年をとるって素敵なこと ('02.8.30)  
       
専科(ひらたく言えば後進の指導にあたるために長く在団しているタカラジェンヌ)のお姉様たちというと、なんかほのぼのした気分になりますよね。だって、人事とは無縁だし、実力は安定してる。だから、日頃感じている「私の<ご贔屓>の任期はいつまでなんだろう」とか、「○○ちゃん、今日はちゃんと声出るかしら」とか、そうゆう苦しみ(?)とは全く無縁! おじさま(正しくはお姉様)達に癒されてこよーっと、という、ほのぼの気分で飛行機に乗りました。8人の専科さんが3曲づつ歌うとのことでしたので、まあ、上手な歌を聞くんだろう、という感じで。

しかーし! この認識は、大いなる間違いだったのです! 人事とは無縁、安定した実力、それらの裏にあるのは、ほのぼのしたものなどではなく、長い長い時間と、その間にあった様々な出来事、それらを乗り越えてきた、本専科さんたちの、たゆまない努力とお人柄、すなわち、苦しいことをのみこんできた、乗り越えてきた、懐の深さだったのです!

出演者は、立ともみ、矢代鴻、萬あきら、京三紗、汝鳥伶、邦なつき、一樹千尋、箙かおる。

まずは萬さんが『ガイズ&ドールズ』の「女神よ今夜だけ」を歌う。50才になっても皺ひとつない大地真央にも、「50才になったら生きてないんじゃないんですか?」とお茶会で発言した、わが<ご贔屓>紫吹淳にも、絶対に歌えないです、この「女神よ今夜だけ」は。まるで、年老いて凋落したギャンブラーが、人生最後の大勝負を振っている、そんなドラマが、ほんの数分間に、立ち上がってくるのです。

立さんは、芝居心のある方だけに、歌詞に重みが感じられます。さだまさしの「風に立つライオン」を歌ったのですが、さだなんかより、ずっといい。アフリカの過酷な自然の中、医療活動をしている人の手紙、を読み上げたり歌ったり、って歌なんですが、その内容そのものが、これまた立さんのヅカ人生に重ならないとも言えないじゃないですか。これが一幕の終わりで、もう周りからはすすり泣きが・・・。

泣くと言えば! 一樹さんが歌った「タカラヅカフォーエバー」。みなさんご存知ですよね「ふぉーえばー、たからーづかふぉーえばー、おーラブー、人は愛する、あこがれのたからづかー」とかいう、くっさい歌詞のあの歌ですよ。なんじゃこりゃってずっと思ってたんですよ、私は。

しかし、しかし、思わず泣いてしまった! だってさ、本専科さんたちは、一生をタカラヅカに捧げるわけですよ。ましてや、入団したころはスター路線を夢見たかもしれないじゃないですか。それが、いつからか脇路線になり、自分より下級生がトップになり、今では自分よりずっと年下の子がちやほやされ、しかもそれを指導しなくちゃいけない。自分の芸にも、専科にふさわしいものが求められる。きっと、いろんな思いがあると思うんですよ。そんな人が歌うとね、「タカラヅカフォーエバー」は、本当に、フォーエバーなんだなぁ、と思うと、泣けてしまったんですぅぅ。

汝鳥さんは、「下級生の頃の公演で、当時のトップさんが歌っていた歌です。いつかあんな歌を歌いたい、と思ってきました。だいぶ、だいぶ時間がたってしまいましたが」と笑いをとっていましたが、笑いながらも、またホロリ。しかもそのトップさんの名前を私は全然知らないの。ああ、なんという長い時間でしょう。

タカラヅカは、苦しいこともあるかと思います。家庭的なのはいいことだけど、その弊害もあるでしょう。1作トップなんて、わけわかんないことが現に起きています。人事レースがあるだけに、夢破れる人も多々います。我々観るほうも、苦しいことがあります。チケットのことで困ったり、ファンクラブのことで悩んだり、スターさんを追いかけだすと、好きすぎて苦しかったり。

だけど、この公演のことを思うと、ほのぼのなんて些細なものじゃなくて、なんか、ものすごーく元気になります。苦しいことがあっても、希望を捨てずに、自分の道を極めましょう、という、本専科さんたちの姿勢。あーーー、ひょっとして、タカラヅカの「清く正しく美しく」って、そういう意味なのかなー。今はじめて、「タカラヅカを好きになってよかった」と思ってる私がここにいるのでした。

 
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