に取り組んでいる事実を日本からの訪問者に伝えていることがわかりました。

ノルウエーの労働党(日本でいえば自民党のような第一党を保ってきた)では男女平等を企業にも広げること、また、若者にアピールするような公約、また男女平等の選挙政策を出していることなど、時代に合わせた対応をしていることが分りました。翻って日本はどうか。女性が男性の常に後にくる名簿の順番をアイウエオ順にすること、自立と自尊を教える性教育の試みなど、ごく当たり前の、僕から言わせれば「この程度のこと」で、バックラッシュ攻撃。ノルウエーでも後退はあった。しかし、それにもめげず反撃していった。

日本の女性の権利はもちろん、労働者の権利も、組合の先輩たちが長年苦闘して獲得したものであることがどれだけ20代、30代に伝わっているか?平和憲法もどれだけ、汗を流して作り、守ってきたものか十分伝わっていないような気がします。労働組合は、時代の変化に合わせて、女性や若者の労働条件改善など、やるべき課題はいっぱい出てきたのに、それに真正面から立ち向かわず、政界再編に汲々としていた時期があったのは残念ながら事実でしょう。

日本でも、女性の戦いの歴史とか、労働者の戦いの歴史とか、とにかく、人権や民主主義の歴史をもっとわかりやすく伝えるような資料館(今ならインターネット資料館が良いか?)が必要ではないかと思います。いわば生活点でのこうした積み重ねにより、時代の変化に合わせてつねに前進への努力を忘れない気構えを、一人でも多くの人が持ちうるのではないか、と思います。日本国憲法第12条「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」、この重要性を、ノルウエーは教えてくれていると思うのです。

Satoh,Shu-ichi さとうしゅういち
E-Mail:hiroseto@f2.dion.ne.jp
地域・平和・人権・環境 広島瀬戸内新聞
http://www.h2.dion.ne.jp/~hiroseto/
ヒロシマ・ナガサキの心活かす21世紀の新しい政治を考える
http://www.f2.dion.ne.jp/~hiroseto/politics/

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