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「たくさんの生徒の目玉が飛び出ていた。彼女たちの口は爆風で引き裂かれたままで、顔は焼け爛れ、髪は燃えてなくなり、着ているものは体から焼け落ち、爆風で服のあちこちは吹き飛ばされていた。女生徒の制服は完全に焼け落ちて、彼女たちは素っ裸だった。その光景はまさに地獄だった」(広島第一高女の宮川校長談)
1945年8月6日、広島市の上空で歴史上初めての原子爆弾が使用された。その3日後の8月9日、今度は長崎にも同様の原爆が落とされる。広島市の死傷者、約20万人。長崎市の死傷者、約12万人。ほとんどが非戦闘員であった。さらに、放射能の被害は被爆した当事者に限られず、遺伝によって受け継がれた子供や孫にも及び、今だに後遺症によって苦しむ人々も存在している。
アメリカ政府は公式見解で、原爆は戦争を早期に終結させ、多数の生命を救ったと発表し続けている。50年以上たった今でもこの見解を変えようとはしていない。しかし、事前警告なしの原爆投下にかわる他の選択肢が存在したことは明らかである。例えば、原爆の実際の威力を日本にデモンストレーションして見せ付ける、あるいは日本の損害を増大させる空襲、海上封鎖、ソ連参戦の結果を待つなど。しかし、いずれの選択肢も行うことはなかった。何故か?簡単だ。アメリカは戦争が終わる前にどうしても原爆を使いたかったからだ。当時の金で20億ドルもつぎ込んだ「マンハッタン計画」の成果を見るために、ソ連への牽制のために。
1995年、スミソニアン博物館で、終戦50年を記念した原爆展が米国内の一部で猛烈な反対にあり、中止に追い込まれた。原爆は正義と自由のために使ったのだ。そんな、声が平気で聞こえるお国であるから、この国で作られた映画には、核爆弾がお気楽に爆発するシーンを観ることができる。今回はそんな感じで、原爆がポンと爆発してしまったアメリカ映画を何本か紹介したい。
『宇宙戦争』(53年)
爆発地 ロサンゼルス郊外
爆発原因 敵宇宙船破壊のためにアメリカ空軍が使用
被害者 物語中ではゼロ。ただし、付近で観ていた者たちの放射能汚染は深刻と思われる
火星が地球に大接近する53年、無敵に強い円盤に乗った火星人が地球を侵略。防戦する軍隊のあらゆる攻撃が効かないことを悟った政府が、原爆の使用に踏み切る。驚いたことに「従来の原爆の10倍」という原爆に対し、双眼鏡で覗ける位置から平気で人々が爆発を見物しているのだ。爆発前には「ゴーグルのない人は背を向けること。熱と衝撃が強烈です」という非常に頼もしい警告放送が流れ、さらに爆発後に、その場にいた人々が爆風で髪の毛を逆立たせている演出が見られる。作品中では触れられていないが、恐らく致死量の放射能を浴びていると思われる。
『タイム・マシン』(59年)
爆発地 ロンドン
爆発原因 交戦国(不明)の発射した核ミサイル
被害者 不明だが、かなりの多数だと思われる上、主人公が明らかに被爆
1899年の大晦日にタイム・マシンを開発した科学者が、それに乗って未来を旅している間、戦争中のロンドンに出くわす。1966年8月18日と期日が明確に出ている。19世紀の科学者には、原子爆弾を理解できないのだろうが、「早く避難しなさい」という警告を無視している間に、爆発。顔を覆って爆風を凌いでいるが、爆発地点は、かなりの至近距離と思われるので主人公は相当深刻な被爆者と断定される。二次災害として放射能には触れていないが、何故か「地球が怒った」らしく、火山を誘発。溶岩でロンドンは全滅か?
