庭を作るときに考えていること

Our thought about making the private garden

設計の植野です。
庭を設計するときや造園作業をするにあたって、いつも参考にさせて頂いている考え方を私が感じていることも交えてご紹介します。これは私が幼少期を過ごした庭を作った方の哲学のようなもので、私の庭作りや設計の中に刷り込まれてしまっている遺伝子といえます。 皆さんの庭を作るときにも参考になれば幸いです。 以下の青字は資料から、黒字は私の私見です。
1 庭って何でしょう
庭の意味 庭という言葉はもともと平らな土地を表す言葉でした。人間が儀式や政を行う場所を庭と呼びました。 ニワという言葉の「ニ」は赤い土をあらわし「ワ」は大地をあらわしました。
緑の植物を剥ぎ取って平らに作られている土地。 樹木がないので空が見えてさえぎる物がありません。 天と地が繋がる、神と繋がる重要な場所を意味していたと考えられます。


世界中には荒涼とした広い土地にも海上にも人が住んでいるので、これは主に森の民としての日本人に当てはまることかも知れませんが・・・人が住むために植物は必要ですが土地を平らにしなくてはなりません。例えば山などの斜面にいるとき人は歩き続けないといけません。ビバークをするときは少しの平らな場所に身を置きます。ぽっかりとした平らな土地に重力に従って立って初めて人は安心するのかも知れません。
庭木 古事記の原本、ホツマタエによると常世の国には橘が植えられていました。その後桜も植えられるようになりそれが右近の橘左近の桜に繋がっていきました。つまり庭木とは自然の植物に対して意味と目的を持って人工的に植えられた樹木のことでした。

今の庭作りの中でも家族のために願いをこめて木を植えられる方がたくさんいらっしゃいます。 庭に植えられる樹木には今も昔も人にとって特別な意味があります。
園  
ガーデンの意味
園とはある囲われた場所を意味し、果樹や野菜などが植えられる場所です。意味として「園」は英語の「ガーデン」と共通します。庭園とは上記の意味を統合して、理想郷として作られ、観賞価値、芸術性の高い創造物です。

人間は土と植物なしでは生きていられないのではないでしょうか。地球が誕生し海ができ、そしてまず植物が海から陸上へやってきて環境を整え、そして私たちが生まれました。 植物は食料として癒しとして常に私たちの周りにあります。 それをもっとも効果的に生活の中に取り入れる場所が庭園です。 庭があり小さな畑があり土と水と光と植物とともに生きる場所、そしてもっとも安全に囲われた場所。 家屋が魂を休める場所ならば庭は自由に魂を解き放つ場所。 庭と人との関係はそのようなものではないかと思います。
2 庭を構成するもの

庭だけでなく全ての生活の基盤になります。 土の良し悪しでその場に住まう人の健康、心理状態、運勢にまで影響があるかも知れません。風水の良い場所は植物がよく育つとされています。 光や風の条件を改善するのは難しいですが土の状況を改善するのは可能です。

森や自然の野原では生物の活動と循環によって土は栄養を蓄えてそこに生きるものと相互に良い状況を作り出していきますが、庭の土壌は人間が手入れをしなければすぐ栄養が枯渇してしまいます。 庭を美しく保ちたい保たなければと思う日本人の美意識がゆえに掃除と除草が行き届くほど土はからからに干からびていくのです。美しく剪定をして形を整えた庭木でも土が枯れているとどこか根源的な生物のパワーが感じられなくなり命の艶がなくなっていきます。
日本庭園を構成する重要な素材。自然石の取り扱いには独特の表現方法があります。 加工された石材や彫刻的に作られたものも使い方次第ですばらしい表現力を示します。

石を一つ据えるとそこに東西南北ができます。 大事な一手になる石もあれば脇役になる石もありますが全て意味と役割があって据えられます。それは日本庭園でも洋の庭でも同じことだと思います。そうでなければ石は気が強すぎてうるさくなるのです。たくさんの石が集まって道になったり壁になったりするときも庭師は一つ一つの石と会話をしながら石を据えていきます。石は山から切り出したり拾い出してくるところから庭作りが始まっています。大きな岩でも無数の小石でも庭師が一つ一つ使い所を考えて拾ってきます。
庭を構成する上での重要要素。人間に与える心理的要素が強いので植えつける植物の種類は充分な吟味が必要です。多くは施主の好みによって選ばれます。樹木は必ず生長して大きくなります。5年10年後にどのようになっていくかということも考慮しておかなければなりません。また生き物であるから生育環境も考慮しなくてはなりません。地域によって環境条件が異なるので管理法をマニュアル化することは困難です。経験が物言う部分が少なくないので混乱が生じやすい。手入れが不可欠です。

