2001(平成13年度)基幹運動計画

1.基幹運動(きかんうんどう)とは

私たちを取り巻く現状

【浄土真宗のみ教え】

 浄土真宗は、本願成就(ほんがんじょうじゅ)の南無阿弥陀仏(なもあみだぶつ)のはたらきによって、凡夫(ぼんぶ)が仏(ぶつ)に成る教えであり、今ここで正定聚(しょうじょうじゅ)の身(み)とならせていただくということです。それは、お互いが大悲(だいひ)につつまれたいのちであり、御同朋(おんどうぼう)であることを知らされることです。そこから、自己中心的な生き方を見つめ直し、いのちの尊厳(そんげん)と平等観に樹(た)って、本願にもよおされた新しい人生がはじまります。

【社会と教団の現状】

 今日、私たちの社会は科学技術の進歩などによって、かつては考えられなかった生活をおくることができるようになりました。しかし、その一方で、人類の欲望は、世界中に「人権抑圧」(じんけんよくあつ)「環境破壊」(かんきょうはかい)「戦争」(せんそう)など多くの深刻な問題を引き起こしています。さらに「高齢・少子化」(こうれい・しょうしか)「過疎・過密」(かそ・かみつ)「青少年問題」(せいしょうねんもんだい)「生命倫理」(せいめいりんり)など、社会のあらゆる分野でさまざまな矛盾や悩みが露呈(ろてい)しています。まさに苦悩する社会ともいえましょう。
 こうした社会の中にあって、私たちの教団においても、従来の寺院や伝道教化のあり方などに大きな影響を受けています。
 また、教団は同朋教団(どうぼうきょうだん)であるべきにもかかわらず、部落差別をはじめとする差別体質を残存させ、ヤスクニ・環境など現実の問題に積極的に取り組もうとはしてきませんでした。

私たちの課題

【基幹運動のあゆみ】

 私たちは、こうした現状のなかで、教団や社会の本来あるべき姿を実現するために基幹運動を進めてきました。基幹運動は、教団や社会の現状から目をそむけず、み教えに問い聞きながら、同朋教団の再生・御同朋の社会の実現をめざす運動です。
 これまで、門信徒会運動(もんしんとかいうんどう)は40年、同朋運動は50年のあゆみを重ね、先人は多くの成果を残してきました。
 その成果の一つに、門徒推進員の誕生があります。門徒推進員は連続研修(連研)(れんけん)の開始以来着実に増加し、その一人ひとりが社会の課題に積極的に取り組むことを決意し、運動推進の大きな力になっています。

【運動の課題】

 このような基幹運動の取り組みを、一層着実に進め展開するためには、門信徒の参画(さんかく)が不可欠といえます。これまで以上に全員聞法・全員伝道(ぜんいんもんぼう・ぜんいんでんどう)を実現するという目的を門信徒と僧侶が共有していかねばなりません。その共有するものとは、「差別法名・過去帳調査」によって明らかにされた課題や、これまでの基幹運動の成果を僧侶が門信徒に問い、門信徒が僧侶に問うていくことでもあります。あわせて門信徒や僧侶がともに男女共同参画(だんじょきょうどうさんかく)を具体的に実現することも大切です。
 ことに今日、差別の現実を見抜くことができなかったこれまでの教学理解(きょうがくりかい)の見直しが教団の内外から求められています。また、御同朋の願いに応(こた)える教学をすべての教団人がともに学びあい、各教化団体などと連携(れんけい)しあいながら、生涯を通しての聞法のあり方を確立していくことが必要です。

【次代にむけて】

 新しい時代にむけて、私たちは、地球的規模の諸課題を自らのものとしなければなりません。それは、宗祖親鸞聖人の「一切(いっさい)の有情(うじょう)はみなもつて世々生々(せせしょうじょう)の父母(ぶも)・兄弟(きょうだい)なり」というおこころを体し、国家や国籍など、人間のつくり出したあらゆる立場を超(こ)えていく御同朋の教学をよりどころとした生活でありましょう。
 今こそ、私たちは、み教えを聞き、信心(しんじん)に生かされるよろこびを伝え、御同朋の社会をめざしてあゆもうではありませんか。
 きたる2011(平成23)年には、親鸞聖人750回大遠忌(だいおんき)を迎えます。その時に向けて、浄土真宗のみ教えが、今を生きる私たちのよりどころとなり、私たちの教団が、一人ひとりを支える大きな連帯の輪となっていくよう、皆で力をあわせましょう。

