調布・鶴川陸橋


 都内では、交通渋滞のボトルネックとなっている交差点や踏切を、道路管理者や交通管理者など関係機関が連携して改善に取り組んでいます。 その対策メニューの一つに、東京都で進める「踏切すいすい事業」があり、その第一号となる立体交差橋が、2003年春、調布市内で開通しました。
 この工事は、近年各方面で関心を寄せ、検討を続けている短期間施工立体の実例でもあることから、工事の施工概要を紹介します。


 この立体交差橋(跨線道路橋)は、鶴川街道と呼ばれる古くからの幹線道路と、新宿駅から八王子市や多摩市方面に延びる京王線とが交差する地点に位置し、道路の交通量が多く、かつダイヤの細かい踏切での、安全やボトルネック現象の解消を図るものです。

  対象
道路の鶴川街道は、稲城市から北へ、調布・三鷹・武蔵野の各市を経て西東京市に至る、多摩地域の主要な南北道路(都市計画道路、調布保谷線)の一つに位置づけられ、集中的に整備が行われています。
 従来、この踏切前後の道路は、往復二車線の道路でしたが、多摩川に架かる多摩川原橋と共に、幅員25mの四車線道路へと、拡幅整備が進められてきました。

 一方、密集市街地を平面で走行している京王線も、交差道路の遮断解消と線路両側の一体的なまちづくりを進めるため、いわゆる連続立体交差化事業として、調布市の中心市街地を対象にして(地図の波線区間)、地下化する計画があり、事業化の諸準備が始められています。
  しかし、この京王線の地下化計画が完成するまでには、まだ10年を超える期間が必要と予測されています。
 そこで、進捗してきた道路や橋の整備効果を、早期に具現化するため、拡幅された道路スペースを活用した立体交差橋が計画されました。 それがこの鶴川陸橋です。


 
この立体交差橋は、道路幅員の制約から、道路中心側に往復二車線の立体構造を設け、その両側に一車線づつの踏切りを残した形態になっています。
 陸橋部の設計仕様は、通常の橋梁と変りありませんが、踏切のすぐ北側には、交通量の多い道路(旧甲州街道)が交差しているため、陸橋の最急勾配を9%となり、最高部は踏切上より南側にシフトした縦断計画がとられています。
 なお、施工期間の短縮、工費の縮減、及び橋梁部の転用も考慮に入れて、プレキャスト製品が多用されています。

 
 

 
この事業は、企画して発注された都・建設局の関係部や担当事務所等、関係者の創意・工夫と、施工に当たった三井造船(株)をはじめ工事に携わった方々の努力により、計画・設計段階から事業完了まで約2年間(工事期間11ヶ月)という、正に短期間での施工が果たされました。
  
 平成15年3月末日には、多くの住民が見守るなか警察車両が先導して開通しました。


   
 
【工事の概要】

 

 
  
 
  

鶴川陸橋は、全長が289m、橋長は163mの9径間連続立体ラーメン鋼床版鈑桁で、P4〜P5間が京王線の跨線部となっています。アプローチ部は、半プレキャスト擁壁と場所打ち擁壁で構成されています。
跨線部のP4、P5橋脚は、京王線地下化工事への影響を軽減するため、杭基礎となっています。



 

  施工場所の地盤は、表層3mが関東ローム層で、その下に支持層となる礫層がありました。地下埋設管への影響も踏まえて、礫層までを流動化処理土により地盤改良を行っています。
橋脚基礎は、プレキャストPCブロックを設置し、現場でPC鋼棒で緊張一体化する構造となっています。
上部工は、鋼床版鈑桁と鋼製橋脚を横梁で剛結したラーメン構造で、橋脚下端にゴム支障が設けられています。また、高欄は、工費・工期の節減から、鋼製型枠による場所打ちRC壁高欄となっています。




アプローチ部は、地耐力を確保するため、橋台とプレキャスト擁壁ブロックを橋軸方向にPC鋼線で緊張し一体化する構造となっていて、擁壁側面及び壁高欄は場所打ちRC構造となっています。
また、自重を低減するため車道面はプレキャスト床版となっています。これらプレキャスト製品の多用で工期の短縮が図られています。



