通所授産施設が福祉的就労機能を発揮するには?

現在、多くの授産施設、特に都会型の通所授産施設では、本来求め
られている、福祉的就労の機能を果たせていません。法外の小規模
作業所等と比較すると、利用者一人あたりにかかる継続コストが
4倍とも5倍ともいわれる、通所型の授産施設が生き残るため
には、やはり福祉的就労機能の発揮しかないはずでが...


福祉的就労の機能とは

知的障害者の昼間の支援を行う活動を、「デイサービス」と「福祉的就労」と2つに便宜的に分けてみました。

デイサービス
  • 家庭以外に、日中定期的に通う場所を作ることで、心身に健康な生活リズムを作り出す
  • 障害の特性に合わせたプログラムを作成することで、より自立した生活へ向けての指導や支援を行う
福祉的就労
  • 保護的な環境で仕事を行うことにより、働くことへの意欲や自信を育てる(それにはより高額の工賃が必要)
  • 一般就労することにより、さらに自立した生活ができいるよう、継続的な支援を提供する

知的障害者のための授産施設、それも通所型の施設は、本来福祉的就労機能を求められています。しかし、現状は、

  1. 一月の平均工賃が1万円を越える施設は少なく、働くことにプライドを持ちさらにその意欲を育てる環境には無い
  2. ほとんどの施設では、施設から一般就労へとステップアップする利用者を出していないし、そこへ向けての十分な支援もできていない

福祉的就労機能を発揮するための流れ図

下の略図は、制度上授産施設ではあるが、機能的にはデイサービスと同じになってしまっている施設が、より福祉的就労機能を増していくためにはどのような変化が必要かを簡単にまとめたものです。

「作業室一斉型」とは、デイサービス機能しか持ち合わせていない授産施設のことです。「高工賃作業型」とは、付加価値の高い授産科目(主に自主製品)を企画することで利用者の平均工賃を上げたり、同様な効果を授産科目の量や種類を増やすことで成功させている施設のことを言います。このような施設では、少なくとも平均工賃が2万円は軽く越えているはずです。「施設外作業型」とは、施設内の作業室だけではなく、企業内授産(作業)や職場体験実習など、施設外の実際の職場環境に近い仕事の場を確保している施設です(作業室の分場とは違います)。このように定期的に一定規模の施設外作業を行っている授産施設では、当然、高工賃作業型と同様、比較的高い工賃を利用者に払っているはずです。そして最後の、「就労支援型」は、毎年コンスタントに一般就労者を出している施設です。このような施設は、偶然就労した利用者が出るのとは異なり、一般就労へ向けての強い意志と戦略がありますから、平均的に毎年3〜5人以上は就労者を出しているはずです(定員にもよりますが)。

上記の流れ図の4つのタイプがステップアップする流れを矢印で示しました。まずはっきりしていることは、「作業室一斉型」が「施設外作業型」に成ること無しに、「就労支援型」に移行することは無いことです。また、比較的高い工賃を支払い福祉的就労機能をすでに発揮している施設が(高工賃作業型)は、そのままでは「就労支援型」に移行することは無いと思われます。必ず、「施設外作業型」を経由するはずです。

