この大会が始まる2か月前、日本オリンピック委員会が「金メダル2桁を目指す」と発表したとき、「そんなことはとても無理だ」と言いそうになりました。まあ、目標だけは高く持ったほうがいいのかも…とは思いましたが。同時に出た情報分析チームの予測では3〜9個となっていて、冷静に考えればこちらが妥当な数字でした。また、アメリカの「スポーツ・イラストレーテッド」誌のほうは、日本の金は7個との予想で、JOCよりは控えめながら、けっこうな数を見積もっていることに驚きました。長年オリンピックを見続けている私は、事前の希望的観測と、実際の結果があまりにかけ離れていることに、慣れきってしまっていたのです。メダルの可能性が少しでもあれば、テレビや新聞は大々的に取り上げるけれど、決してそのとおりの結果になることはありません。私はそれを、いやというほど思いしらされてきたのでした。 ところが、日本勢は初日から、期待どおり…いえ、それ以上の結果を見せつけました。お家芸の柔道で、男子60kg級の野村忠宏選手、女子48kg級の谷亮子選手が期待どおりに金を獲得。翌日には、ダースホースと見られていた男子66kg級の内柴正人選手も金をとりました。これまでの柔道陣は、前年の世界選手権では活躍しても、五輪になるとその半分程度の金メダルしかとれなかったのに、今回は前年に金を逃した選手までが勝ち続けたのです。柔道陣が獲得したメダルは、金8個、銀2個。事前に「これくらいとれれば…」と思い描いていた個数をも上回る、大活躍を見せてくれました。 柔道と併せて前半戦を盛り上げてくれたのが、競泳でした。北島康介選手が、期待どおり100mと200m平泳ぎで金メダルを獲得し、ここのところ急成長を見せていた女子800m自由形の柴田亜衣選手も、大逆転で驚きの金。競泳とシンクロで金3個、銀3個、銅4個と、連日のメダルにスタンドは沸きかえりました。 後半は、陸上とレスリング女子が、メダルラッシュの主役となりました。大会前から活躍が確実視されていたレスリング女子は、55kg級で吉田沙保里選手、63kg級で伊調馨選手が金をとったほか、銀1、銅1と全種目でメダルを獲得。陸上では女子マラソンの野口みずき選手が、戦前の予想を覆す金、そして、一度は銀に終わったかと思われた、男子ハンマー投げの室伏広治選手の金と、どちらもドラマチックな獲得劇となりました。 そして、忘れてはならないのが「体操ニッポン」復活を印象づける、体操男子団体での勝利でしょう。その昔は「お家芸」といわれたものの、ここのところは五輪のメダルからも見放された状態が続いていました。そんな長く苦しい時代を経て、ようやく日本代表の面々が表彰台の頂点に立ったのです。個人総合ではなく、種目別でもない、団体で金をとったところに価値がありました。1人ではなく、日本という国の競技力が世界一だと証明したのですから…。 ほかにも、アーチェリー男子個人の山本博選手の銀、ソフトボール女子の悔しい銅など、ここに書ききれないさまざまなドラマがありました。結果的に、獲得した金メダルは16個。あの東京五輪に並ぶ好成績で、「金メダル2桁を目指す」というJOCの発表は現実のものとなったのです。 この先、こんな好成績で終われる大会があるか、定かではありません。ただ、アテネ五輪が長く語り継がれる大会となったのだけは、間違いないところでしょう。 |
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