工期は、工場製作も含め平成14年4月30日から平成15年3月末まで、ほぼ11ヶ月でした。
5月より鋼桁及び鋼製橋脚の工場製作、橋脚基礎や擁壁のプレキャストブロックの工場製作が開始され、間もなく現地での基礎工事にも着手していますが、並行して京王電鉄委託の跨線部の架設、ガス管保護工事や水道管移設工事などがあり、工事と作業ヤードの調整など、時間的にも場所的にも無駄のない施工が強く要求される工事でした。



【主要工種の施工状況】

まず、擁壁及び橋脚基礎について流動化処理土による地盤改良が行われました。
掘削するにあたり、周辺が住宅地域であり、アセス対象工事でもあることから、振動や騒音に配慮し、親杭のH形鋼は、オーガ併用杭打機で施工しています。施工は、作業ヤードや車線切り回しの関係などから、橋脚基礎、擁壁基礎の順序になっています。掘削はオープン掘削ですが、埋設物の影響部分は二分割施工となっています。中央に見えるのはガス管です。 支持層まで掘削後、流動化処理土をミキサー車で運搬し、コンクリートポンプ車で打設しています。

 

アプローチ部プレキャスト擁壁は、幅1.25mのプレキャストRCブロックを橋軸方向に緊張、一体化する構造になっています。
ブロックの底面が地面と接触しているため、極力摩擦を抑えるように、台座を設けて滑りやすくしています。この空隙は、緊張完了後、ブロック上面に設けた孔よりモルタルを充填しています。




プレキャストブロックは、トラックにより現場搬入し、クレーンで据付ました。ブロックの据付は、基準線に合わせ、各ブロックごとにジャッキで慎重に位置を調整しながら所定の位置に設置しました。
作業は工事渋滞を避けるため、午後11時から午前3時まで側道の片側一車線を規制し、一車線の交互通行としました。




PC緊張は、均一にプレストレスが導入されるように検討した結果を踏まえ、真ん中から交互に外側のPC緊張を行いました。定着は、他のプレキャスト部材同様に、将来の解体を考慮してナット定着方式としています。



擁壁のプレキャストブロックを緊張後、壁部分を場所打ち鉄筋コンクリートで施工しました。
プレキャスト床版はRC製で橋軸方向に、PC鋼線で緊張する構造となっています。



プレキャスト床版は、トラックにより現場搬入し、施工性を考慮して縦断勾配の低い側から、トラッククレーンで据付ました。




  橋脚基礎のプレキャストPCブロック(薄い灰色部)は、PC鋼棒で橋軸直角方向に緊張し一体化する構造になています。濃い灰色部は場所打ち鉄筋コンクリートとした部分です。




プレキャストPCブロックは、トラックにより現場搬入し、クレーンで据付ました。
PC鋼棒は片側4ブロックを据付後、二分割されたPC鋼棒を挿入し、残り4ブロックを据え付けた後、1本を引き出し中央で、カップラーを用いて接合しました。



  橋脚基礎の完成後、台座上にゴム支承を設置し、鋼製橋脚の仮固定を兼用したベントをたて、クレーンで鋼製橋脚を架設、桁と脚を剛結する横梁を架設しました。



桁架設は、プレキャストPCブロックと同様に、夜間一車線の交互通行の交通規制で行い、2ヶ月弱で架設を完了しました。
騒音の生じる桁の接合作業は、低騒音のセッターピンを使用しました。基準値をオーバーすることなく接合作業を終え、苦情も寄せられませんでした。



最後の橋面工では、鋼製型枠を設置し、場所打ちRC壁高欄及び地覆を打設しました。続いて透光板の遮音壁を設置しました。
橋面防水は、塗膜系防水を用いています。鋼床版の舗装は通常グースアスファルトですが、縦断勾配9%あり、舗装のだれが危惧されることから、たわみに追従性が良く施工性の良い砕石マスチック混合物を基層とし、表層を密粒度アスコンとしています。最後に、滑り止めのカラー薄層舗装を施工し完成しました。


この工事は、短期間施工と工費縮減を目指した立体化事業として、多方面の方々の現場視察、NHKや新聞よる報道など、注目を集めました。非常にタイトな工期でしたが、関係者の創意・工夫が重ねられ、工期となっていた3月末には、無事に開通を迎えました。

 [メニューへ戻る]

調布鶴川陸橋