2.  目  標       御同朋の社会をめざして

3.スローガン    念仏の声を 世界に 子や孫に

4.重点項目

  1. 全員聞法(ぜんいんもんぼう)・全員伝道(ぜんいんでんどう)の話し合い法座を実践し、門信徒会運動(もんしんとかいうんどう)を推進しよう
    ―親鸞聖人のみ教えに学び、力を合わせて同朋教団(どうぼうきょうだん)の再生をー
  2. 現実を直視し信心の社会性を問いつづけ、同朋運動(どうぼううんどう)を推進しよう
    ―差別・被差別の事実から、私と教団の差別の体質を改める実践をー
  3. 人びとの悩みに応(こた)える活動を展開し、開かれたお寺にしよう
    ―すべての人びとが参加し、家庭・地域・職場にみ教えの心をー
  4. 過去の過(あやま)ちに学び、平和を求める念仏者になろう
    ―非戦・ヤスクニの課題を担(にな)い、平和への確かな歩みをー
  5. すべてのいのちや人格を尊重し、いのちの尊厳と平等観に樹(た)って生き抜こう
    ―人権・環境など、いのちを損(そこ)なう社会の問題への取り組みをー

5.活動内容

  本年度より、新しい基幹運動計画書が実施されます。本年度の活動は、新計画の下、これまでの運動の成果を継承し、さらに深化・充実させていく取り組みとしていきましょう。
  同朋運動が始まって50年という期間で、その成果について「これだけか」もしくは、「これほども」という評価はそれぞれにあるでしょうが、少なくとも、現在、運動が提唱されたときには考えられなかった実践や課題の共有があります。私たちの運動は着実に進んでいるといえるでしょう。
  とくに、新計画における、門信徒との課題の共有については、それらの成果をもとに、単なる知識学習等の学びに終わらせず、具体的な実践を共有することが必要です。そのためにもさまざまな機会をとらえた学びが必要です。新計画をしってもらうための「普及版」や具体的課題を提起する「共にあゆむ」も体裁を一新します。これまでの取り組みを点検し、バランスのとれた学びと実践をめざしてまいりましょう。
(1)全員聞法・全員伝道の話し合い法座を実践し、門信徒会運動を推進しよう
―親鸞聖人のみ教えに学び、力を合わせて同朋教団の再生を―
    来年度は、1962(昭和37)年に門信徒会運動がはじまって40周年を迎えます。
  門信徒会運動は、「親鸞聖人の生き方に学び、つねに全員が聞法し全員が伝道して、私と教団の体質を改める運動です。これによって、同朋教団の真の姿を実現し、人類の苦悩を解決することをめざしています」と言われているように、いわば、真宗の本来化の運動であったといえます。従来の僧侶が伝道し、門信徒が聴聞(聞法)するという固定化された関係を越え、門信徒も僧侶もともに法に問い、聞き、語る、「全員聞法・全員伝道」が提唱され、同朋教団の再生をめざしてきたのです。
  さらには、運動の中心的役割を担いうる人材として「門徒推進員」養成のための、話し合い法座を中心とした「門徒推進員養成のための地方連続研修会(連研)」が開始され、連研修了者による中央教修がはじまったのです。そして、1981(昭和56)年に門徒推進員要綱が策定され、門徒推進員の「登録制」が実施されました。現在では、すでに昨年度末、4500名を越え、全国各地で基幹運動推進のためのさまざまな活動が展開されています。今年は、その門徒推進員の登録制がはじまってからちょうど20年目の年に当たります。基幹運動本部では、来年度、この門信徒会運動40周年と門徒推進員登録制度発足20周年を合わせ、「記念法要」と、「全国門徒推進員の集い」を実施します。今年度には、その法要と集いのための実行委員会が本部内に設置されます。
   来年の門信徒会運動40周年、今年の門徒推進員登録制発足20周年という節目の年をひかえ、今年度は、基幹運動に引き継がれてきたこれまでの門信徒会運動の今日的点検総括を行い、今後のあり方をさらに考えていくことが大切です。
