イタリア女性躍進の道は
男女半々かクオータ制か 
 
2007.7.30
三井マリ子
ローマ市街に貼られている「女が1番!」のポスター
「天の半分、地の半分」。パリタリア民主主義を提唱するポスター

 イタリア・ローマではどこを歩いても、2000年以上昔の遺跡が目に飛び込んでくる。巨大な街全体がまるで考古学博物館だ。世界遺産の景観を損なわないようにと、街のポスターは必ず決められた公共掲示板に貼られている。その1枚に私の目は釘付けになった。

 「女が1番」と書いてあるではないか。「女が1番」にあたるイタリア語は「プリモ・ドンナ(Primo Donna)」。「プリマ・ドンナ」にかけているので、イタリア語に通じていない私にさえ強烈なインパクトで迫ってくる。

 頭文字「P」と「D」の2文字が大きな赤で躍る。「PD」は、今、イタリア政界に出現しようとしている新しい左派勢力「民主党」のイタリア語にあたる「パルティート・デモクラティコ(Partito Democratico)」の略称だ。「女が一番」ポスターには、「PD」すなわち「民主党」の結成プロセスにおいて、女性の力を行使しようという意図が込められている。


 現与党連合を組んでいる多くの政党が参加する新党・民主党「PD」は、今年10月14日に党の結成大会を開き、正式に誕生する予定だという。すでに新党の党規約を決める委員会の45委員が決まっている。7月に入り、ローマ市のヴァルター・ヴェルトローニ市長や、ロジー・ビンディ家庭大臣(女性)が新党の党首候補に名乗りをあげている。国内外のマスコミが、連日党首候補たちの思想や経歴を大きく報道している。

 この動きに関して、知人のイタリア人は私に言った。

 「12年前の(中道左派連合)『オリーブの木』結成の時は、もっと燃えました。市民が声を上げて党首候補を絞っていくプロセスを踏んだからです。今回は、ローマ市長が自ら手を挙げてしまった。彼に決まったかのようにメディアも報道する。これでは民主的なプロセスとはいえませんから、しらけムードが出てしまいます」

 とはいえ、市民からはるか遠いところで“ボス交”によって政権党の党首が決められてきた日本に比べれば、党結成のプロセスが市民に開かれた形で進むのは、とても新鮮な感じがする。

 「女が1番」のポスターに近づいてみると、こう書かかれていた。

 「世界を変えるためには、そこに参加しなければならない。――ティーナ・アンセルミ」

 ティーナ・アンセルミは、イタリア人なら知らない人はいない。17歳でパルチザンに身を投じ、ナチスやファシストと戦った超有名な女性だ。戦後、キリスト教民主党から国会議員に当選し、女性として初めて大臣となった。議会では、男女平等のための法の制定に命を賭けた。まだ元気だという。

 「女は1番」のポスターは新民主党に関する政治集会への参加を呼びかける。ラッツオ州(ローマが州都)男女平等大臣など、有力女性政治家が参加する、とある。

 2006年春、ロマーノ・プローディ首相が、右派ベルスコーニから政権を奪還した際、女性たちは超党派で組織をつくり、閣僚の少なくとも30%は女性にするクオータ(割り当て)制の実行を迫った。すでに北欧諸国だけでなくスペインまでが閣僚の半分は女性だ。イタリアはEU加盟国で最も女性閣僚が少ない国の1つなのだ。しかし、ふたを開けてみたら26人中わずか6人。重要ポストの女性は保健大臣のみで、ほかの5人は(行政機関に属さない)無任所大臣だった。プローディ首相は「2人しか女性閣僚がいなかったベルスコーニ内閣より4人も増えた」と弁解したものの、女性たちの怒りはおさまらなかった。

 こんな状況の中で「50対50―─あらゆる決定の場で男女を半々に」という目標を掲げた運動体も登場した。イタリア女性連合と呼ばれる組織だ。

 男女半々にすることをイタリアでは「パリタリア民主主義( Democrazia Paritaria)」と呼ぶ。パリタリアは、かの有名なフランスのパリテ(男女均等)にあたる。社会は男女半々で構成されているのだから、市町村議会から国会にいたるまですべての議会は、男性50%、女性50%で構成されなければならない、と主張する。イタリア女性連合によると、クオータ(割り当て)制は、そもそも差別された少数派である女性にゲタをはかせよう、という考えから抜け出ていないので、支持できないという。

 「天の半分、地の半分」と書かれたポスターは、3月8日の国際女性デーに一斉に街に貼られた。同時に「議会におけるパリタリア民主主義法案」への賛成署名が集められ始めた。数日前、訪問した「女たちの家」の中庭で署名運動がされていたように、現在もまだあちこちで続けられている。

 バカンス真っ最中の7月末、ローマの事務所を訪ねると、3人の女性スタッフが奮闘していた。

 「半々になることが自然でしょ。クオータ制はもう古いのです。クオータ制では、現在ある父権主義の政治を根本的に変質させることはできないのです。男女が半数ずつになったあかつきには、政治そのものが変わりますよ」

 EU加盟国の中でも女性進出度が最低に近いイタリアには、パリタリア民主主義の運動は高望みしすぎる、というフェミ二ストたちも多いというが、私にはこちらの方が筋は通っているように見えた。

イタリア女性連合のスタッフのみなさん。壁の書棚は1946年から2007年までのイタリア女性解放運動の資料でぎっしり。ファイルボックスは年代別に、そしてアルファベット順に整頓されている


参考サイト:
http://www.50e50.it/
http://www.udinazionale.org/
http://www.dsonline.it/
http://www.blogdemocratico.it/blog/
http://www009.upp.so-net.ne.jp/mariko-m/colum2004-1euusa.html

(三井マリ子)

出典:http://www.news.janjan.jp/government/0707/0707290021/1.php

 
©Mariko Mitsui サイト内の一切の画像・文章の無断転載を禁じます