前回のソルトレークシティー五輪は、日本の力の低下を思いしらされた大会でした。それから4年、そのままさらに競技力が落ちた競技や種目もあれば、持ち直したものも、さらには向上したものもありました。多くのメダルは望めなくとも、正直、前回よりはいい成績を…という期待は持っていました。メダルが有望視される種目は、いくつかあったのです。けれど、日本勢は惜しいところでメダルを逃し続けました。「結果は4位」「あと一歩でメダルを逃す」そんな報道の連続になってしまったのです。金の可能性も少なくなかった、スピードスケート男子500mの加藤条治選手は、直前の小さなアクシデントからか、実力を完全には発揮しきれず6位と敗れました。健闘した及川佑選手も4位と、メダルにはほんのわずか及びませんでした。また、女子500mに出場したベテラン・岡崎朋美選手は、1回目の3位を2回目も維持することができず4位、好調が伝えられていた大菅小百合選手は8位に終わりました。最も期待できるはずのスピードスケート男女500mで、日本はひとつもメダルを獲得できなかったのです。 いやな予感がしました。この先、メダル確実といえる種目はもはやありません。女子モーグルとスノーボード・ハーフパイプではすでにメダルを逃しており、残る有力種目は、第7日のスピードスケート女子団体追い抜き、第12日と14日のフィギュア女子シングル、第16日のアルペンスキー男子回転くらいでした。フィギュア女子は、私が一番楽しみにしていた種目ではありましたが、よく知るがゆえにとてもメダル確実とはいえませんでした。できれば、女子シングルが始まるまでにひとつはメダルをとって、楽に戦わせてほしいと思いました。けれど、頼みの綱の女子団体追い抜きも4位となり、その望みはほぼ絶たれました。そして、予想どおり、日本がメダルをひとつもとれないまま、女子シングルの競技の日を迎えることとなったのです。 そんな私の心配とはうらはらに、荒川静香選手は落ち着いていました。フィギュア日本勢の中では最も金に近いと思われた彼女でしたが、決して世界で一番近かったわけではありません。海外マスコミの予想でも、彼女を3位候補に挙げるものが大勢を占めていました。その状況で荒川選手が勝つには、実力を最大限に発揮するほかないでしょう。けれど、彼女には上をねらおうとすると決まってミスをしてしまう、悪いくせがありました。それを克服し、平常心で演技するために、彼女は自分にこう暗示をかけたのです。「メダルはとれない」と。 よく、勝利を収めるためには「自分は必ず勝つ」と思いこむことだ…といわれます。けれど、荒川選手はそれと真逆の方法で競技に臨み、そしてその目論見どおり、この大舞台でほぼ自分の実力を出しきったのです。有力と見られたライバルたちは、プレッシャーで自滅していき、その結果、荒川選手が、日本初&アジア初のフィギュア金メダリストとなったのでした。日本が待ち望んだメダル、この大会でただひとつとれたメダルは、輝く金色をしていたのです。 一時はメダル0に終わるかと思われた日本選手団は、荒川選手に救われた格好となりました。ほかに、カーリング女子の健闘という、明るい話題もありました。でも、次の大会までに課題は山積しています。いまだ、長野から世代交代が進んでいない種目も多く、このままでは次の五輪でも日本勢が大活躍する姿は見られないでしょう。ただ、フィギュアの金メダルは、10年以上前からの強化策が実ったものでした。4年後、8年後を目指して、できることから始めてほしいと願うばかりです。 |
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