 今年度から新たにスタートした新基幹運動計画では、中心的課題としての「門信徒と僧侶が共に歩む基幹運動」という視点から、これまでの運動のさまざまな成果の中から、特に、連研や門徒推進員の活動が確認されています。その意味においても、各教区・各組において、この連研と門徒推進員の活動についての総括を行いたいと思います。
 まずは、連研未実施、休止組においては、連研開催に向けた取り組みはもちろんのこと、連研実施組においても、話し合い法座中心の連研となっているか、また、話し合い法座の内容の点検や連研履修者が中央教修を経て門徒推進員として位置づいているか等の、門徒推進員養成課程での点検が必要です。
 また、1997年に出された「門徒推進員の今後のあり方を考える委員会答申」に示された門徒推進員連絡協議会が各組に設置されているか、門徒推進員が各組の基幹運動推進委員会に位置付けられているか、門徒推進員が教区・組・各寺院において十分活動する環境となっているか等の点検も大切です。
 各教区・各組においては、今年度、特に、上に掲げた連研、門徒推進員に関する各項目においての総点検をしていきましょう。
 「全員聞法・全員伝道」の話し合い法座は、連研の場だけで行われればよいというものではありません。すでに、基幹運動推進僧侶研修会においても、話し合い法座が取り入れられていますし、各教化団体の研修においても取り組みがなされていますが、連研の場だけではなく、教団のあらゆる聞法・伝道の場に、今まで以上に話し合い法座を取り入れる必要があります。どのような形で話し合い法座を聞法の場や研修の場に取り入れていけばよいのかを検討していかなければなりません。
 さらには、今年度は特に、新基幹運動計画の初年度にあたり、門徒推進員はもとより、各教化団体や門徒総代研修会等においても、新計画の浸透を図るための研修を行うなど、門信徒と僧侶が共に歩む基幹運動を実践し、親鸞聖人のみ教えに学び、力を合わせて同朋教団の再生をめざしていきましょう。
(2)現実を直視し信心の社会性を問いつづけ、同朋運動を推進しよう
―差別・被差別の事実から、私と教団の体質を改める実践を ―
  2000年11月に開催された、同朋運動50周年記念大会の「つどい」において、ご門主は次のようにお言葉を述べられました。
同朋運動は、ともすれば抽象的・観念的になりがちな仏法の受け取り方に対して、私たちに、社会的存在としての私の在り方そのことに即して仏法を受け止める道を開き育てています。運動を通じて明らかになった宗門の体質を始め、様ざまの課題を、今後私たちは、宗門として、また身近なところで解決していきたいと思います。
  同朋運動は、差別の現実にたって、その現実から出発することが大切です。そこから「信心さえいただけば差別はなくなる」といった観念的な教学理解を超えていくことができます。その差別の現実から、私たちに提起された課題が「信心の社会性」でした。
 その課題を、全僧侶を対象とする僧侶研修会(以下僧研)の場で、これまでの二期九年間にわたり学んできましたが、これからはそのことを単に「研修課題」と終らせるのではなく、教団の差別体質や差別構造、慣習、制度、教学理解など、具体的な課題の克服をめざす「実践課題」としていかなければなりません。
 その必要性を明らかにしたものが「差別法名・過去帳調査」でした。調査によって明らかになった部落差別法名をはじめとするさまざまな差別記載を前に、過去帳の「書き換え」が具体的な実践課題となってきたのです。過去帳の書き換えのためには、まず差別記載をしてきた事実を門信徒に謝罪する必要があります。その謝罪と書き換えの実践を通して失われた門信徒との信頼を回復し、運動の課題を共有することがはじめて可能となってきます。書き換えへの取り組みが、教区基推委の実践課題として一層推進されなくてはなりません。
 私たちの教団は、新たな部落差別事件、そして民族差別事件など、さまざまな差別問題を抱えています。今後さらに「信心の社会性」の課題を、僧侶と教団が自らに問いつづけることこそ、門信徒と課題を共有する原動力となります。そして、僧侶・門信徒が共に差別・被差別の事実をふまえ、その解放への歩みを共にするところに同朋教団の再生や、御同朋の社会をめざしていく運動の推進力が生まれてきます。それこそ御同朋の願いに応えていく「御同朋の教学」と言え得るものでしょう。
