日本にも「ダナーの家」を
 

<毎日新聞 2003年1月28日「女性への暴力」記事原稿>

三井マリ子
とよなか男女共同参画推進センターすてっぷ館長





北欧諸国の国会の議席は約4割を女性が占め、女性の平均賃金も男性の8割に近づいた。とはいうものの、男性の女性に対する暴力支配がなくなったわけではない。
とくに移民の流入は、この種の暴力を増加させることになった。そこで、女性の駆け込み先としてのシェルターの一層の充実が、今、求められている。
北欧のシェルターは70年代の女性解放運動によってスタートした。今では、国や地方自治体から補助金を得て、有給の専従スタッフによって運営されるようになった。
デンマークでは、国中に40ほどあるシェルターのほとんどが全国連合にネットワーク化され、女性の人権保障の視点で行政やメディアに提言をし、公共政策に多大な影響を与えている。
先日、私は、女性への暴力に関心を寄せる友人たちを「とよなか男女共同参画推進センターすてっぷ」に招待し、デンマークから持ち帰ったばかりの『ダナーとその娘たち』というビデオを観た。
デンマーク初のシェルター「ダナーの家」ができるまでを描いたドキュメンタリーで、かつて日本で大うけした映画『女ならやってみな!』のミッテ・クヌートセン監督が1年前に作った。私が同国に滞在していた時、TVで何度も上映され評判になっていた。
ダナーの家ができたのは19世紀半ば。貧しい家柄の出で後に国王の妻となった女性ダナーが、身寄りのない女性の避難所として建てた。100年以上経た1979 年、オフィスビルに建て替えられることに決まった。その矢先、女性たちが「不法占拠」に成功。物語は、占拠→募金運動→館の購入→改造工事→シェルターへと劇的に展開する。
映画は、政治家やメディアを巻きこみ、当時最大の社会運動に変貌していく様を描いている。また、21世紀の人権問題である「女性への暴力」の底に流れる「男は強く、女はやさしく」という歪んだ主張こそ、70年代の女性たちが闘ったテーマであったことを示唆している。
上映後、「感動で体の震えが止まりません」と語った人がいた。
「北欧女性の地位の高さは、女たちが闘いとったものだとわかりました」という感想も多く寄せられた。
上映権を買い取るため募金活動をしようという動きも出てきた。みなさんにお見せできる日もそう遠くはなさそうである。