『世界が燃えつきる日』(77年)
爆発地 アメリカ全土に数十発
爆発原因 交戦国(不明だが、恐らくソ連)の核ミサイルの発射
被害者 アメリカほぼ全滅
物語冒頭でいきなり相手も分からず、アメリカ全土に核ミサイルが降り注ぐ。どこかの実験映像を使いまわして、それを描写。冷戦真っ最中の製作年度から発射国はおそらくソ連と判断させてもらう。その後、アメリカが応戦したのかは分からないが、核の影響で地球の地軸がずれて(理由は不明)気候が大きく変化してしまう。物語は生き残りの米国空軍がヘンテコな装甲車に乗って大陸横断の旅するところがメイン。放射能によって巨大化したサソリや人食いゴキブリを避けながら旅するわけだが、実は核戦争後の世界を楽しんでいたりする。
『B−29 エノラ・ゲイ』(80年)
爆発地 広島
爆発原因 アメリカ空軍の爆撃
被害者 約20万人
原爆賛美戦争映画。原爆投下までの乗組員の訓練模様を明るく描く。ほとんど戦争の悲壮感はない。いかにアメリカが余裕の戦争をしていたか、というのが分かる。余裕で原爆を落とされては堪らないが。最後のテロップで「連合国官民には原爆が救いだった」とし、「原爆のもたらした平和をいかに維持するかが問題」と述べて、この作品の趣旨を如実に表わす。原爆投下のシーンもピカッと画面が光ってお終い。正確な被害状況など微塵も述べられていない。それにしても何故に日本国内で日本人が英語で喋っているのだろうか。
『ザ・デイ・アフター』(83年)
爆発地 ドイツと米ソ全土に数百発
爆発原因 第三次世界大戦勃発に合わせた大陸間弾道弾の発射
被害者 米ソ、その他の多数
アメリカABC放送製作のテレビ映画。東西冷戦の緊張悪化から、核戦争の勃発を描く。今は亡きソ連がドイツ侵攻の後に、まずフランクフルトで1発使用。死傷者不明。アメリカにはソ連から300発のICBMが撃ち込まれる(同時に応戦)。何発かは到着前に迎撃するが、半数以上が爆発か?正確な数は不明だが、物語の中心になるカンザスシティには「2個落ちた」らしい。爆発時に被爆者の姿がレントゲン写真のようになる演出はどうかと思うが、その後の世界は、放射能の影響をそれなりにキチンと描いてはいる。
『デフ−コン4』(85年)
爆発地 米ソ両国全土に無数
爆発原因 第三次世界大戦の勃発に合わせた大陸間弾道弾の発射
被害者 米ソの大多数
ほとんど理由も分からず、突然戦争が勃発。あっという間に核弾頭の発射。その間の描写は軍事衛生内のコンピューターグラフィックだけというのが逆に怖い。その搭乗員が、核戦争後に地球に不時着するわけだが、戦争後わずか数日しか経っていないのに、無政府状態の中で、人肉食いの集団が形成され、奴隷制度、見せしめ絞首刑が復活、一挙に中世の様相を呈する。早い。おまけに人間の心が揃いも揃って醜くなる。『北斗の拳』の悪役並みだ。あまりに人間の変化が早いぞ。放射能の影響は触れられているようで触れられていない。
『バタリアン』(85年)
爆発地 ケンタッキー州ハイビル
爆発原因 バタリアン壊滅のためにアメリカ陸軍が使用
被害者 約4000人
頭をぶち割っても死なないゾンビ軍団を一掃するために、ためらいもせず陸軍が誤爆に見せかけて核ミサイルを使用。本作中には「原爆」「核」という単語は避けられているが、「皮膚がただれた」などの表現から核ミサイルと判断。バタリアンの無敵ぶりから、核でも使用せにゃ殺せんかも、と思わせる部分はあるが、周辺に待避勧告も出さずに、一地区の人間(ゾンビだけど)を跡形も無く消すほどの威力の爆発で、死傷者が4000人程度で済むかは疑問。命令を下した大佐が作戦の成功を喜ぶ発言をするあたりさすがはアメリカ。器が違う。
『シャドー・メーカーズ』(89年)
爆発地 ニューメキシコの砂漠(トリニティ実験場)
爆発原因 アメリカ空軍の軍事実験
被害者 公式発表はゼロだが、放射能汚染のための死傷者ありという説もあり
広島と長崎に落とされた原爆を作った人々の立場から描いた作品。周囲の科学者に反原爆の動きが起こったり、一見中立的に原爆問題を取り上げたようにも見えるが、製造者のオッペンハイマーが戦争終結の功労者として持ち上げられているシーンがラストシーンだったり、最後のテロップが「原爆が落とされた後、日本は降伏した」という説明のみだったり、投下後の広島と長崎の被害が全く述べられていなかったり、と実は過去からの保守的な意見の焼き直しに過ぎない。ちなみに、原題はそれぞれの爆弾の名称『FAT
