労働組合がはじめた福祉施設の試み

神奈川県最大の産業別労働組合である電機連合(電機連合神奈川地方協議会)
では、過去25年以上に及ぶ障害福祉活動のさらなる発展形として、
社会福祉法人を設立し、いくつかの福祉事業を行っています。
その経過を簡単に紹介いたします。


福祉施設設立の経過

小さな訴えから

電機連合とは、全国の電機・情報・関連機器の産業で働く組合員で組織している、いわゆる産業別労働組合です。神奈川県下には現在89の単組・支部、約10万人の組合員で組織されている、電機連合神奈川地方協議会(以下、電機神奈川)があります。

今から25年前に、一人の障害のある子どもをもつ組合員の声を受けて、電機神奈川では、全国でもユニークな「心身障害児・者対策活動」を開始しました。当時神奈川県内では、障害をもつ子の両親が地域で自主的な訓練会をつくり始めていました。しかし、実際に訓練をする場所も人もなかなかみつかりませんでした。まず、このような支援から、電機神奈川の対策活動が始まったのです。


電機神奈川の障害福祉活動

心身障害児・者対策活動も、国際障害者年の理念である「ともに生きる社会づくり」への大きな潮流につながり、「ともに学び、遊び、育ち、働き暮らせる社会」を目指して様々な障害福祉活動を展開してきました。現在の主な活動は、次のとおりです。

専任の福祉相談員の常駐により、障害や介護を必要とする高齢者を抱える組合員の子弟や地域の個別の相談に応じています。

各組合の障害者雇用担当者の学習会を開催したり関連団体の障害者雇用促進会議に労使で参加を求めたり、養護学校2年生などを中心とした職場実習を受け入れなどを行っています。

ほぼ毎日、電機神奈川福祉センターと共催で、障害者または高齢者と直接ふれあいながらボランティアの第一歩を学ぶ「ボランティア体験講座」と、聴覚障害をもつ仲間と円滑なコミュニケーションを図れるように、職場単位で手話講習会を開催しています。

障害をもつ組合員やその家族、そして旅行になかなか出かける機会がもてない地域の障害者と一緒に沖縄リゾートの旅を楽しむ「沖縄ふれ愛の旅」の企画・実施ならびに、電機神奈川主催のみかん狩りに障害者を招待したり、地域の様々な行事へのボランティア要請に応えています。

組合員が関係する地域作業所や自主訓練会・親の会など地域活動を展開しているグループに対して財源的な支援を行っています。

組合員一人ひとりへの障害福祉活動の理解を求める広報活動や幹事として障害者団体と地方自治体との話し合いの場に参加したりなど、多様な活動を展開しています。


財源活動

25年以上にわたる障害福祉活動を支えてきたのは、電機神奈川傘下の組合員であり、その財源は、通常の組合費とは別のカンパ収入です。このシンボルが、ティッシュペーパー・カンパです。

オリジナルデザインのボックス型ティッシュに、障害福祉活動のトピックスや相談活動の案内情報を入れ、組合員ひとり2個を目標にカンパ活動を展開します。このティッシュペーパー・カンパ活動は年々実績を上げ、現在1千6百万円以上のカンパ金があがっております。1996年には、このティッシュボックスは、活動のユニークさも含めグッドデザイン賞を受賞しています。

写真・オリジナルティッシュ

図1.ティッシュペーパーの見本(95年〜97年モデル)


社会福祉法人設立へ向けて

これまで、地域で生活する障害児者を支援してきた電機神奈川は、この活動20周年を記念して、新たな事業を計画しました。20年の間に、障害をもつ子どもたちの育ち学びあう場は広がり、選択できるようになってきましたが、卒業と同時にその進路が狭くなっている現状に私たちはまず注目しました。親から自立する場・機会が非常に限られていたのです。

そしてもう一つ大きな問題として、障害者の雇用に対する企業の理解や認識がまだまだ不十分でした。特に、大企業における知的障害者の雇用はあまり進んでいませんでした。

一過性の活動だけでなく、労働組合としての新しい価値を見出し、地域に根差した活動の拠点作りとなるような事業をやったらどうかという意見が出されて、「知的障害者が就労により社会的自立すること」を大きな目標とした、本格的な福祉事業に踏み出す決定をしたのです。


福祉事業の内容

1995年に「社会福祉法人電機神奈川福祉センター」の認可を受け、現在、4つの事業を展開しています。

通所授産施設ぽこ・あ・ぽこは、知的障害者福祉法などに基づく知的障害者50名定員の施設です。

神奈川県内独自の地域就労援助センターは、現在、横浜市磯子区の「横浜南部就労援助センター」と藤沢・茅ヶ崎・寒川の2市1町を対象とした「湘南地域就労援助センター」、川崎中部・北部地域を対象とした「川崎北部地域就労援助センター」の3個所がありあす。

横浜市磯子区において、高齢者ならびに地域に生活する障害者の相談・福祉サービスの申請窓口とデイサービス、地域交流事業を行う「新杉田地域ケアプラザ」を行っています。

電機連合神奈川地方協議会と共催で、ほぼ毎日、障害者と高齢者と直に接する機会をもつ「ボランティア体験講座」を開催しています。

(志賀 利一)


戻る