 そのためにも、本年度より5ヶ年の研修カリキュラムを作成して、第V期基幹運動推進僧侶研修会を全組の開催を目指しています。第V期僧研は、従来の「真俗二諦」「業・宿業」「信心の社会性」「部落差別の基礎的学習」の四課題をふまえながら、新たに「法名の本来化」を軸として、「門信徒との運動の共有にむけて」を課題としています。第V期僧研のために作成された『僧研ノート』を中心に、積極的に研修を深めることが求められています。
 そして、基幹運動計画の【運動の課題】にありますように、門信徒参画・男女共同参画の具体化も、私たちの重要な実践課題となっています。教区・組の基幹運動推進委員会のみならず、教区や組そして寺院の教化団体など、あらゆる場で、公表されました男女共同参画を考える委員会からの『提言書』を参考に、具体的に共同参画を推進していきましょう。
 また、「差別事件  糾明の方途」が改定されて、「差別事件  糾明の方途」(改定版)がだされました。差別事件への取り組みは、私と教団の差別体質克服への具体的な実践活動にほかなりません。僧研にあわせて改定のねらいと願いを学ぶことも大切です。
 同朋運動50年の歩みにより、その運動が「基幹運動」として教団の中心的課題となる
ことを果たした成果に学び、その運動の「教団化」から、基幹運動が一人ひとりの実践課題となるべく、いわば運動の「教団人化」をめざし、51年目の運動を力強く進めましょう。
(3)人びとの悩みに応える活動を展開し、開かれたお寺にしよう
−すべての人びとが参加し、家庭、地域、職場にみ教えの心を−
 教団は本来、信仰を共にする人びとのあつまりだったものですが、江戸時代の宗教政策によって寺檀制度が成立して以来、人びとが特定の教団に所属することを第1義とするあり方に変質してきました。しかし、この寺檀制度は、今日、直接的には家族のかたちが変わっていくことによって、間接的には、さまざまな制度や組織に対する人々の帰属意識が変わっていくことによって、制度としての意味を失いつつあります。従って私たちの教団は、今後寺檀制度の形骸化が進んでも、なお、お念仏のみ教えが途切れることなく受け伝えられていくような人びとの結びつきをつくっていかなければなりません。
 第3の重点項目である「人びとの悩みに応える活動」とは、本来の宗教が果たすべき課題であったはずです。釈尊の時代も、そして宗祖親鸞聖人の時代も、自らを含めた人々の悩みの本質を突き止め、その解決を提示することが宗教者の本義でした。そのような本来の教団のあり方に立ち返り、まず、人びとの悩みを受け止めようとする寺院の姿勢を明らかにしなければなりません。門信徒会運動の中から提起された「話し合い法座」も、同朋運動の過程で具体的な糸口をつかむに至った「門信徒と僧侶による課題の共有化」も、「人びとの悩みに応える活動」として、寺院の活動の中に改めて位置づけられなければならないのです。
 本年度より取り組まれる基幹運動計画や昨年度に出された男女共同参画を考える委員会の提言書では、各組、各寺院で「門信徒の参画」と「男女共同参画」の取り組みをすすめることが提起されています。それは、こうした取り組みによって、寺壇制度に依存する教団のあり方を改め、本来化へ向かう方向を確立するためでもあります。
 門徒推進員や、さまざまな教化団体の取り組みとして、従来は寺院が主体となって行なっていた文書伝道や法座にその企画や運営に責任を持って参画し、門信徒と僧侶の共同による聞法の場作りをすすめることが今後の課題となります。こうした取り組みの継続は、家庭のお仏壇を中心とした家庭法座の基盤となるものです。生活の現場で仏法をいただくことが、実は「開かれたお寺」になることなのです。そして、こうした場面でこそ現代語訳された聖典の活用が求められます。聖典によって知識を身に付けるのではなく、自らの生き方が深められ、み教えをよりどころとする生活へと転換していく手ごたえをともにする場が法座でありましょう。