MAN AND LITTLE BOY』だった。
『ヒロシマ』(90年)
爆発地 広島
爆発原因 アメリカ空軍の爆撃
被害者 約20万人
この作品は驚きだ。本当にアメリカ人が作ったの、というぐらい日本よりの原爆映画。ひたすら原爆の被害の大きさと残酷さを鮮明に描き切る。出てくる日本人は民間人も軍人もみんないい人で、アメリカ人の役者は脇役に捕虜として出てくるのみ。アメリカ兵に向かって、日本兵が「もう人殺しはやめろ」というあたり完全にアメリカが戦犯状態だ。アメリカ退役軍人や中国人が聞いたら怒りそうな言葉である。建物から察するにロケ地はどうにもアメリカ国内だが、この作品が、どの程度の規模で上映されたのか気になるところ。
『トゥルー・ライズ』(94年)
爆発地 フロリダ近くの海
爆発原因 イスラム原理主義のテロリストが仕掛けた時限式核弾頭の作動
被害者 物語上ではいないが、海洋汚染は深刻
ほとんど問題にされなかったのが、不思議なぐらい原爆を軽々しく扱っている作品。「ショータイムだ。爆発をみるな。閃光をみるな」という軽い警告一つで、キノコ雲の舞い上がるのをバックに主役のシュワルツェネッガーとジェレミー・リー・カーチスが抱き合い、接吻。爆発が終わればショータイムは終わりとばかりに、話がポンと飛ぶが、周辺の海洋汚染は深刻と思われる。作品全体に何でもやっちゃえ、というノリが感じられるが、このシーンだけは悪ノリが過ぎた。アメリカ人にとって、原爆は映画を盛り上げるための一つの効果に過ぎないということらしい。
『インデペンデンス・デイ』(96年)
爆発地 壊滅状態のヒューストン上空とエイリアン母船内
爆発原因 敵宇宙船破壊のためにアメリカ空軍が使用
被害者 ヒューストンの残存者とエイリアン母船乗組員
今更解説の必要のない大ヒット映画だが、やっていることは『宇宙戦争』と同じ。原爆の使用に対し大統領が多少迷ってみせるあたり、見せ掛けの倫理観は進歩ありか。1発目の原爆はバリヤーのために効かず。地球のコンピューターウィルスが宇宙人のコンピューターに通用するとは思えないが、ともかくも敵のバリヤーを解除して、2発目の核ミサイルにて母船は破滅。バリヤーの取れた地球上空の円盤も総攻撃にあって全滅。しかし、地球に近い宇宙空間であれだけの核爆発が起きれば地球にも何らかの影響があるように思えるが、当然触れられてはいない。
『ブロークン・アロー』(96年)
爆発地 ユタ州の銅鉱山地下
爆発原因 核弾頭強奪犯の仕掛けた時限式核弾頭の作動
被害者 ヘリ一機とそれに乗っていた搭乗員数名
主人公とヒロインがわずか数分後にセットされた核弾頭と一緒に地下に閉じ込められる。とっさに地下水路を使って逃げ出すのであるが、どう考えても核弾頭から数百メートルも離れていない。ところが、2人の近くでは何も起こらない。水を通ってきたからか?かなり謎だ。その後、珍しく放射能の心配をするヒロインに向かって、「大丈夫。今のは地下爆発だ。放射能の心配はない。見ろよ、蝶々だ。蝶が飛んでいたら放射能の心配はないのさ」と、納得させる主人公。2人抱き合って、めでたし、めでたしだ。アメリカ映画はこうあるべし、というお手本。
『ピースメーカー』(97年)
爆発地 ウラル山中
爆発原因 核弾頭強奪犯が仕掛けた時限式核弾頭の作動
被害者 約1500人
ロシアの貨物列車から10発の核弾頭が盗まれるところから物語は始まる。10発もあれば1発ぐらいは爆発させてみたくなるのが人情。ウラルの山の中で見せしめ的に1発爆破される。残りの8発は中東に運ばれる前に回収されるが、1発だけはボスニアの外交官が気違いじみた執念でNYに運び、タイマーをセット。核兵器密輸対策チームの女科学者がこのタイマーを解除するわけだが、放射能をもれさせないための小爆発など理論的に絶対不可能!作品中のような無茶苦茶な爆弾の扱い方をすると、NYはもちろん、東海岸全域に致死量の放射能が降り注ぐんだと。合掌。
(98年執筆)
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