経験豊富な庭師でも3年ほど手入れしてようやくその個体の性質がわかってきます。進化し続ける樹木は一つ一つが別の生き物なのでなかなか本に書かれているような手入れだけでうまく育つとは限りません。毎年の気候の激変にも毎年違う戦略で植物は対応しています。毎日毎日眺めていると不思議とそんな木の声が聞こえてきます。水が欲しいのか肥やしが足りないのか光が足りないのか、おそらく庭師よりもその庭に住まう人のほうが植物の変化を敏感に感じているでしょう。樹木に異変があったときにどのような手を打つかの判断には試行錯誤が必要ですが大切に見守ることがまず木を立派に育てる一歩ではないかと思います。

池や流・滝などを作ることによって庭の表情が豊かになり動きが加わります。ただ水を使うにはいろんな困難が生じます。 工事費、技術、水質維持のメンテナンスなど。

小さなせせらぎが自宅の庭にあるのはとてもいいものです。池があれば魚を飼うのも楽しく蛍やヤゴも寄って来ることがあります。ただ維持管理には手間と観察が欠かせません。自分で小さな河川管理局をするわけですからそれを楽しいと思わなければお勧めはできません。
元々火は家の中心、生活の要にありました。近代化とともに熱源は薪や炭からガスや電気に変わってしまい、取り扱いは楽になりましたが人間生活のバランスが崩れてきているように思われます。 熱源としての火より明かりが重要視されそれも全て電化されてしまいました。 火をコントロールできるのは人間だけですがその技術も消えつつあります。 庭に火の要素を持ち込むためにガーデンクッキングを奨励しています。火のあるところに人が集まります。

今日では落ち葉焚きも近隣に気を使ってされなくなりました。子供の頃は庭での焚き火で薪のくべ方や火のおこし方、風のよみかた、狼煙の実験、お芋の焼き方などを身体で学びました。電化で便利で安全になりましたがマッチの擦り方がわからない小学生達を見ると、もっと庭で火に触れさせてあげたいなぁと思います。落ち葉は焚けないかも知れませんがバーベキューや火のカンテラ、花火など。大人がつききりでいなければならないですが焔を見つめることはどこか魂の原始的な部分を揺さぶる特別で楽しいことだと思います。
3  デザインの前に
庭と建築 全ての庭は建築とともにあります。 建築計画と同時に庭・外構計画も進めるべき。

そうはいってもなかなか難しいものです。とてつもなく潤沢な予算のある建築では庭や外構から作ってそこに家を合わせて建てることがありますがそういうケースは一般的ではありません。 ほとんどの建築の場合で庭・外構は後付けになります。そして建築の段階では外構や庭の決定的な提案ができないので外構費を取りおかずに建築のほうにつぎ込んでしまって結果、当分の間は庭・外構に手がつけられなくなってしまう場合があります。しかしながら後付けには後付けの利点もあります。 やはり家は住んでみなければわからないことが多いのですが、庭については住みながらゆっくり検討したり自分で何年もかけてつくりあげていくことができるのです。 家はそう簡単には使い勝手を変えるわけには行きませんがその家の機能を庭と連動させることによって暮らしやすさを向上させられることもあります。
とはいえ、建築計画の段階で共に庭の機能性について少しでも考えておくことは格段に家への環境的負担、住人への身体的負担を軽減させ、住環境全体を著しく向上させることは言うまでもありません。 
環境条件の把握 土・光・風・水などの環境条件を良く観察しておきましょう。さらにその場所の持つ雰囲気を把握することも重要です。ただこれには個人差がはなはだしいのでよく勉強研究するとともに、自分の感覚を信じることです。

やや難しい地形や困難な環境条件ほど面白い庭ができたりします。それはおそらくその場所の持つ特異な雰囲気や風土の色が明らかで、そこから庭の作り手が影響を受けるからでしょう。直感でアイデアが湧き、自然とそこでしかできない庭を作るので昔からそこにあったかもしくは地面から生えてきたような安心感のある庭ができるのだと思います。反対にきれいに区画整理された長方形の平らな土地は案外頭をひねらないといい案が浮かびません。そんな時は住人の個性を表現するとうまくいくような気がします。
目的 家族構成や好みによって庭に求めるものは様々です。建築よりも選択肢も多く自由度も高いですが、それゆえに混乱も生じやすい。 目的をある程度はっきりさせておくほうが良いでしょう。

目的といっても庭で何かをしなければならない、というような目的ではなく、精神的にも肉体的にも暮らしやすいポイントを見つけてそれに合わせて庭を作っていくということだと思います。 どんなに美しい庭でも庭は庭だけで存在することはありません。 常に人がいて庭として認知され成立し、愛着が湧いて相互に良い作用が働きます。 ですから自分と家族の中から出てくる気持ちと目的がとても大切です。
予算 建築と同時に庭も含めた全体予算を決めておくと良いでしょう。 庭は段階的に作っていくことも可能です。 経済的に無理をしないこと。


庭は特になくてもいいようなものですので経済的な無理は禁物です。 また作ると時々メンテナンスも必要になってきますので後々のコストも考えた計画が必要です。