 門信徒も僧侶も同じ時代や地域に生きる仲間の一人として悩みを共にすることが、伝道の基本なのです。家庭、地域、職場にみ教えが伝わるのは、伝えようとすることによってではなく、悩みを共にする姿勢によってみ教えは伝わるのです。完成された体系として語られる教えではなくても、共に負う悩みと、共にあることのよろこびをみ教えの味わいとして語ることが出来れば、それは法座なのです。開かれた言葉によって、開かれたお寺がつくりあげられていくのです。
(4)過去の過ちに学び、平和を求める念仏者になろう
―非戦・ヤスクニの課題を担い、平和への確かな歩みを―
  阿弥陀如来のご本願には、すべての生きとし生けるものが、必ず救われていくことが誓われています。それは、国を超え民族を超え、あらゆる人びとが、一人として漏れることなく救われることを表わし、いのちの尊厳性と平等観に目覚めた、新たな人間関係を生み出すものといえます。これが、親鸞聖人の「御同朋・御同行」の精神であり、世界宗教としての「浄土真宗」です。
 しかし、そうしたみ教えをよそに、現実の世界は、国と国とが争い、民族と民族がぶつかり合って、一触即発の危機は、世界中に満ち溢れています。また、国内においても「ガイドライン関連法」の制定、「集団的自衛権」発動への傾向など、国政における戦争準備とも思える現状を踏まえ、より積極的な非戦・平和への発言の取り組みが必要です。沖縄開教地における在日米軍の問題は、地域問題ではなく、日本全体の問題であり、アジア、ひいては、世界平和の重要な問題です。さらに、アフガニスタンでは、イスラム教徒による仏教遺跡の破壊が実行されました。そこでは原理主義に基づく人権抑圧もまた生じています。
 こうした現状を前に、今日ほど私たちは念仏者として、国家、民族、そして宗教の違いを超え、世界に向かって平和を訴えなければならない時はないのではないでしょうか。
宗門では、1981(昭和56)年より、毎年9月18日に東京千鳥ケ淵墓苑にて全戦没者追悼法要を勤修してまいりました。この法要は、当時の敵味方の区別をこえ、15年の長きにわたる戦争が原因で亡くなられた、すべての人びとに、心から追悼の意を表わすと共に、過去の戦争の事実に学び、教団の戦争責任を明らかにし、戦争を繰り返すことのない、平和の実現に向けた行動の出発点とするためのものです。そして、これは、私たちの世界に向けての非戦平和のメッセージでもあるのです。
 この取り組みのなかで、1995(平成7)年、ご門主ご親修のもと「終戦50周年全戦没者総追悼法要」が、本願寺御影堂で厳粛に営まれましたことは記憶に新しいところです。
 さらに、これらの取り組みは、靖国神社の国家護持などに対して反対であることの表明でもあります。日々の取り組みがあるからこそ、以上のメッセージが伝わっていくといえるでしょう。各寺院・各組においても同法要の趣旨を体した取り組みを推進すると共に、千鳥ヶ淵における法要に参拝したいものです。
 さて、ヤスクニ問題とは、「靖国神社」の国家護持など、現憲法下の「信教の自由・政教分離」に関わる問題と、「氏神」などの身近な神社が抱える地域的な問題、さらに「弥陀一仏」・「神祇不拝」の浄土真宗のみ教えに立ち返る教団の課題として問われているものです。教団では、これらの個々の問題を明らかにしながら、課題を包括するために「靖国」ではなく「ヤスクニ」と表わしています。
 これらの問題は、僧侶だけの取り組みでは、決して解決するものではなく、門信徒と共に課題を共有することから始めなければなりません。ブックレット基幹運動No.10平和シリーズ2『写真に見る戦争と私たちの教団』、『共にあゆむ』(47号)の「神祇不拝」などを活用し、連研などの研修の場で、門信徒との課題の共有をはかりたいものです。
