2 ストレスとは何か?

現代はストレス社会といわれますが、それでは“ストレス”という言葉は何を意味しているのでしょう。
ストレス(stress);種々の外部刺激が負担として働くとき、心身に生ずる機能変化。ストレスの原因となる要素(ストレッサー)は寒暑・騒音・化学物質など物理化学的なもの、飢餓・感染・過労・睡眠不足など生物学的なもの、精神緊張・不安・恐怖・興奮など社会的なものなど多様である。・・・となっています。(広辞苑による)それではストレスは人間にとって有害な作用だけもたらすものなのでしょうか?次の図はストレスと人間の能力との関係を図示したものです。

この図を見ると、適度なストレスAは健康な緊張をもたらし、人の能力を上昇させます。しかしある程度以上の強いストレスBになると能力の伸びは頭打ちとなり、やがてCの消耗をたどって、ついにDの崩壊の状況(病気・・死)に向かうのです。たとえば学生にとって、試験はストレスそのものです。けれども定期試験がなければ勉強に今一つ身が入りにくいのが現実ではないでしょうか?また定期試験のストレスはそれほどではないとしても、大学入試や就職試験など人生や運命の別れ道と思われるような試験のストレスは相当なものです。これは社会人になっても同様で、職場における毎日の小さなストレスには耐えられても、仕事上で大きなミスを犯したり、新聞に取り上げられるような事件に巻き込まれた時のストレスは相当なものです。これが胃潰瘍、心筋梗塞などの症状を引き起こし、時に本人を自殺にまで追い込むことがあるのです。言い換えれば、健康な緊張をもたらす程度のストレスAは私たちにとって必要不可欠なものといえますが、短期間でも余りにも強いストレスDや中等度でも慢性的なストレスB,Cは心身共に有害に作用するということになるのです。
 
■ ストレスに強くなろう

さて、あなたは日常、ストレスグラフのどの部分で生活をおくっていましたか?。可能ならいつも健康な緊張の範囲で生活をおくりたいものです。そのためにはストレスを少なくすればよいことになります。しかし現代は生きていくのにあまりにも多くの刺激や摩擦があります。むしろほとんどの人々は疲労や消耗の状態(B,C)で日常生活をおくっているのが現実ではないでしょうか?。ではどうしたらストレスを健康な緊張感としてとらえ、生活できるのようになるでしょう?そのためには前図のようにあなたのストレスグラフを成長させるのです。こうすれば現在のあなたのBやCの範囲のストレスも健康な緊張をもたらすA の範囲に入れることが可能なのです。その具体的な方法を第5章の健康な、病気に勝つ心の作り方!のところで考えてみましょう。
  

3 精神神経免疫学 (Psycho neuro immunology)


最近ではストレスや心理状態が身体に与える刺激が精神(心)から神経系や免疫系 にも影響し、それが複雑に関与して健康維持や発病、病気の回復に関係している事実が研究され、精神神経免疫学という学問が確立されてきました。言い換えれば心と脳や神経経路、さらに内分泌系や免疫が密接に連関し、私達の身体を外敵から守って、良好な状態に維持しようとするシステムがあることがわかってきたのです。昔から“病は気から” といわれ“ガンの原因”の項でも触れましたが、精神神経免疫学は心(心理状態)が種々の疾患の発病や、治癒過程に密接に関連していることを科学的に解明しつつあります。つまり先に述べたようにウイルスや細菌などの外的な要因が加わった時やガンが発病してしまった場合でも、心の状態が、実際に発病や回復に大きく影響している可能性があるということです。 そういえば、昔から“風邪をひくのは精神がたるんでいるからだ”とか、“驚異的な精神力で病気に打ち勝った”などといわれますが、まさにこのような事実を表していたのでしょう。逆にストレスが多い場合には暴飲暴食やタバコ の吸いすぎなど不摂生な生活をしやすく、長い間に肥満や高血圧を引き起こし最後には心臓病・肝臓病やガンになりやすいのです。そのような意味では世界でも有名な過労死は生活習慣病の代表といえるのではないでしょうか?

性格のタイプ
特徴
発症傾向?
1、C
感情を抑える・表さない
(無力感・絶望感・抑うつ傾向)
ガン・悪性腫瘍
2、A
感情を表す・コントロールできない
心臓病・脳血管障害
3、D
1と2の特徴を交互にもつ
いずれの傾向も少ない
(互いに相殺される)
4、B
1と2の特徴をもたない
(自立的・いずれにもかたよらない)
いずれの発症傾向もない
  1 2:心理社会タイプ(psychosocial type)、ガン中心の類型 
  AB:タイプA・B行動と呼ばれる、心臓病中心の分類
人間の心理と教育 重久 剛:八千代出版より

 
4 性格と病気

今までは病気の原因、ストレスと病気の関係などを勉強してきましたが、人間の性格と病気の関係も古来より気づかれていました。今から二千年も昔の古文書にも『うつ的』な人がガンにかかりやすいといった記述が残されています。そういえば現在の映画やドラマでも、怒りや興奮の後に主人公が心臓や脳の発作で倒れたり、長い間思い悩んだ末にガンで亡くなるなどの場面設定がよく見られますね。この方面でも近年、心理学や医学の専門家によって綿密な調査や追跡研究が行われ、性格と病気の関係がより明らかにされてきています。さてあなたの性格は以下のどれにあたるでしょうか?

