ストレスは交感神経を緊張させる!
 私たちは“ストレス社会”という言葉で象徴されるように数多くのストレスに囲まれて生きています。毎日の家庭や学校、職場でのちょっとしたストレスから、病気や近親者との離別(死別を含めて)など、大きなストレスを経験することも珍しくありません。適度なストレスは生活や仕事の上でプラスになる場合もあり必要なものですが、持続する過度のストレスは私達の身体をコントロールしている自律神経(交感神経)を過緊張にさせます。
人体は交感神経と副交感神経により常時コントロールされて環境の変化などに対応できるようになっていますが、交感神経は外敵の攻撃に対して逃げたり、反撃を加えるために副腎のアドレナリン分泌を亢進し、心拍を速め動脈を収縮させて血圧を上げるなどの働きをしています。これと対称的に副交感神経は血圧を低下させ末梢の循環を改善するなど休息の状況を作ります。つまりストレス解消法がへたな人は交感神経の緊張状態を恒常化し結果的に心身をも疲労させてしまうのです。

ストレスをどうコントロールする?
 私達が自分でどう気をつけてもすべてのストレスを無くすことは現実には不可能ですし、ストレスが全くなかったら?、それはそれで刺激や緊張感のないつまらない人生かも知れません。ストレスを上手に乗り切って、楽しめるようになれるよい方法はないものでしょうか?。ストレス解消として、音楽を鑑賞したりスポーツや旅行を楽しめる場合はよいのですが、ギャンブルにのめり込み借金地獄に陥ったり、タバコや深酒に逃避して健康を害したのではもともこもありません。お金や時間がかからずに、どこでも手軽にできるストレス解消法を身につけたいと思いませんか?。
それが“呼吸法”なのです。
呼吸法の不思議な効果
 私たちは、何をするのにも自分の行動は自分で意識していると思っています。しかし実際には自律神経の働きで心拍動や呼吸、消化など基本的な生命維持機能は自動的に行われているのです。もし意識していないと呼吸や心臓が止まるのなら?、危なくておちおち寝てもいられません。同様に怒りや緊張などの精神状態の変化や運動をした時にも、心拍や呼吸数は必要なだけ自律的に変化しています。このように通常は自律神経(交感神経や副交感神経)によって制御されている心拍や呼吸ですが、心臓と違って呼吸は意識してコントロールすることができますね。ゆっくりと呼吸をすると交感神経の緊張状態がとけて副交感神経が優位になるのです。つまりゆっくりと息をするだけで自律神経を介して心身をリラックスした状態に変化させることができるのです。
簡単な呼吸法をやってみよう!
 思えば2000年以上も前から人類は呼吸法をヨーガや気功などにとりいれて綿々と受け継いできました。ヨーガの達人は自律神経をコントロールして心拍数まで加減できるようです。経験的にその効果はわかってはいたとしても、その素晴らしい叡智に脱帽です。ここでは私が日頃患者さんと一緒に行っているヨーガの呼吸法の一つを紹介します。
【4-7-8の呼吸法】

1 できれば落ち着いた場所で楽な姿勢をとります。横になっても 座っても立っていても構いません。身体の緊張をほぐします。

2 目を閉じるか半開きの状態で、ゆっくりと四つ数えながら鼻から息を吸っていきます。

3 吸い終わったら呼吸を止め、七つ数えながら身体中を息がめぐるのを感じます。

4 その後、ゆっくりと八つ数えながら口から息を完全に吐きます。(吐く時は、舌の先を上の歯の裏側に触れるようにします。)

5 吐き終わったら自然に楽に呼吸をします。呼吸が落ち着いたら、また同じく繰り返します。

 これが4-7-8の呼吸法です。とても簡単でしょう!。最初は七つ息を止めるのが苦しいかもしれません。自分が楽にできるテンポでやってみてください。これを一度に2-3回繰り返します。これだけシンプルな呼吸法ですが、慣れてくると手足がポカポカとなって心身がリラックスするのを感じられるでしょう。
長い息が長生きにつながる?
 これ以外にも多くの呼吸法が存在します。、呼吸法はどれでも自分にあったものを選択すればよいのです。しかし息を吐く(呼気)時に副交感神経興奮作用が特に強いことは覚えていて下さい。自分の吸った息を最後まで大切に吐ききるように心をこめて呼吸をしてみましょう。毎日たった数分間です。気持ちを落ち着けてゆっくりと長い息をすることがあなたをリラックスさせて長生きにつながるのです。私も患者さんと一緒に8年間、この呼吸法をやっており、今では緊張しそうな時には無意識にこの呼吸法をしています。不思議なことにこの呼吸を1回するだけでリラックスできて、がんこだった肩こりもなくなってストレスを上手に乗り切れるようになりました。
“呼吸法”で現代社会を楽しく乗り切ろう!
 皆さんも初めはこんなもの?と感じるかも知れませんが、呼吸法は場所も選ばず道具もなしにいつでもできる健康法です。ぜひ一度試してみて下さい。まず始める、そして止めない;「継続は力なり」です。

  参考図書
1.アンドルーワイル;ワイル博士のナチュラル・メディスン。聞くクスリ、春秋社、1988
2.気と呼吸法。鎌田茂雄、帯津良一。春秋社、1999
3.意識呼吸のすすめ;現代医療の軌道修正をめざして。朝日ソノラマ、1997