赤尾道宗二十一箇条覚書


文亀元十二月二十四日思立候条

  1. こしやうの一大事、いのちのあらんかぎり、ゆたんあるましき事。
  2. 仏法よりほかに心にふかく入る事候は、あさましく存候て、すなわちひるかへすへき事。
  3. ひきたてる心なく、おふやう(大様)になり候は、しんしゆ(心中)をひきやふりまひるへき事。
  4. 仏法においてうしろくらきりやう(利養)心あらば、あさましく存候て、て(手)をひくおもひをなし、たちまちひるかへすへき事。
  5. 心にひいきをもち候て、人のためにわるき事つかまつるましき事。
  6. みやう(冥)のせうらん(照覧)と存候て、人しり候はすとも、あしきことおはひるかへす候へき事。
  7. 仏法のかたをは、いかにもふかく、おもく、しんかふ(信仰)申、わかみをは、とこまでもへりくたり候て、たしなみ(嗜み)可申事。
  8. 仏法をもつて人にもちゐられ候はんと思候事は、かへすかへすあさましき事にて候、其心出来候は、仏法信は、たヽ此度後 世之一大事をたすかるへきため計にて候と思候て、ひるかへし候へき事。
  9. りひをたヽさす、あしき事の出来候はん座敷をは、のかれ候へき事。
  10. これほとのあさましきしんしちゅう(心中)をもちたるよと、おほしめし候はん事こそ、かへすかへすも、あさましく、かなしく、つ らく存候。今まての事をは、ひとすちに御めん(免)をあをくといへとも、かやうなるしんちうなるものよとおほしめし候はん こと、かへすかへすも身のほとのつたなさ、かなしさ、あさましくそんち候。せんしやう(先生)もかヽるつたなきしんちうにてこ そ、いまかやうに候らめと、申おきりるくあさましく存候。もしもしついに御めにかヽり候ても、こヽをあさましく存候。 あらあらみやうかなや。こんにちまてうしろくらきをは、ひたさら御めんをあおき候。おうせにまかせ、まいり候へく候。
  11. もし、こんみやうにちなからひにて、のちほうきふさた(無沙汰)になり候は、あさましやとひきやふり、たしなみ候へき事。
  12. しんちうにおとろき、しみしみとなく候は、あらあさましや、もつたいなや、こんしやうはうへし(飢死)に、ここヘしぬとも、此 たひこしやう(後生)の一大事をとけまいらせ候はんことこそ、むしかうこう(無始曠劫)よりののそみ、此たひまんそくなれと存候て、 おもひきりわか身をせめて、たちまちおとろき候へき也。それにもおとろかき候はすは、これもさて此身はさて御はちを かふふりたるおと存候て、しんちうをひきやふり御とうきやう(同行)にあひまいらせ候て、さんたん申候へく候。せめ ておとろき申へき事。
  13. あやまつてもすいみ(睡)をはたらき、ねふりふせて候て、此一大事をおもひまいらせす、いたつらにくらし候ましき事。
  14. ともかなきなとと、わか身にり(理)をつけ候こと、あるましく候。うちの人々にあい候て、心におもひ候はすとも、かいふんた しなみ候て、まつ此一大事はいかか候はんと申いたし候て、しんちうをおとろきたしなみ候はん事。
  15. 御たうちやう(道掲)のことを、ほんと心にかいふん(涯分)入候はん事。
  16. われをにくみ候はん人をにくみたおし候はんやうに、しんちうをもち候ましき事
  17. たたねかわくは、此一大事に心をふかく入、ゆたんなく候ヘかしと存候。御とうきやうの御なおしをは、やかてしたかい 可申事。
  18. はんし(万事)、心にしうちやく(執着)せすして、たたねかわしくは、わかこころ、此一大事とはかりにふかく心を入候へかしと存計也。
  19. かやうに申候は、あまりわか心ちうおもひしれもなく、あさましく候ほとに、かやうに心をかたらいさため候ても、その しるしもかへしと、おもひ候て、かやうにいま申し、いくへにもいくへにも人の御なをしには、したかい可申事。
  20. ねかわくは、御しひ(慈悲)をへつしてかけられ、ひかめるかたへやらすして、おしなをして給わり候へかしと、おもひまいらせ 候事、たの事なく候。
  21. あざましのわかこころや、こしやうの一大事をとけへき事ならは、いちめいをももののかすともおもわず、おうせならは、 いつくのはてへなりとも、そむき申ましきしんちうなり。又たうてんちく(唐天竺)へなりとも、もとめたつねまいらせ候はんとお もふ心にてあるものを、これなとはおもひきりたるにか心たてあるに、おうせにしたかい、うしろくらくなくほうき(法鏡)をた しなみ候はん事は、さてやすきことにてはなきかとよ。かヘすかへすわかこころこんしやうは、一たんなり。いまひさしく もあるへからす、かつひてもし(死)に、又はここヘもしね、かへりみすこしやうの一大事ゆたんしてくれ候な。わかこころへ かへすかへすいま申ところちかわす、身をせめてたしなみをきり候へく候。かへすかへす御おきて、はつと(法度)をそむかすして、 しかもないしんには、一ねんのたのもしさ、ありかたさをたもち候て、けさう(外相)にふかくつヽしめ申てくれ候ヘ。わか心ヘ。