■ 性格のタイプと症病誘発傾向 

Eysenck(アイゼンク)の分類

最近ではサイコオンコロジー(精神腫瘍学)の発展により、精神状態とガンの発症や経過に関係がありそうなことも報告されています。さらに精神的な面を配慮した治療(心理療法)により身体の免疫力が活性化され、ホルモンのバランスなどが回復し治療効果が期待できることなどもわかってきました。この方面の代表的な研究者である英国の心理学者、Eysenck(アイゼンク)は人間の性格(パーソナリティ)を下図の4つに分類して研究しました。

 Eysenck(アイゼンク)の性格(パーソナリティ)分類 

タイプ1
大切な上司や、最愛の妻、恋人、子供との関係や、仕事上の成功、名誉などを自分の幸福にとってかけがいのないものと見なし、それに依存している。そのため、大切な人との関係悪化や、仕事の失敗、名誉の喪失などが精神的に大きなダメージとなり、ストレス状況をコントロールできず、絶望感や無力感を深めていく。
タイプ2
タイプ1と同様に大切な人や仕事上の成功などに幸福感を依存し、それを失ったときに、大きな精神的ダメージを受ける。しかし、タイプ1とは異なり、その時に受けた不幸感や苦悩を、その対象が原因ととらえ、それに対して怒りを示し、攻撃的になる。
タイプ3
タイプ1とタイプ2のパターンの両面をもち、ときによって反応が異なる。自分にとって大切な対象を、幸福の基本と感じたり、不幸の原因と感じたり、それによって絶望感や怒りなどが交互におこってくる。
タイプ4
人格自立型と呼ばれ、自分の自立性や自分にとって大切な人の自立性を重視することで、自分と他人との関係を現実的に築き上げていくことができる。そのため、他人の感情や行動が自分のストレスの原因となることは少ない。

アイゼンクはこのようなタイプ別に約二千人を対象に調査を行い、タイプ1が他のタイプより明らかにガンによる死亡率が高く、タイプ4が最も少ないこと、タイプ1でもストレスの高い群のほうが少ない群より、ガンによる死亡率が高く、生存率も低いと報告しました。

タイプ1の人に対する心理療法の効果
(対象者は各50人;1972-86年)

さらにたとえタイプ1であっても上図のように心理療法をあらかじめ受けておくことにより死亡率が低下することも明らかにしました。これは患者本人が精神的な面で好ましい変化を遂げたり、暖かい精神的援助が病気を予防したり治療効果を表すと言う心強い報告です。

■ 病気をよせつけない心

よく過労やストレス、タバコの吸い過ぎなどで胃が痛くなって病院を訪れる人がいます。この場合、内視鏡検査で胃潰瘍が確認されると、抗潰瘍薬が投与されて胃潰瘍の治療が行われます。しかし本人が原因(誘因?)となったストレスを解消し、身体によくない生活習慣を変える努力をしなければ潰瘍が治りにくいばかりでなく、たとえ薬物治療で一時的に良くなったように見えても、容易に再発しやすいのです。同様に自分の家族の病気やもめごとなどのために強い不安感や心配事があって不眠を訴えて受診される患者さんも多く見られます。このような方には取りあえず眠れるようにと睡眠薬が処方されること多いのです。しかし患者さんの不安や心配の原因が除去されず、いつまでも本人が悩みに囚われている間は、睡眠薬を中止すればまた眠れないという悪循環が続き、結局薬なしでは生活できない状況に陥ってしまうのです。そうです。胃潰瘍や不眠症の例からわかるように、本来病気は自分の努力や工夫によって予防したり治したりすることが基本で、医師が行っている検査や治療の効果は、あくまでもその上に成り立っているということを覚えていてください。そのためには常日頃から健康な生活習慣を心掛け、さらに健康な精神状態を保つように努力することが重要なのです。もし今あなたにストレス(不快な感情)があって、これらがあなたの病気を引き起こしたり、治るのを妨げていそうなら、その原因を自分でよく考えて解決するように努力しましょう。結果的にあなたが自分自身をコントロールできるようになれば、あなたの身体の中には種々の病気やがん細胞に対する抵抗力が増加し、病気を予防したり、治す力が増大するのです。

 
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