公募館長の3年 〜女性センターは今〜
                                  三井マリ子
 
中国新聞より 

第2回:ノルウェーから講師        


「先進国」の知恵学ぶ

 すてっぷは、三年間にノルウェーから六人のゲストを迎えた。昨年は、春に同国初の女性党首として著名なオスロ大学名誉教授ベリット・オースさん、秋には現職の男女平等オンブッド(オンブズマンのこと)のクリスティン・ミーレさんが来日して講演した。
 オースさんは、七〇年代、政策決定の場に女性を増やすための「クオータ制」を、世界に先駆けて政党に導入した人である。彼女の著作『男性の支配テクニック』は、北欧を中心に各国で翻訳され、闘う女性たちのバイブルとなっている。
 一方、ミーレさんは、男女平等法に設置が定められている監察官だ。「大臣と裁判官を足して二で割ったような」強い権限を持つ。
 ノルウェーといえば、高い出生率が有名である。それは、ひとえに妊娠、出産、育児が女性にハンディとならないような環境を整えているからだ。
 「何が北欧だ。遠い外国の話なんか聞いて何になる」と陰口をたたく人も、私の周辺にはいる。しかし、サッカーにたとえたら分かるはずだ。サッカーが遅れていた日本が、今日の盛り上がりをみせているのは、サッカー先進国の優れたプレーを日本のスタジアムで直に見る機会があったことと無関係ではあるまい。

 国連による男女平等度の世界ランキングで、日本は四十四位。一方、ノルウェーは、ほぼ毎年一位。その世界一の男女平等国家の代表がオースさんであり、ミーレさんだ。つまりオースさんは、サッカーでいえば、往年の大スター、ブラジルのペレであり、ミーレさんは今をときめく花形選手ベッカムである。
 先日、会ったノルウェー大使館のマリアンヌ・ロー参事官は、私にこう言った。「これまで日本で一番ニーズが高かったノルウェーの産物は、『魚』でした。今や、『男女平等』がそれに迫る勢いなんですよ」
 実際、男女平等界のペレやベッカムに会うため、関西一円はもちろん、中国、四国地方からも聴衆が集まった。
 六〇年代までは、ノルウェーも「男は外、女は家」という性役割の色濃い社会だった。それを変えたのは平等を願う女性たちである。
 そうした国の知恵は必ず役に立つ、と私は確信し、積極的にノルウェー女性を呼んできた。渡航費の一部は、各主催者で割り勘にした。ゲストたちは皆、「日本女性の置かれている窮状に役立つならば」と、エコノミークラスでの長旅をいとわずやってきて、翌日から精力的に講演をこなしてくれた。
 でも、帰国の際、決まってこんな耳の痛い感想を残した。「マリ子、日本の女性センターの素晴らしい建物には感心するけど、この広いスペースに、今最も必要とされているドメスティック・バイオレンス(DV)被害女性のシェルターが、なぜ一つもないの?」       

 
(三井マリ子・とよなか男女共同参画推進センターすてっぷ館長)
 
(2004年1月18日付中国新聞朝刊)