浄土真宗本願寺派
総 長 蓮  清 典 様
2000年7月8日
靖国問題を考える念仏者の会
代 表  川 上 三 郎

公開質問状T


  先般、2000年3月17日~19日の三日間、本願寺聞法会館におきまして、人材育成対策事務所主催による「第5回組活動推進者養成研修会」が開催されましたことは周知のことと思います。この研修会の中で、「積極的に社会の問題に関わる為に、外部(宗門外)で活躍されている方のお話を聞く」として企画された遠山正瑛氏の「記念講演」の中で、靖国問題に取り組む教団としては、明らかに問題のある発言があり、また氏が「アミダの森」と深い関係にあることから氏の発言が宗門に与える影響を鑑み、この質問状を提出することとなりました。

  いくつか氏の発言の問題箇所を列記しますと、
 

1.  「・・・・・私は幸か不幸か。昭和3年に徴兵検査を受けた。・・・・・だから徴兵司令官は我々にこういう訓辞をした。『兵隊になるだけが国家に忠儀ではないぞ。各々の職場において役に立つ人間になりなさい』。・・・・・私はその通りだと。『軍人だけが国家に対する忠儀ではない。各々が職場において役に立つ人間になって社会を立派にしなさい』。・・・・・そして京都大学へ入ってきたから、さっき申し上げるように大谷猊下にお目にかかって『大東亜共栄圏をやらなければ駄目だ』というお話を受け賜って、私は『そうだなあ』と思って今それを実行している訳。・・・・・」

2.  「そもそも太平洋戦争なるものはロシアが満州へ出てきた。それで共産主義のロシアが出てきたから『これは怖い』と思って、日本は満州で日露戦争というものが起きてしまった。ロシアを追い返した訳。・・・・・そうして日本がその後の権益を再びロシアがこれ出てこないように満州というものを守った訳です。それで守るためにはそこへ満州国というものを作ってしまった訳ですね。これは守らざるを得ない。いつでもこれロシアが狙っているものだから。また出てくるかも分からないから日本軍がここで追い返した訳。   ところが、それが今度は満州事変が隣が北支、北支那ですから、そこに色々いろんな張作霖であるとかいうような、いろんな軍人政権があって、日本がまた出て来やしないかと言うので排日運動、抗日運動をやった。だから日本が出てくる事をとにかく抑える。仕方なくてそれが北支事変になったんです。・・・・・・」

3.  「・・・・・江沢民さんに。『江沢民先生、これからね慰安婦問題、靖国参拝問題、南京殺掠問題の3つは口にしては困る。それはもう過去の歴史だ。そんな事を繰り返したって今後の日本と中国との国交は決して進まない。これはもう過去の歴史である。それよりも日本と中国は協力して立派なアジアを作ろう』という事の約束をして、それで江沢民も『イエス』と、こう言っているから、過去における慰安婦問題、靖国問題、私の教え子も靖国神社へ行っているんです。私も靖国神社へ行く訳なんです。『君らの霊が皆ここへ納まっている。それで後の日本は我々がやるから安んじて眠ってくれ』。南京の殺掠問題はあったかないか、それは私には分からないが、あったとしてもなかったとしても、もうそういう話はやめよう。歴史だから。そういう事なんです。ここらはもう江沢民さんも『イエスだ』と言っている。もしも言ったら、あいつの首を切らなければいけない。」


  「21世紀は砂漠の時代  アジアは一つ  世界は和平」と名付けられた遠山氏の講演の問題点は、大東亜共栄圏の思想、国家論、歴史認識、戦争責任の黙殺、戦争被害者に対する抑圧、国旗・国歌論・天皇論などあげれば枚挙にいとがまありませんが(別添講演記録参照)、ことさら問題なのは、靖国問題に取り組むことを運動方針として掲げる本願寺が、なぜ事前に発言内容をチェックすることなく、遠山氏を研修会の講師として選定したのでしょうか。

  さらに、遠山氏は、日露戦争から太平洋戦争に至るまでの事の発端を、「ロシアの共産主義が出てきたから」と説明していますが、日露戦争勃発当時(1904年)、ロシアはニコライ二世による専政の下にあり、共産主義の台頭は1917年のロシア革命以後のことです。すなわち氏は、反共主義による偏見とイデオロギーによって歴史を改竄し、さらに「全ては共産主義の侵略と、列強の侵略のため」と日本の侵略の事実を握りつぶしています。公演後もこのような遠山氏の明らかな歴史認識の間違いを、主催者側はいまだ研修者に対して説明をしていないのはなぜなのでしょうか。

  この講演を聴いたある研修者は、「本願寺はいつ180度運動方針を転換したのか」と不安と動揺を露わにしていました。またこの研修の参加者の中には、町全体が大きな神社の観光収入で成り立っているような状況の中で、批難を真っ向から受けながら靖国問題に取り組んでいる人もあり、「なぜ本願寺から後ろ足で砂をかけられるような侮辱を受けねばならないのか」といった声も聞かれました。「十年後の組活動を担う人材を育てる」と銘打って企画された研修会の中で、百年前の亡霊の復活を体験させられるのは、耐えがたい苦痛であり、また僧侶に対する侮辱であります。真摯にこの問題に取り組む僧侶に対して、足を引っ張るかのようなこの講演を企画した本願寺と人材育成対策事務所の責任は大変重大であるといわざるを得ません。

  我々の質問の要旨は次の二点です。
 

T  誰が、何のために、どのような目的で遠山正瑛氏を講演者として選定したのか。

U  誤った歴史認識・靖国観が流布されたことについて、今後どのように研修者、もしくは宗門内に説明・訂正していくのか。あるいはその意思があるのかないのか。


  以上、質問の主旨を十分ご理解・ご検討いただき、7月末日までに文書にてご返答をいただきますようお願い申し上げます。


備後教区  光永寺
 住  職     毛 利 慶 典


「備後・靖国問題を考える念仏者の会」(通称  靖念会)

一九八五年秋、準備会を発足させ、翌一九八六年四月に発足しています。呼びかけの主旨は、「今、靖国問題より問われている念仏者としての信心を確かめ、親鸞聖人の目指された御同朋・御同行の社会の実現を目指す」で、スローガンは「靖国問題は信心の問題です」を掲げています。
  会発足いらい、「即位の礼・大嘗祭」「湾岸戦争」などリアルタイムで起こってくる問題に発言するとともに、教団の中の靖国問題、地域社会での靖国問題を明らかにし、課題化してきています。
  今回の遠山発言への取り組みは、その一貫した取り組みの中で、教団の課題とする必要性があると、会で議論をした中で、教団に提起したものです。



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