 また、「ヤスクニ」は英霊思想に基づき、その根底にあるケガレ意識の問題は、浄土真宗の信仰にとって、元々相容れないものであり、また、この問題を中心とした習俗の課題は、差別を温存助長してきた教団の差別体質をも問うものでした。特に死をケガレと観る考え方が、浄土真宗の葬儀のあり方などに多大の影響を与えている事実を踏まえ、そのあり方を具体的に問う時期にきています。教区・組によっては、「清め塩」の廃止などの具体的取り組みもなされてきていますが、ブックレット基幹運動NO.11『真宗の葬儀』などを活用し、浄土真宗の儀礼と習俗・習慣の関係を明らかし、念仏者としての立場を鮮明にしていくことが大切です。そのためには、まず、各地域の習俗・習慣の現状とその背景を把握し、浄土真宗のみ教えの上からその一つひとつを解明することが重要です。
 上記の課題への、新たな研修や取り組みのため、基幹運動本部では、今年度『真宗の儀礼』(仮称)のブックレットを作成します。これらの課題は各寺院で地道に取り組むと共に、その取り組みが念仏者としての生き方を直接問われるものであることを学ぶ必要があります。
(5)すべてのいのちや人格を尊重し、いのちの尊厳と平等観に樹って生き抜こう
―人権・環境など、いのちを損なう社会の問題への取り組みをー
 いま・ここに正定聚の身とならせていただいたよろこびにたつとき、阿弥陀仏に願われた尊いいのちを損なうあらゆる問題が、私たち自らの課題となっていきます。また、親鸞聖人の生き方に学ぶとき、いのちの願いに背き、いのちのよろこびを損なうさまざまな社会の問題、中でも人権・差別の問題への取り組みは、現代に生きる念仏者としての社会的・法義的な責務といわなければなりません。
 教団における人権・差別の具体的課題への取り組みは、み教えにおける平等の原理を現実に敷衍していくところから始まったのではなく、その平等のみ教えをいただきながらも部落差別の現実を前にして、いっこうにその問題に取り組みを始めようとしない教団の事実から始まったことは、同朋運動50年の歴史が示すとおりです。その歴史を受け継ぐ基幹運動において今日、その課題は部落差別にとどまることなく、あらゆる人権抑圧や人権を侵す諸事象への取り組みと広がりを見せつつあります。平等のみ教えにもとづき差別をすることのなかった教団として人権・差別が課題となるのではなく、まさに過去帳に記されたとおり、差別をしてきた教団として、人権・差別の問題への取り組みが、今日の基幹運動における不可欠の課題となってきています。
 また教団における人権の課題は、「人間の権利」という視点のみにとどまるのではなく、本願成就文に示されるとおり「諸有衆生(ありとあらゆる生きとし生けるもの)」 というすべてのいのちに尊厳と平等を認めていく視点を根底とするものです。その視点から、「環境」問題や生命倫理、脳死・臓器移植の問題も、これからの大きな課題となってきています。「念仏の声を世界に子や孫に」との願いに立つとき、そこに願われる全世界・全世代すべての人々の尊厳と平等を課題として担う姿勢が、これからの教団のあゆみに求められています。
 基幹運動は、同朋運動の伝統を受け継ぎ、諸課題を「事象」という日常的な場面における事実として注目する視点を大切にしながら、その取り組みを進めています。その意味から、教団における儀礼や教団内外における習俗の問題も、基幹運動の今日的な課題となっています。教団の全分野で、それぞれが関わる具体的な課題を、基幹運動の視点から一つひとつていねいに問い直していく取り組みの中からこそ、本来の同朋教団の姿が形づくられていくに違いありません。そうした取り組みの一環としてブックレット『真宗の儀礼(仮称)』を発刊します。
 さらに、ブックレット『基幹運動推進基本用語集(仮称)』を発刊します。この用語集には、現段階の基幹運動を門信徒と僧侶がともに理解し、さらに推進していくために必要と思われる用語を収めています。関連するものも含めて約1000語にわたり、これからの運動の必携用語集となっていくものです。さまざまな学習や運動推進の場に常にともにしながら、基幹運動推進の共通理解の基礎テキストとしての活用が期待されます。


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