日本を歩く

−むかしの散歩−

むかし、町を歩いたお話です。



大森〜西馬込〜中延〜小山

 3時半、JR大森駅に到着。
 大森からは以前来て歩いてみたかったところである。山王、馬込あたりを歩く。
 馬込はもと文士村だそうだ。知らなかった。
 少し文士の気分になって歩く。
 あたりは住宅地で静まりかえっている。子どもがぱらぱらと道で遊んでいる。
 丘とその間の窪地がつづき、うねうねしている。
 急でない登り坂と下り坂を繰り返す。それがまた快感である。
 しかし、地下鉄西馬込駅まで来たところで腹の調子がおかしくなった。地下鉄のトイレに駆け込む。
 そのまま地下鉄で中延に向った。
 中延も以前来たことがあって歩いてみたかったところである。中延で降りてアーケード街に入る。
 長い長いアーケード街でこれが日本一長いところかと思う。
 どんな店がならんでいるか、両側をぷらぷら見ながら歩く。
 人があふれるほどでもない。
 確かに1キロどころかもっとあったように思う。いい商店街である。
 不動産屋さんものぞく。さほど高くない。
 不動産屋さんはいつもだれかのぞいている。
 商店街の終りころに静かな音楽が流れている。日曜の夕方の商店街はいい雰囲気である。
 それから小山にぬける。
 また長々と商店街が続く。照明が明るく、人も多い。でも活気がある分、面白くない。
 小山駅に到着。

 映画のあと、銀座テアトル西友を東に折れて川の方へ歩き出す。川岸の方に行きたかったのである。
 時間はすでに4時半。
 途中新川までは人がほとんどいない、静かな街が続く。本当に奇妙なほど静かである。住宅地の静けさでもない。
 私のもっている地図には新川から佃へ渡る橋は書いてない。確かできたはずと思って歩く。
 路地の入り口、道路の曲がり角に来るたびに、道路の奥にとっぴょうしもなく高いビルディングがそびえ立つ。
 さすがに川近くとなると、倉庫群と町並みの閑散とした様が、特異な風景のように思われる。
 新川への橋を渡ると佃へ渡る橋の高い柱が見える。橋の名前は中央大橋というらしい。中央区にあるからだろうか。
 しかし、橋からながめる川の風景はまたすばらしい。
 川が好きでよく川べりにいくが、こんなビルが両側に立ち並んだ川の風景を歩きながら見るのは始めてである。かえって新鮮。
 夕暮れの赤い日差しがビルの側面を照らし出す。美しく、どこか物悲しい。
 日曜日の夕暮れであり、ほとんどのビルに明かりがついていないことが、よけい物悲しい。
 夕暮れ時には、建物などないぱあとひろがった川岸を歩く方が僕はよい。
 ビルの向こう側の赤い光に照らされた向こうに、おもわずひろびろとした川岸を想像する。
 夕暮れの新川ぞいのビルに数フロア、明かりがついている。こんな美しい、川べりの夕暮れというのに仕事をしているらしい。
 中央大橋を渡るとまた巨大なマンションが数本、バラバラとそびえ立つ。大川端リバーシティである。
 リバーシティには川沿いに親水公園がもうけられている。かといってカップルであふれているわけでもなく、さきほど橋から公園と続く間にいるのは若い母と子、自転車の中学生の集団、ありふれた新興団地の顔ぶれである。どうもあたりになじまない。
 公園を抜けると、私のあこがれだった佃があった。さすがに、散策本で読んだ通りの世界があった。
 どうしてこんな空間がこんなところに残っているのだろう。
 あまりぞろぞろのぞかれるのを佃の人は好まぬときいていたので、なるべくのぞき込まないようにしたが、それにしても狭い路地には圧倒される。振り返ると、大川端リバーシティがおおいかぶさるようにそそり立ち、明かりがぱらぱらっとオレンジ色でつきだす。
 日がとっぷりと暮れ、佃、それから向かいの築地を心残りにしながら家に帰る。

武蔵小杉

 昼飯をたべて午後から川崎の美術館へ行く。出るのが遅くなって、武蔵小杉からバスで10分、ついたのが3時過ぎだった。
 かんじんの建築のコーナーをはしょってみてしまう。5時に閉館となる。ちょっと役所的だな、と思う。
 帰りは多摩川に出て下にぶらぶら歩く。むかいの東京に小高い丘があった。多摩川の北側には結構小高いものがわすれもののようにあるらしい。
 40分ほど歩いて武蔵小杉駅に戻る。意匠ものの展示をみたばかりのせいか家家の意匠が気になる。
 JRで川崎に出て、秋葉原から総武線で帰った。

羽田

 九州から結婚式の2次会にでてきた友人が酩酊した。前後不覚の彼を、タクシーで部屋までつれてった。
 次の日に起きたのは昼過ぎ。
 しかも寒暖計を時計と思ったらしい。あまり変わらない時計やな、と友人はつぶやいた。
 まだ頭は爆発しているが、もう飛行機に乗って帰るという。
 羽田空港へ向かった。心配なので、空港までついていった。
 空港のレストランで二人でカツカレーを食べた。彼はカレーにほしぶどうが入っていることに文句をいい、フォークを使わずに食べる私のカツカレーの食べ方を珍しいと言った。彼は二日酔いからライスを半分残した。
 そして、手を振って搭乗口に消えた。 
 モノレールは何も言わずに引き返す。旅人でもない、見送りの僕を、いつもの日常世界に、静かに静かに運んでいった。


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