通所授産施設における問題行動への組織的対応

1997年11月〜12月に2個所の事例報告会でまったく同じ実践報告をしました。
発表した内容の資料をそのまま掲載いたします。
前半の職場の紹介は、このサイトの他の Archive を参照して下さい。
<スライド10枚:時間約30分>


スライド1・タイトル

これから約30分間、私の職場、「通所授産施設ぽこ・あ・ぽこ」において、行動上の問題を抱える利用者に対してどのように対応したかを紹介いたします。


スライド2・結論

このプレゼンテーションの結論は5つです。

  1. 職場全体の予防体制がまず大切:起きてからどう対処するのかではダメ! 私はこんなに頑張っているもダメ!
  2. 認知の障害をもっている事実からスタートする:情緒の未成熟説(例:安心で切る信頼関係を築くことができれば解決する)、しつけ不足説(例:いつも甘やかしているからダメなんだ)、生育歴説(例:あの家庭は小さい時から...)などの仮説から、職員全体が共通した対応法を見つけられるほど、私たちの職場は能力が高くありません。「その問題が起きる可能性の高い場面はどんな条件なのか?」を確認した後は、まず「利用者はその場でどうしていいかわからないのではないか?」「周囲から期待されていることは難しすぎるのではないか?」など、認知的な仮説を中心に対応を決定していきます。
  3. ひとりにしか通用しない対応も大胆に:たった1人にだけの、特別な個別対応も、大胆に取りいれていきます。
  4. 継続と変化の繰り返し:まず計画を立てて、同じ対応を必ず一定期間継続します。かなり安定が見られたら次により侵入度の少ない・手厚くない対応を計画し、また一定期間継続します。その繰り返しです。決して思い付きで対応を変えることはしないが、例えば3ヶ月間同じ対応を繰り返すこともしないのが原則です。
  5. 職場内の資源を過信しない:施設外の、家族、世話人、ケースワーカー、そして医療機関など、外部資源をかなり強固に意識しながら計画を立てていきます。

スライド3・ぽこ・あ・ぽこの概要

詳細はトップメニューに戻って、「職場紹介」の項を参照して下さい。


スライド4・利用者の概要

詳細はトップメニューに戻って、「職場紹介」の項を参照して下さい。


スライド5・組織的予防体制

  1. 仕事が途切れない:無意味な待たせる時間を無くす努力を惜しまない、受注仕事を取る営業の責任の重要性、グループ全体の仕事を作るのではなく個人の仕事を明確に作ること。
  2. 安全配慮の優先:トラブルが起きた時でなく、普段の仕事に対する安全管理にも最新の注意と対策をとる。 職員が大声で怒鳴らない:視覚的な指示の使用、隣へ行って具外的な指示を出す、あるいは特別な個別ミーティングの場面を随時とる。
  3. 一職員が勝手な判断で対応を変えない仕組み:対応の決定はミーティングで行う。ミーティングは頻繁に実施。ただし、安全確保はその限りではない。また、ミーティング前に決定しなくてはならないことは、最低2人の職員で話し合って対応し、ミーティングで事後報告ことも可能。
  1. 何らかの変更を必要とするものか? 
  2. 作業グループを変えられないか?
  3. 作業の場所を変えられないか?
  4. 個別の場所を準備する必要があるか?
  5. 1日の日課を変える必要があるか?
  6. 仕事量やチェック体制を変える必要があるか?

スライド6・事例とまらないおかわり

  1. 「誰に何回あいさつすればよいのかわからない」
  2. 「ポットのお茶は残くなるまで飲み続けなければならないと思い込んでいる」
  3. 「視覚的・物理的状況は人の制止より強力な刺激である」

スライド7・その対処法

  1. お茶のお代わりの容器なし(水分は休憩時間等で十分補給済み)。
  2. 個室から配膳の返却のみを食堂のカウンターに持っていく。
  3. セルフサービスなしで、食堂の人数が少なくなった時間帯で食事(下膳のみ自分で)。
  4. 時間帯は変えずにセルフサービスで食事をとる。

スライド8・事例食堂でかんしゃく

  1. 目の前に提示されたものは、本人にとって「食べろ」という命令に相当する指示なのかもしれない。彼には、「好きなものだけ食べて」という中間的で瞹昧な指示はわからない。
  2. 目の前に食事が残っていると食事を終了することができない。必ずすべてのお皿が空にならないと、食事が終われない。つまり、お皿に嫌いなものを残すことはできない。

スライド9・事例静養のすすめ

  1. 作業の手が止まる
  2. 目つきが厳しくなる
  3. つめを噛み始める
  4. 小さな唸り声をあげる
  1. 作業台の前がパーテーションで区切られた場所で仕事をする。他の利用者が視界には入らない上、職員用の小さな事務所での仕事のため背後にも利用者は存在しない。また、休憩時間や昼食時間は、他の利用者といっせいにワイワイ騒いでいる時間を確保することと、作業の部材を取りに行くのは自分で行うなど、作業室の入室を禁止しているわけではない。本人は、この特定の作業環境を了承しており、好きであるとも言っている。
  2. 前兆が観察されたら、職員はすぐ横へ行き、小さな声で「しばらく休みますか?」と質問する。前兆を見逃さないことが一番大切であることと、この質問に対してはほぼ100%「休む」と答えるため、休憩コーナーのソファーで座って休むのか、ベッドで寝て休むかなどは本人に選択してもらう。だいたい、1時間半程度睡眠をとったら、自分で部屋に戻り作業を開始する。
  3. 工賃規定に「静養控除」を加る。当時のぽこ・あ・ぽこでは、欠席や相対に対して、所定休暇日数に響く規定にしていたが、途中で休んで仕事をしない人に対しての規定は特に設けられたい無かった。そこで、「静養控除」という名目で、休憩の時間分(実際は半日分)は有給休暇減、あるいは有休が無くなると欠勤対象になる規定を設けて、仕事と賃金との公平さを確保する。

スライド10・事例医療機関と連携

最後は、精神科症状を伴う、問題行動への対応です。比較的若い、そして軽度や中度の知的障害をもつ利用者がたくさん集まる場ですから、当然、精神科症状が現れるないしは以前からもっていた人が何人もいます。

自宅に帰っても、すぐに外出し、一晩中徘徊して、睡眠をほとんどとらなくても2週間くらい平気でそれも非常にテンションが高い生活をしていた人。いつのまにか、電車に乗るのが辛くなる、人通りの多い道は避ける、作業室など多人数が集まっている場所には入れないなどの症状を見せる人などもいます。

ぽこ・あ・ぽこでは、「がんばって、解決する」という対応ではなく、些細な言動でも、精神科症状の可能性も検討し、もし危険度が高い際には、家族・ケースワーカーそして関連した診療所・入院施設などと速やかな連携を取ることとしている。何よりも大切なのは、職員全員が、精神科症状を見せる利用者に対してどのように配慮するかとどのような対応をしてはいけないかを常に確認することである。


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