ステップアップの課題

デイサービスから福祉的就労機能を高めていくための課題を下の表にまとめます。上の流れ図の@からCの矢印にそれぞれの課題は対応しています。

@「作業室一斉型」→「高工賃作業型」
  • 利用者の支援として彼らのプライドの持てる、そして社会により高く評価される仕事を提供することが重要であり、それを実現することが施設運営として優先順位の最も高い課題のひとつであることが、施設全体で確認されなければなりません。
  • 授産科目の選定等は、施設のトップ(施設長等)がイニシアティブをとるか、授産運営に才能ある職員にそれなりの身分と責任を与える組織体制が必要です。
  • 利用者の工賃は、働きや頑張りにより明確な差が出る、公平なルールを設定する必要があります(悪しき平等主義の撤廃)。当然、その評価基準について、職員間で定期的に議論される場が無くてはいけません。
A「作業室一斉型」→「施設外作業型」
  • 利用者が保護された作業室内に元気に通うだけでなく、障害のない人が周囲にたくさんいる、より一般的な仕事の場所に通うことが大切な自分たちの職務(支援活動)であり、それは利用者本人にとっても重要なことであると施設全体で確認されていなければなりません。
  • 施設外の作業の場確保やそこでのスムーズな支援活動を続けるための、いわゆる営業担当の人材を教育・配置し、その職員にそれなりの身分と責任を与える組織体制が必要です。
  • 施設外の仕事を行うと、施設外の事業所等、本人、そしてその保護者などとの継続的な調整業務が発生します。施設の多くの職員が、この業務の重要性を理解し、さまざまなトラブルに即対応できる知識と技能を身に付ける必要があり、そのための継続的な教育訓練(OJT)が必要になります。
  • 施設外に出す利用者の条件や必要とされる個別の支援の量や内容など、より個別化された利用者の評価について、職員間で定期的に議論される場が無くてはいけません。
B「高工賃作業型」←→「施設外作業型」
  • 多くは、この両方のタイプの福祉的就労機能をひとつの施設に共存させています。すでに「福祉的就労の重要性を施設全体で認識に」「それを実現するための組織作りを終え」「悪平等ではなく、利用者一人ひとりの能力をより個別的かつ正確に把握」しようとしている施設にとっては、どちらのタイプであっても、もうひとつのタイプの機能を獲得するためにそれ程大きな課題はありません。問題は、施設のトップが「やろうとするかどうか」判断するだけです。
C「施設外作業型」→「就労支援型」
  • 利用者の措置が外れて、一般就労することは、より自立した生活へ向けての第一歩であり、より多くの人がそのようになれることは大切であり、それへ向けての支援が自分たちの施設にとっても大切なことであると、施設全体で確認されていなければなりません。
  • 施設のトップ(施設長等)が、率先して、労働関係団体や地域福祉の推進組織と連携をとり、就労している障害者を支える地域の仕組み作りに積極的に関与する必要があります。
  • 実習や施設外作業と雇用とは全く別物です。多くの知的障害者は継続的な支援無しでの就労は難しいのも現実です。雇用や労働に関する知識や知的障害者の就労支援についての最近の動向などについて、自ら学習し実践に生かそうとする職員の配置(育成)とそれなりの身分ならびに責任を与える組織体制が必要です。
  • 利用者についての適切な作業能力評価だけでなく、利用者を取り巻く生活支援の力や現存する社会資源の活用方法、中長期的な生活設計の見通しなどについて、職員間で定期的に議論される場が無くてはいけません。

ステップアップに踏み切れない外的要因

ついでに、通所授産施設が上記のような福祉的就労機能を発揮するための自己解決がすすまない周囲の外的要因についても考えてみます。

現行の授産施設運営制度:これまでの社会福祉事業全般の制度や措置制度の仕組みから、施設が授産のための設備投資がなかなかできなかったり(設立時の初度調弁はあるが)、授産会計の柔軟な運用ができなかったりなど、利用者保護重視のため、積極的な授産経営に足かせがかかってしまいます。もちろん、就労者をたくさん送り出したり、高い工賃が支払える授産運営を行っても、施設の経済面で何らプラスにはらないどころか、余分な業務が増えるだけです。

当事者・保護者の圧力の無さ:授産施設を利用する当事者(利用しないまでも地域福祉を考える立場の保護者など)は、福祉的就労の重要性を考えるよりも安定して通える場所として授産施設を評価しているのかもしれません。「より高い工賃を」とか「一般就労へ向けてのより積極的な取り組みを」と圧力をかけることはほとんどありません。確かに、これまで学校卒業後の箱もの作りに全力をあげており、その内容やサービスの質まで検討できなかったのも事実です。

行政担当者の指導力:福祉的就労の設置運営に自治体は積極的に関与しており、指導監査とうで定期的なチェックを行う役割を担っています。しかし、授産の経営やそれによる利用者の工賃の高低ならびに就労へ向けての実績に対する評価は、全くといっていいほど行われていないのではないでしょうか。障害者福祉行政として、地域で描かれているプランは、明らかに福祉的就労の面が強調されているにもかかわらず、実態としてその機能を評価し、指導することはかなり難しい課題なのかもしれません。さらに、施設運営のサービスの質などのチェック項目は、ますます福祉的就労に力を入れずらい内容になっています。


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